第8章 体表と四肢 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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脂漏性湿疹について

  • 生後2~3カ月くらいまでの乳児は皮脂の分泌が多いため、頭髪やまゆ毛に黄色い皮脂がつく。これを脂漏性湿疹と言う。

ケアの仕方

  • 皮脂は脂肪なので水だけでは取れない、石けんで洗う必要がある
  • べったりと貼りついた脂漏性湿疹は、まずふやかす
  • 洗い落とす1時間くらい前に、白色ワセリンやオリーブ油をつけて少し温めるとよい。その後、お風呂で石けんやシャンプーを使って洗えば、少しずつ落ちる。 髪の毛も多少一緒に抜けるが、また生えてくるので、あまり気にしないようにする。まゆ毛も同様にする。
  • 洗った後に、ローションを塗っておく
様々な脂漏性湿疹

蒙古斑について

  • 蒙古斑とは、胎生期のメラニン細胞の一部が真皮内に残存したものである。通常は、臀部周辺のみに見られるが、広範囲に広がっていたり、普通はないところに発生する(異所性蒙古斑)場合もある。本質的には同じものなので、経過観察する。通常は5歳くらいまでに、遅いものでも思春期頃には消失する。
様々な蒙古斑
異所性蒙古斑

苺状血管腫について

  • 苺状血管腫は未熟な毛細血管の増殖が原因で、表面がイチゴのように赤く盛り上がるところからこのように呼ばれている。
  • 生後すぐ、あるいは生後数週以内に発症し、急速に大きくなるが、2歳頃から徐々に小さくなっていき、5歳までにおよそ50%、7歳までには75%が自然に治癒する。
苺状血管腫の特徴

単純性血管腫について

  • 単純性血管腫はポートワイン血管腫とも呼ばれ、真皮の毛細血管の拡張が原因で、通常は 皮膚は盛り上がらず平坦で、境界が明瞭で赤さが均一な紅斑である。
  • 生まれたときから存在し、自然には消えない。
単純性血管腫の特徴

正中母斑について

  • 新生児の10~30%に生まれたときからみられる、やや暗いピンク色の平坦な母斑(あざ)である。真皮表層の毛細血管の機能的拡張が原因で、できる場所によって以下の2つに分けられている。

サーモンパッチ

  • 両側の上まぶたの内側や眉間から前額中央に見られる。上まぶたのものは1歳半までにほぼ消失するが、眉間から前額中央のものは成人でもまれに残ることがある。
サーモンパッチの特徴

ウンナ母斑

  • うなじから後頭部に見られ、サーモンパッチに比べると消失 時期がやや遅い。生後1歳で50%、成人で10%くらい残存するが、毛髪に隠れるため通常は無治療で経過観察する。
ウンナ母斑

神経皮膚症候群について

  • 皮膚と神経は、どちらも受精卵の外胚葉(発生初期の胚の外表面にある細胞層)から発達してできるので、先天的に両方に病変が起こる疾患がいくつか知られている。ここでは、代表的な3疾患について記述する。

スタージ・ウェーバー症候群

  • 次の3つの症状が みられる。
  • 三叉神経の第1枝の領域の単純性血管腫
  • ❷脳内にも血管腫ができて神経症状(てんかんや 精神遅滞などの知的障害)が出る
  • ❸目の脈絡膜にも血管腫ができ、緑内障になる
スタージ・ウェーバー症候群の特徴
●三叉神経の支配領域

結節性硬化症

  • 皮膚と神経系にとどまらず、腎、肺、骨など全身のさまざまなところに良性腫瘍(過誤腫)ができる。
●結節性硬化症の頭部MRI
  • 下表のように、年齢によって 異なる症状が出る。
●結節性硬化症の年齢別に見る特徴的な症状
白 斑
顔面血管線維腫

神経線維腫症(フォン・レックリングハウゼン病)

  • 思春期前までは、直径が0.5cm、それ以後は1.5cmを超えるカフェ・オーレ斑(ミルクコーヒーのカフェオーレのような色をした色素斑(しみ))が6個以上見られるのが特徴である。
  • 神経線維腫は皮膚や皮下の良性腫瘍で、生まれた時にはなく、通常は思春期頃から見られるようになる ことが多いが、出現時期や個数に個人差が大きい。
カフェ・オーレ斑

二分脊椎(神経管閉鎖障害)について

  • 脊椎骨の背部の形成が不十分で、脊椎骨の中にあるはずの脊髄や神経が皮膚の外に出て嚢胞を形成したり、脊髄から皮膚につながる通路ができたりする状態。一見してすぐにわかるような嚢胞ができる嚢胞性二分脊椎(左図)から、ちょっと見ただけでははっきりしない潜在性二分脊椎(右図)まで、程度は様々である。背中の正中線上、臀部から頭部までのどこかに何か周囲とは違ったものがある場合は、二分脊椎の可能性があるので精査が必要である。
様々な二分脊椎

原因

  • 胎生期、受精卵の背部に凹みができ、それが次第に円筒状の神経管になって脊髄から大脳までの中枢神経系が形成される(左図)。神経管は、まず最初に中央が管になり、次第に頭部方向と臀部方向に管の形成が進行していく(右図)。神経管の形成に不完全な部位が残ったものが二分脊椎であり、不完全さの程度によって表現形の違いが生じる。
神経管の発生
  • 妊娠初期に葉酸の摂取が少ないと、二分脊椎になりやすいので、厚生労働省は、1日0.4mgの摂取を推奨している。葉酸は野菜やレバーに多く含まれている(下表)。

症状

  • 嚢胞性二分脊椎では、嚢胞内の脊髄神経が下肢の麻痺や感覚低下と膀胱直腸障害(排尿排便の障害)、水頭症の合併などをきたすことがある。
  • 潜在性二分脊椎では無症状のものから、嚢胞性と同様の症状を呈するものまであり、皮膚洞(皮膚のくぼみ、潜在性二分脊椎図)が脊髄につながっていると髄膜炎の原因になることもある。
●葉酸を多く含む食品

感染症の発疹について

  • 子どもの感染症には発疹を伴うものが多く、発疹を見るだけで診断できるものも多い。代表的なものを以下に記載する。

ヘルペス歯肉口内炎

  • 単純ヘルペスウイルスに生まれて初めて感染(初感染)したときに発症し、高熱が4〜5日続 いて、口腔内の粘膜や歯肉・口唇に水疱ができる。水疱が破れるとびらんや潰瘍を形成する。
  • 疼痛のために飲食物の経口摂取が困難になることが多い。特に熱いもの、酸っぱいものは痛みを増強させるので、冷たいものや刺激の少ないものを与えるとよい。
  • ヘルペス歯肉口内炎の特徴
ヘルペス歯肉口内炎の特徴

口唇ヘルペス

  • 単純ヘルペスウイルスは、初感染が治癒した後は神経節に終生潜伏し、体調免疫力が低下した際に再活性化する。(突発性発疹について詳しくはこちらを参照)口唇ヘルペスはその1つの病型で、口唇周辺に水疱ができ 、痛みや違和感を伴うことがある。俗に「熱の華」などとも呼ばれる。
口唇ヘルペスの特徴

水痘

  • 水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染で発症する。水疱は体幹から始まってしだいに四肢に広がり、約1週間で痂皮(かさぶた)を形成して治癒する。高熱を伴うこともあるが、全く発熱がない場合もある。空気感染するので、感染の防御に注意が必要である。
水痘の特徴

帯状疱疹

  • 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化で発症し、神経の支配領域に沿って痛みの強い水疱が形成される。帯状疱疹の患者から感染して水痘を発症することがあるので、水痘に対する免疫を持っていない患児には注意が必要である。
帯状疱疹の特徴

手足口病

  • 手足口病はコクサッキーA16エンテロ71などのエンテロウイルス(腸管内で増殖するウイルスの総称)の感染で発症し、手のひら、足の裏、口内に水疱が形成される。発熱はないか、あっても微熱のことが多い。
  • 一般的に予後はよいが、エンテロ71は髄膜炎や脳幹脳炎を発症する場合もある。
手足口病の足の水疱
手足口病の手のひら(左)と口唇(右)の水疱

A群溶連菌感染症

  • A群溶連菌感染症では、発熱、発疹、イチゴ舌(左下図)、頸部リンパ節腫脹などがみられる。全身の皮膚が鮮紅色になり(右下図、紅斑様発疹)、回復後に手や足の指の皮が膜状にむける。
A群溶連菌感染症のイチゴ舌(左)と発疹(右)

麻疹

  • 麻疹では、高熱と鮮紅色の発疹(左図)が出現する。発疹は次第に癒合して体全体を覆うようになるが、一部に健常な皮膚を残し、回復後に色素沈着(出血性の発疹であるため)がみられる。
  • 発疹の出現前に、口腔内の粘膜にコプリック斑(右図、白色の点状粘膜疹)がみられ、発疹の出現につれて消失する。
麻疹の発疹(左)とコプリック斑(右)

風疹

  • 風疹では淡紅色の点状の発疹が全身に出現し、麻疹と違って癒合することはなく、数日で消失して、後に色素沈着を残さない。発熱はないこともある。
  • 妊婦が妊娠初期に感染すると、胎児に先天性風疹症候群(心奇形、難聴、白内障が3主徴)が発症することもある。

突発性発疹

  • 解熱後に、顔面から体幹を中心に細かく赤い発疹が出現して数日で消失する。痛みやかゆみはない。(突発性発疹について詳しくはこちらを参照)

伝染性紅斑

  • パルボウイルスB19の感染症で、両頬が真っ赤になるためリンゴ病という俗称で呼ばれる。上肢や大腿部にも網目状の発疹が出現することがある。
  • 小児では発疹の他に症状もなく終わることが多いが、免疫のない妊婦が妊娠初期から中期に感染すると胎児水腫を発症し、流産になる危険性がある。
伝染性紅斑の特徴

ダウン症候群について

  • ダウン症候群は、1万出生あたり4.6人に発生する最も多い染色体異常で、標準型転座型モザイク型の3つに分類される。
●ダウン症候群3つの類型

特徴的な顔貌

  • ダウン症候群の顔には以下のような特徴が共通してみられる。
  • 顔は広く扁平
  • 両眼開離
ダウン症候群の顔
  • 鞍鼻
  • 馬の鞍(左上図中の左上)のように鼻根から鼻尖につながる線が後方に曲がっている凹型の鼻梁(下図中の右 下)。
鞍と鞍鼻
  • 耳介低位
  • 耳介の上端が内眼角と外眼角を水平に結んだ線より下にある(下図)。
耳介低位とは
  • 内眼角贅皮
  • 目の内側を覆う皮膚のひだ(下図の矢印)。
内眼角贅皮とは
  • つりあがった目
  • 小顎
  • 首が短い
  • 頭が小さい
  • 舌が大きい

手足の特徴

  • ダウン症候群では、顔ばかりでなく手足にも特徴が見られる。
  • 猿線
  • 手のひらのしわが1本。
猿線とは
  • 第5指
  • (小指)が短く、内に曲がっている (矢印)
手指の特徴
  • 第1趾と第2趾の間が広い (矢印)
足指の特徴

母親の年齢とダウン症候群

  • 表で見るように、母親の年齢とともに発症頻度が上昇する。
●母親の年齢とダウン症候群

心身の発達

  • 体格
  • 低身長(平均身長は男154cm、女144cm)。
  • 肥満
  • 筋肉の低緊張、筋力が弱い
  • 発達が遅れる(知的障害)
  • 軽度(IQ50〜70)から中等度(IQ35〜50)と程度はさまざまで、平均のIQは約50であるが、中には大卒の人もいる。特にモザイク型はIQが平均より10から30程度高い。
  • 言語発達が遅れる

合併症

  • 心臓の異常
  • 心房中隔欠損、心室中隔欠損など心奇形(~50%)がみられる。
  • 白血病
  • 呼吸器感染症
  • 消化管奇形
  • 十二指腸閉鎖鎖肛など。
  • 甲状腺疾患
  • ダウン症候群の約1/3に甲状腺機能低下症が発症 する。
  • 関節が弛緩している
  • 頸椎が不安定なため頸椎脱臼を起こしやすい。
  • 眼科的問題
  • 円錐角膜、先天性白内障、眼振、斜視、屈折異常など。
  • 聴覚/耳の障害
  • 40〜90%にある。中耳炎を繰り返すため、難聴になりやすい。

経過

  • ダウン症の胎児の3/4は胎児期に死亡する
  • 生まれたダウン症児の1/4は合併症のために1歳までに死亡する
  • 死因の多くは心奇形、呼吸器感染症、白血病、消化管奇形など。
  • 上の以外の多くは、死亡することなく成人になる
  • 平均余命は医学の進歩に従って次第に延びており、2012年現在、最長年齢は87歳である。
  • 30~50代で、アルツハイマー病様の記憶障害、知能低下の進行、人格の変化などの症状を発現し始めることが多い

ターナー症候群について

  • ターナー症候群では、性染色体のXが1本だけしかなく、表現型は女児であるが不妊になる。
  • 通常は染色体が1本足りないと生存不可能となるが、ターナー症候群は欠損が性染色体という特殊な染色体であるため、例外的に生存可能で、寿命も正常である。発症頻度は約2500人に1人。

特徴

  • 低身長
  • 140cm位。
  • 翼状頸
  • 頸部の翼状の余分な皮膚。
翼状頸
  • 外反肘
  • 肘が外側に曲がっている。
外反肘
  • 知能正常
  • 出生時の手足のリンパ浮腫
リンパ浮腫

18トリソミーについて

  • 18トリソミーは18番目の染色体が3本あることによって発症する。発症頻度は3500~7000人に1人で、男女比は女児4:男児1と女児に多い。
  • 18トリソミーでは、妊娠中に80%が死亡し、出生しても通常2カ月までに死亡することが多い。

特徴

  • 耳介低位・変形、小顎
  • 手指の屈曲拘縮やオーバーラッピング
  • 先天性心疾患
  • 消化管奇形
  • 食道閉鎖、鎖肛など。
身体的特徴

乳幼児は肘内障になりやすい

  • 乳幼児の橈骨頭は未発達で小さいため、前腕を強く引っ張ると、下の図のように橈骨頭が靱帯から半分抜けてしまうことがある。そうなると、靱帯が関節の動きを妨げるので、肘が曲がらなくなる。腕全体をだらりと下げたようになり、痛みも伴う。
  • 小学生くらいになると骨も発達して大きくなり、少しぐらい引っ張っても簡単には外れなくなる。
肘内障

脚の形は年齢で変化する

  • 幼児の脚の形は年齢によって変化する。

2歳まではO脚

  • おむつをしている、相対的に大きく重い頭をささえる必要がある、などの理由でO脚が生理的な形である。

2~7歳はX脚

  • 特に2~4歳はX脚が生理的な形で、その後次第にまっすぐに近づいていくが、7歳まではまだX脚の傾向が残っている。

7歳以後はほぼまっすぐ

  • 特に、10歳以降はほとんどの子どもがまっすぐになる。
子どもの開脚状態の違い