第2章 腎・泌尿器領域の主な疾患 腫瘍 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第2章腎・泌尿器領域の主な疾患
腫瘍

腎癌

どんな疾患・病態?

  • 腎実質腫瘍の大半は悪性の腫瘍であり、そのうちの90%が腎細胞癌(以下、腎癌)である。
  • 小児ではウィルムス腫瘍という、成人の腎癌とは異なる悪性腫瘍が発生する。
  • 腎癌は近位尿細管から発生する(腎盂癌は、尿路上皮細胞から発生する)。
  • 腎癌は、増殖スピードが速いラピッドタイプと、比較的遅いスローグローイングタイプがある。
  • 好発年齢は50~60歳。男女比は約3:1で、男性に多い。
  • 腎癌は、切除して長期間経過した後、転移再発することがある。転移臓器は、肺、リンパ節、肝臓、骨などが多い。
  • 主な症状として血尿、腹部腫瘤、疼痛の3症状があるが、腫瘍径が小さいうちは、これらの症状があらわれることは少ない。
  • 最近では、消化器疾患などの他疾患精査や検診などで偶然発見される偶発癌が増えている。
  • 体重減少、全身倦怠感などの症状も、癌がある程度大きくなってからあらわれることが多い。
  • 病期分類は、TNM分類(表1)が用いられる。
表1 腎癌の病期分類
一般検査
尿検査で血尿が認められることがある。
非特異的ではあるが、貧血、赤沈の亢進、CRP上昇、α2グロブリンの上昇など。
腹部超音波検査
スクリーニング検査として有用である。
充実性(中に細胞が詰まっている)腫瘍か嚢胞性(中に液体が詰まっている)腫瘍かの鑑別が可能。
CT
腎癌の病期診断に不可欠である。
単純CTでは、腎実質とほぼ同等の吸収値を示す。
ダイナミックCTを用いることで、造影早期では腫瘍部が濃染され、造影晩期では腎実質よりも低い高吸収値となりウォッシュアウト(wash out:洗い流される)される。
リンパ節転移や腎静脈浸潤の有無を診断できる。
MRI
検出能はCT検査と同等であり、造影アレルギーなどでCT検査ができない患者に対して有用である。
ウィルムス腫瘍

後腎芽組織を発生母地とする腫瘍であり、小児の悪性腫瘍の代表的なものである。小児で発生した場合は予後良好であるが、成人では予後不良となる。小児では5歳までにほとんどが診断される。腫瘍発生に遺伝子異常が関与していると考えられる。

  • 外科的治療が基本となる。根治的腎摘除術、腎部分切除術は、症例によりともにミニマム創手術や腹腔鏡手術が行われている。
根治的腎摘除術
根治的腎摘除術について詳しくはこちらを参照。
原則として、転移がない症例が適応となるが、転移のある症例に対しても、まず腎摘除術が行われることが多い。
腎部分切除術
多くは腫瘍径が3cm以下のものに対して行われる。
免疫療法
腎癌の遠隔転移に対して行われる。
インターフェロンα(IFN-α)は、肺転移に有用である。
インターフェロンαとインターロイキン2(IL-2)の併用療法も転移再発の症例に対して行われる。
分子標的治療
欧米では、ソラフェニブ、スニチニブなどの血管新生阻害作用を持つ新しい薬剤を用いた治療法が行われており、わが国でも2008年4月よりソラフェニブ(ネクサバール)が発売された。
放射線療法
骨、脳転移に対して用いられる。

看護のポイント

外科手術に際して、十分なインフォームドコンセントを行うことが大切である。
腎癌は、長期の無病期間後に再発することも少なくない。長期にわたる経過観察が必要である。

腎盂・尿管癌

どんな疾患・病態?

  • 腎盂・尿管癌は、移行上皮で被われる尿路上皮より発生する「尿路上皮癌」である。
  • 腎盂・尿管癌は、膀胱癌を併発することが多い。
  • 腎盂・尿管の両側に癌が発生することはまれである。
  • リンパ節、副腎、膵、脾および脊椎骨などへの転移が多い。
  • 細胞異型度(グレード、悪性度)と深達度(ステージ、癌の深さ)によって、予後は大きく異なる(表2)。
  • 発癌リスクとしてタバコ、鎮痛薬の長期多用などがあげられる。

症状

  • 80%以上で血尿がみられる。特に無症候性肉眼的血尿(目で見て赤い尿とわかるが、痛みなどの症状はまったくない)が多い。
  • 腰背部の鈍痛がある。

検査と診断

一般検査
尿検査で血尿が認められることが多い。
炎症を伴う場合は、膿尿も認められる。
表2 腎盂・尿管癌の病期分類
尿細胞診
尿細胞診は必須の検査であり、複数回行うことで陽性率を高める。
細胞異型度が高いグレード3では、陽性率は高い。
内視鏡検査(膀胱鏡検査)
血尿がある場合、膀胱鏡検査にて患側尿管口から流出する血尿を認める。
排泄性(静脈性)尿路造影(IVU)
造影剤を経静脈的に投与すると、癌の部分は造影剤が抜けた状態(充満欠損)で描出される。
尿管癌では尿の停滞が起こり、水腎症を呈するようになる。
逆行性腎盂尿管造影(RP)
排泄性尿路造影では十分な情報が得られない場合に行われる。
腎盂・尿管の粘膜の不整像が認められる。
カテーテルより得られた尿の細胞診(分腎尿)が有用である。
超音波検査
スクリーニングとして用いられる。
CT、MRIなどの画像検査
ステージ診断に有用である。
MR尿路造影(MR urography)では、造影剤を用いることなく、上部尿路の閉塞性病変の診断が可能になった。
腎尿管全摘除術
腎・腎盂・尿管をすべて摘除し、さらに尿管口を含めた膀胱部分切除を行う。
腎盂・尿管癌の標準的な治療法である。
腹腔鏡手術やミニマム創手術による腎尿管全摘除術が普及しつつある。
内視鏡的治療
下部尿管に発生した小さな単発の尿管癌に用いられる。
化学療法
転移癌の第一選択となる。
M-VAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの併用療法)を行う。
放射線療法
転移癌に対する治療として行われる。
その他
まれに、手術不能例などに対してBCGの腎盂内注入が行われる。

看護のポイント

間歇(間をおいて繰り返す)的にみられる無症候性血尿があれば、まず尿路上皮癌を疑う。
腎盂・尿管の壁は膀胱に比べて薄く、早期に進行癌になりやすい。したがって、膀胱癌と比べて予後は不良である。

膀胱癌

どんな疾患・病態?

  • 膀胱癌の約90%が、移行上皮である尿路上皮から発生した癌である。
  • 男女比は、3~4:1で、高齢者に多い。
  • 危険因子として喫煙が知られている。
  • 膀胱癌は、癌の深達度から表在性癌、浸潤性癌に大きく分けられる(図1)。
図1 膀胱癌の種類
  • アニリン系色素などを扱う職業(染物関係、化学工場など)に多く、職業病として知られている。
表在性膀胱癌
TNM分類(表3)でTisからT1までをいう。
癌が膀胱粘膜内にとどまっており、筋層への浸潤はない。
表在性乳頭状癌(Ta)は、粘膜内への浸潤はなく、内視鏡で切除できるが、再発は多い。
表3 膀胱癌の病期分類
浸潤性膀胱癌
TNM分類でT2からT4までをいう。
癌が筋層以上の深さまで浸潤している。
進行すると、リンパ節や他臓器に転移しやすく、後も悪い。

症状

  • 80%以上で血尿がみられる。特に無症候性肉眼的血尿が多い。
  • 頻尿、排尿痛などの膀胱炎様症状を伴うことがある。

検査と診断

一般検査
尿検査で血尿が認められることが多い。
尿細胞診
尿細胞診は、スクリーニング検査として有効である。異型度が高いグレード3では、陽性率は高い。
排泄性尿路造影(IVU)
腫瘍があれば、閉塞性病変や陰影欠損として描出される。
さらにCT、MRIなどの画像検査を行う。
膀胱鏡検査
必須の検査で、腫瘍の位置、性状などを直接観察する。
超音波検査
非(低)侵襲の検査である。
CT、MRI などの画像検査
ステージ診断に有用である。

治療

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)について詳しくはこちらを参照。 表在性膀胱癌の標準的な治療法。
術後再発の問題がある。その予防として、抗癌剤膀胱内注入療法を行うことがある。
T2以上に対しては、病期診断の目的でTUR-Btを行う。
膀胱全摘術、膀胱部分切除術
膀胱全摘術は、浸潤性膀胱癌の標準的な治療法。同時に尿路変向術も行う。
膀胱部分切除術は、膀胱機能を温存できるが、適応条件は限られている。
化学療法
転移のある膀胱癌にはM-VAC療法が行われる。
局所濃度を高めるため、動注化学療法も行われる。
M-VAC療法とほぼ同等の効果が期待できるGC療法(ゲムシタビン、シスプラチン)も行われるようになった。
放射線療法
手術が不可能な場合に行われることが多い。
浸潤癌に対して、化学療法と併用して行うことが多い。

看護のポイント

TUR-Bt後の再発、さらに再発時に腫瘍が浸潤性に移行することがあるので、厳重にフォローアップする。
膀胱全摘術後に尿路変向を行った患者は、生涯にわたり尿路管 理を続ける必要があるため、社会復帰に向けてのケアが大切である(ストーマケア)。

精巣腫瘍

どんな疾患・病態?

  • 精巣腫瘍の90~95%は悪性の精巣胚細胞腫瘍である(ここでは、精巣胚細胞腫瘍について述べる)。
  • それ以外は、ライディッヒ(Leydig)腫瘍、セルトリ(Sertoli)細胞腫であり、また50歳以後では悪性リンパ腫が多い。
  • 20~40代の青壮年期に好発する。
  • 進行が速く、リンパ節に転移しやすい(表4)。
  • 精巣腫瘍は、精上皮腫(セミノーマ)と非セミノーマに大きく分類される。
  • 陰嚢内の無痛性腫瘤または硬結がみられる。
  • 腫瘍が大きくなると痛みが伴う場合もある。

検査と診断

超音波検査
精巣内に不均一な腫瘍像が認められる。
陰嚢水腫(精巣周囲に体液が溜まり、陰嚢が腫れる疾患)との鑑別に有用である。
CT・MRI・骨シンチグラフィなどの画像検査
転移の診断に有用である。
表4 精巣腫瘍の病期分類
腫瘍マーカー
α-胎児蛋白(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-β(hCG-β):精巣腫瘍との関係が深く必須項目。陰嚢内に腫瘍があり、AFPまたはhCGが陽性ならば、精巣胚細胞腫瘍の可能性が高い。 乳酸脱水素酵素(LDH)も上昇することが多い。

治療

  • まず、高位精巣摘除術を行い、組織診断・病期決定を行った後に、治療方針を決定する(図2)。
セミノーマ
Ⅰ期:多くの場合、高位精巣摘除術後に経過観察となる。放射線治療を行う場合もある。
Ⅱ期:化学療法が中心。BEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が一般的である。
表4 精巣腫瘍の病期分類
非セミノーマ
Ⅰ期:セミノーマより悪性度が高いため、経過観察の後、後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)、化学療法を行う場合がある。 Ⅱ期:化学療法が中心。
後腹膜リンパ節郭清術
後腹膜の腫瘍、脂肪、リンパ組織を摘出する。
術後は射精障害をきたすため、可能な限り射精神経を温存するケースが増えている。

看護のポイント

精巣腫瘍は、早期であればほぼ100%完治する疾患である。
治療後は定期検査を受けるよう患者を指導する。
後腹膜リンパ節郭清術の後遺症として射精障害が起こる場合がある。術前のインフォームドコンセントを十分に行う。

前立腺癌

どんな疾患・病態?

  • 前立腺癌患者は、日本で増えつつある。原因は次のとおり。
  • 加齢とともに発生頻度は増加する。特に60歳以上に多い。
  • 1990年代に前立腺特異抗原(PSA)検査が確立され、早期癌の発見が可能となった。
  • 遠隔転移では、骨転移が多い。

症状

  • 早期では、前立腺癌特有の症状はみられない。この段階では、PSA検査などで見つかるものがほとんどである。
  • 臨床病期分類(表5)でステージC以上になると、排尿困難、頻尿、残尿感などの排尿障害がみられる。
表5 前立腺癌の臨床病期分類(抜粋)
表6 PSA値の基準

検査と診断

  • 検査の順序は、まず直腸診、PSAを行った後に経直腸的超音波検査(TRUS)などの画像診断の後、疑わしい症例に対しては、生検を行うのが一般的である。
PSA検査
採血によ り 測定する。基準値は表6のとおりである。
PSAは糖蛋白であり、前立腺の腺上皮で産生され腺管内に分泌される。
癌では、その癌細胞そのものが通常の前立腺細胞に比べて数十倍のPSA を産生している。早期癌でもPSAが上昇するため、前立腺癌の診断に大変有用である。
ただし、PSAは“前立腺”に特異的ではあるが、“前立腺癌”に特異的ではない。

看護のポイント

PSA値が4.0ng/ml以下でも「癌ではない」とはいえない。定期的にPSA検査を受けるよう、患者に説明する。
PSA値が正常範囲でも前立腺癌である場合がある。
*前立腺肥大症の診断のもとでTUR-Pを行い、偶然発見された早期癌(TNM分類でT1a、T1b)。
*アンドロゲン非依存性腫瘍。
直腸診
前立腺の大きさ、硬さ、表面の形状などを調べる(図3)。
図3 直腸診

看護のポイント

患者に羞恥を与えないよう、検査部位以外はタ オルをかける。
挿入前、検査中に患者に声をかけて安心させる。
経直腸的超音波検査(TRUS)
前立腺の内部構造を比較的明瞭に描出できる。
低エコー像は前立腺癌を疑うが、高エコー像の場合もある。
生検
経直腸超音波ガイド下で、6か所以上の組織を採取する。
グリソン分類(グリソン・スコア):最も多くの面積を占める 組織像と、2番目に多い組織像の点数を足して、悪性度を評価する方法である。
10点満点で2~10の9 段階で表される。
その他の画像診断
MRI:前立腺癌の局所浸潤の診断に有用である。
骨シンチグラフィ(核医学検査):骨転移の有無を調べる。

治療

経過観察
ステージA1は経過観察とする。
根治的前立腺全摘除術
根治的前立腺全摘除術について詳しくはこちらを参照。
限局癌ステージA2~B2が対象だが、時にCの一部に用いる。
全身状態が良好で、余命10年以上の場合(76歳以前)が望ましい。
放射線療法
外照射療法:根治には高線量が必要なため、副作用として、直腸炎や出血、膀胱炎、尿道狭窄、勃起障害などがみられる。
組織内照射療法
小線源治療(ブラキセラピー):I125(ヨウ素125)の詰まった針(シード)を経直腸エコーガイド下で前立腺内に永久に埋め込み、そこから放射線を前立腺に照射する方法。外照射療法に比べて合併症が少ないのが利点である。
高線量率組織内照射:前立腺に穿刺し、高エネルギーの放射線(イリジウム192)を前立腺内に照射する方法である。
内分泌(ホルモン)療法
ステージCで前立腺全摘除術のみでは根治できない場合、ステージDなどが適応となるが、すべてのステージで有効である。
外科的去勢:両側の精巣を切除する方法。
LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト:合成ホルモンのLH-RHアゴニストを注射して、男性ホルモンの分泌を抑える(リュープリン、ゾラデックス)。
抗男性ホルモン剤:アンドロゲン(男性ホルモン)が前立腺に働きかけるのをブロックする。LH-RHアゴニストと併用する。
女性ホルモン剤:アンドロゲンの分泌を抑える。

看護のポイント

治療法の選択は、患者本人の希望に添うところが大きい。治療後のQOLの低下、合併症などがあるためである。十分なインフォームドコンセントが重要である。
前立腺癌の進行はゆっくりであるため、高齢者あるいは余命が期待できない患者に対しては、治療を行わず、注意深く経過観察していく場合もある。