第5章 心臓と循環系 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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先天性心疾患の多くはチアノーゼがない

  • 子どもの心臓疾患は、ほとんどが先天性の心奇形であり、冠動脈疾患が多い成人とは疾患の種類が全く異なる。
  • 先天性心疾患というと、チアノーゼというイメージが強い(入院は重症例が多いためかもしれない)が、疾患別頻度でみると、心室中隔欠損(VSD、60%)、肺動脈狭窄(PS、9.6%)、心房中隔欠損(ASD、5.3%)など、いずれもチアノーゼをきたさない疾患が多い。ただし、病気が進行して肺高血圧になって逆シャントが生じるようになるとチアノーゼが出る。
●先天性心疾患の頻度

先天性心疾患に共通した症状

  • 先天性心疾患には多くの種類があり、その種類によって症状が異なるが、共通してみられる症状がある。

心不全

●心不全の症状
肺うっ血の症状
肺から心臓への血液の戻りが悪く、肺が血液で満たされるため呼吸しづらくなる。そのため呼吸困難となり、呼吸に精一杯で哺乳の余裕がなくなるため哺乳力が低下する。この状態が長期的に続くと、体重増加不良となる。
体うっ血の症状
体の各部から心臓への血液の戻りが悪く、体の各部に血液がたまる。そのため、肝腫大腹水浮腫の症状がみられ、短期的な体重の増加がみられる。
心拍出量の低下による症状
心臓のポンプ機能が弱まると、心臓をもっと働かせようと代償的に交感神経が亢進する。交感神経は、「戦闘モード」に入って身体各部の活動を高めるように作用する自律神経で、心拍数の増加、多汗などがみられる。また、腎血流が低下するため乏尿となる。

低酸素症

チアノーゼ
チアノーゼについてはこちらを参照。
還元ヘモグロビン(Hb)(酸素と結びついていないHb)が5g/dL以上で出現する。
低酸素発作
ファロー四徴症などでよくみられる。
排便や泣くなどでいきむと、元々少ない肺血流量が一段と減少して動脈血酸素飽和度が急に低下し、チアノーゼの増強、突然うずくまる、呼吸困難、意識障害など低酸素発作の症状が出現する。
低酸素症では、うずくまることによって体の血管抵抗が増加し、それによって左心室の圧も高くなるので、右心室から左心室へのシャント量が減少する。結果的に左心室から体内に循環する血液中の酸素濃度が高くなるので、低酸素発作の症状が軽減される。
低酸素発作の特徴

その他の症状

ばち状指
手足の指が太鼓のバチのように肥厚する。ばち状指は、心臓や肺疾患のほかに、消化器や甲状腺疾患でもみられる。どういう機序で発生するのか、まだよくわかっていない。
ばち状指の特徴

チアノーゼについて

  • チアノーゼをみたときには、以下の2点に気をつける。

貧血と多血でチアノーゼの出方が違う

  • 一定量の酸素に対して、貧血で赤血球が少ししかないと、酸素と結合する割合が多くなって還元Hbが少なくなり、チアノーゼが出にくくなる。
  • 同じ量の酸素に対して、多血で赤血球がたくさんあると、酸素と結合できないHbが多くなってチアノーゼが出やすくなる。チアノーゼ性の心疾患では、組織への酸素運搬を増やすために代償的に多血になっているため、よけいにチアノーゼが出やすくなる。
●貧血/多血とチアノーゼ

中心性のチアノーゼと末梢性のチアノーゼを区別する

中心性 チアノーゼ
心臓から拍出される動脈血の酸素飽和度が低下しているので、全身にチアノーゼが出現する。病変の部位は、たいていの場合、心臓か肺である。
中心性チアノーゼの特徴
末梢性 チアノーゼ
ある局所の血流が低下すると、運ばれてくる酸素が少なくなり、その局所の組織で酸素がいつもと同じように消費されても、血液中に残る酸素の量が少なくなってチアノーゼが出現する。病変は局所の動脈狭窄、寒冷刺激、レイノー現象など。
口腔粘膜や舌にチアノーゼあり:中心性チアノーゼ
口腔粘膜や舌にチアノーゼなし:末梢性チアノーゼ

心音は場所によって違って聞こえる

  • 左右の心室から血液が大動脈と肺動脈に拍出され、心室と心房の間の弁が閉まるときの音がⅠ音(S1)で、血液が拍出された後に大動脈と肺動脈の弁が閉まる音がⅡ音(S2)である。S1からS2が心臓の収縮期に、S2から次のS1が拡張期にあたる。

心尖部

  • Ⅰ音(S1)とⅡ音(S2)がタタッ、タタッ、と聞こえる。

胸骨辺縁上方

  • Ⅱ音が呼吸で変動し、吸気時には分裂してタタッ(呼気)、タタタッ(吸気)、と聞こえる。
  • 子どもの胸壁は薄いので、心疾患がなくても心臓の聴診で雑音が聞こえる(無害性心雑音)ことがある。
  • →無害性心雑音は柔らかくやや高めの雑音
  • →大きく荒い比較的低い雑音は心疾患の存在を疑う
聴診部位

呼吸性不整脈が顕著

  • 呼吸性不整脈とは、吸気で心拍が速くなり、呼気で遅くなる現象である。子どもや若年者では顕著にみられることがあるが、正常な生理的な現象なので、病的な不整脈と間違わないように注意が必要である。
  • 心臓の右心房の上大静脈の開口部近くにある洞房結節のリズムが不整になるので、心電図では、P波から次のP波までの間隔が呼吸に伴って変動する(下図)。発生機序はまだ完全には解明されていないが、主に、迷走神経副交感神経なので、興奮すると心拍が遅く、抑制されると心拍が速くなる)の活動が、呼吸中枢からの影響で吸気時に抑制され、呼気時に興奮することが原因と考えられている。
  • 呼吸性不整脈の影響を避けるため、心拍数や脈拍数は1分間測定するのが原則である。
●呼吸性不整脈の心電図

心拍数の正常値の覚え方

  • 小児のバイタルサインの正常値は成人と異なるだけでなく、年齢によっても変動するので覚えにくい。ここでは、年齢による心拍数の正常値の目安をグラフとともに下に示す。
●年齢による心拍数の変化

血圧は測定部位によって違う

測定部位は心臓と同じ高さにする

  • ベッドに寝ていれば心臓と同じ高さになる。座位の場合は、測定部位を心臓と同じ高さまで上げる。

測定部位による変化

  • ① 右上肢>左上肢:右が5~10mmHg高い
  • ② 下肢>上肢:下肢が約10~20mmHg高い
  • 手を点滴で固定している場合には不可能なこともあるが、可能な場合には、場所による誤差を避けるためにいつも同じ場所で測定する。

マンシェットの幅

  • 上腕の2/3を覆うくらいのものを使用する。
  • マンシェットの幅が広すぎると血圧は低目に出、狭すぎると高めに出るので、注意が必要である。
マンシェットの幅の決め方
マンシェットの幅と血圧

測定速度

  • 3mmHg/秒を目安とする。

高血圧の基準について

小項目

  • 血圧の正常値は年齢によって異なるが、目安として、新生児は70/50、年齢とともに少しずつ上昇して10歳で110/70(新生児の収縮期血圧=10歳児の拡張期血圧)になると覚えておくとよい。
  • 小児の高血圧は、本態性高血圧がほとんどである成人とは違って、何らかの原因疾患があって発症する二次性高血圧が多い。
●新生児と10歳児の標準的な血圧
  • 子どもでは拡張期だけの高血圧はまれなので、まず測定した収縮期の圧を下の表と比較し、基準を超えていたら拡張期の方も基準と比べてみればよい。
  • 基準の表は細かく分けられているが、乳児≧100、幼児≧120、小学生≧130、中学生≧140(いずれも収縮期)を一応の目安として覚えておいてもよい。
  • 自動血圧計での計測も手動による測定とよく相関するが、自動血圧計での計測で基準を超えた場合には、手動で再検査するのがよい。
  • 治療対象となる高血圧(収縮期)は、乳児≧120、幼児≧1300、学童≧140を目安とする。
●高血圧の基準

循環不全のサイン

  • 循環不全のサインには、以下の5つがある。

四肢の冷感

  • 血液が四肢に流れてくる量が減るため、四肢が冷たくなる。

大理石様皮膚

  • 大理石様皮膚は下肢に見られることが多く、皮膚の色が赤紫色の網目状に変化するもので、寒冷刺激、血管炎、膠原病、循環器疾患などによって皮膚の小静脈が腫脹して生じる。
大理石様皮膚

心拍数の増加

  • 循環状態が悪くなると、それを代償するために交感神経が亢進して心拍数が増加する。

尿量低下

  • 腎血流量が減少して腎臓での血液ろ過量が減るため、尿量が減少する。

毛細血管再充満時間延長

  • 爪や軟部組織を5秒ほど圧迫すると、血液の赤みが消失して蒼白になる。圧迫を解除して、どれくらいで元のピンク色に戻るかを観察するのが、
    毛細血管再充満時間(Capillary refill time)
    である。新生児は3秒、それ以外は2秒以内が正常で、それより時間がかかる場合はその部位に循環不全がある。ベッドサイドで簡単にできるので便利だが、心臓と同じ高さで実施すること。
毛細血管再充満時間