第6章 リハビリテーションとケア ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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チームで取り組むリハビリテーション

リハビリテーションの心得

  • リハビリテーションを担当する看護師は、交通事故などによって重い障害を負った患者の気持ちに寄り添い、誠実なケアを心がけることが大切である。
  • ついこの間までは自由に歩くことができたのに、車椅子なしでは移動することができなくなったり、手がうまく動かせなくなって、食事や着替え、入浴などの日常生活動作(ADL)ができなくなったりすると、人は不安や恐怖に陥り、自分の存在意義を根底から揺るがされてしまう。患者が生きる意欲を失い、抑うつになりやすい状態であることを理解する必要がある。

リハビリテーションチームの構成

  • 患者の生活の場が医療機関から自宅へと移るまでの間、看護師をはじめ医療従事者はチームをつくり、患者の残存機能を最大限に活用して、自立を促すための援助を行う。
  • このリハビリテーションに携わるのは、医師、病棟看護師のほか、さまざまな医療従事者で、患者自身やその家族もチームの一員となる。そこでは、患者が日常生活動作を自立してできるようになるために、さまざまな角度から意見交換を行い、リハビリテーションプログラムを作成していく。
リハビリテーションにかかわる医療従事者

看護師のチーム内での役割

  • ①患者が自分の障害を受け入れられるように働きかける
  • 障害のある自分の体を患者が受け入れるまでには、時間がかかる。それを理解して必要な援助を行う。
  • ②患者が自ら意欲的に取り組めるように励ます
  • リハビリテーションは、患者にとって大変忍耐を要するものである。もっとも重要なのは患者のモチベーションであるが、患者が意欲を取り戻してからも、ねばり強く励まし、いっしょに困難を乗り越えていこうとする姿勢が大切である。

リハビリテーションの実際

リハビリテーションの基礎知識

  • 一般的には、回復期に行うトレーニングなどの運動療法を「リハビリ」ということが多いが、実際のリハビリテーションは、急性期の段階からスタートすることが望ましい。
  • 急性期は、生命の維持が最優先されるために活動性が低下して、筋萎縮や関節拘縮、心肺機能の低下、褥瘡など、いわゆる廃用症候群のリスクが最も高まるので、その予防が重要である。
  • 急性期の症状が治まり、体調が安定する回復期には、ADL評価指標による評価を行い、医学的リハビリテーションプログラムを作成し、実施する。

急性期のリハビリテーション

  • 廃用症候群を予防し、日常生活動作(ADL)をできるだけ維持するために、次のような項目を意識して行う。
他動運動や適切な体位交換
患者がなるべく自分で動けるように、看護師は声かけなどをしながら介助する。
深呼吸
呼吸器合併症を予防するとともに、呼吸機能を向上させるために深呼吸を促すようにする。
口腔(こうくう)ケア・全身清拭(せいしき)
清潔を保つとともに、顎の関節や手指、肘、肩、足、膝、股関節などを動かすことが重要である。
早期離床を促す
患者の苦痛を緩和する工夫を行いながら、早期離床をめざす。褥瘡発生の予防にもなる。
会話を増やす
起床時や食事の際、検温時などのタイミングを見はからって、患者が返事しやすい内容を話しかける。また、患者が自分の意思でさまざまなことを選択し、決定する機会を増やすように工夫する。
褥瘡予防のポイント
体位交換のポイント
疾患部分に負担がかからないようにすることが重要である。頚椎疾患の場合は肩の高さの枕を敷き、頭部と体幹が同一線上になるようにしてから行う。腰椎疾患の場合は肩と殿部を保持し、腰椎が捻転しないようにする。また、股関節疾患の場合は脱臼予防のために外転枕を使用し、患肢が上になるようにして行う。 体位交換を行う前には、これから何をするのか、患者に必ず声をかける。ボディメカニクスのポイントを理解して、自分の身体の各部分への負担を最小限に抑え、合理的に行うよう心がける。
体位交換のポイント
体位交換のポイント

回復期のリハビリテーション

  • 体の機能障害がどの程度残るか、ADL評価指標による評価を行う。骨折や関節手術、脊髄損傷などの場合は、医師の処方があれば、機能回復訓練を開始することが可能になる。 看護師は、機能回復訓練の目的や方法、その成果を患者と共有する。患者に過度の疲労がないか、痛みが増幅されていないか、余裕のあるスケジュールが組まれているかなどを定期的にチェックし、調整を行う。

リハビリテーションでの事故防止

  • 筋力の衰えなど、体の機能が低下した人や高齢者の場合は、ささいなことが重大な事故へとつながりやすい。転倒、転落事故が起こりやすいので、要注意である。
ベッド周辺での事故
車椅子からベッドへ移動する際や、その逆のケースで、車椅子の位置が適切でないことや、車椅子のブレーキのかけ忘れなどによって、転倒や転落が起こる危険性があることに注意する必要がある。
床に滑りやすいものが放置されていたり、スリッパなどのはきものが滑ってしまう例も見受けられる。また、ベッドから自力で移動する際に立ちくらみが起こり、転倒事故につながる。ベッド柵が適切に取りつけられていない、必要な抑制帯が使用されていないなど、ベッドの周辺での事故が目立つ。
ベッド以外の場所での事故
車椅子からトイレの便座に移動する際の転倒や、浴室内での転倒なども少なくない。知覚が麻痺している患者が湯たんぽなどで熱傷を負う事故や、リハビリのやりすぎで関節炎を起こす患者もいる。
これらの事故を体験すると、患者に歩行や動作に対する不安や恐怖心を植えつけるおそれがあり、リハビリに対しても消極的になる場合がある。看護師はこれらの危険を常に予測し、未然に防止策を講じる必要がある。
回復期に起こりやすい事故と注意点
移乗動作のポイント
ベッドから車椅子に乗る、さらに車椅子から便座に座るという乗り移り動作を、「移乗動作」という。患部の安静に配慮しながらも、患部以外の健康な部分はできるだけ早期から活用することが、廃用症候群の予防と患者の自立につながる。
30分以上坐位になれれば、車椅子を利用できる。
移乗動作のポイント
移乗動作のポイント
松葉杖の合わせ方と歩行指導
■松葉杖の使い方

脇当てを腋窩(脇)のやや遠位に当て、その下にある握り部を手先でしっかりと握って、体を支える。歩くときは、健肢で体全体を支え、松葉杖と患肢をつま先から30㎝ほど前に出し、松葉杖で体を支えて健肢を前に移動させる。この一連の動きをくり返して前進する。

■松葉杖の長さ

一般に、患者の身長から40㎝差し引いた長さが合うとされている。握りの部分は、大腿骨大転子部の高さが目安となる。まっすぐに立ち、杖の先端をつま先から約15㎝前方に置いて脇当てを腋窩に当てたとき、脇当てと腋窩の間に、指3本くらいのすき間ができる長さが望ましい。