第4章 手術療法とその他の治療法 人工関節の手術 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第4章手術療法とその他の治療法
人工関節の手術

疾患別の保存療法や手術療法について、種類や特徴などを図によって具体的に解説しています。

人工股関節全置換術

手術の適応

  • 失われた股関節の機能を、人工股関節によって回復させる手術的方法である。
  • 変形性股関節症は、病期によって前股関節症・初期股関節症・進行期股関節症・末期股関節症の4段階に分類されるが、そのうち進行期股関節症と末期股関節症に適応となることが多い。また、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症も適応となる。

手術方法

  • 人工股関節にはさまざまな種類があるが、基本構造はほぼ共通しており、臼蓋側はポリエチレン+金属カップ、ステム側は金属材料からなるものが大部分である。代表的なものにチャンレー型があり、すぐれた臨床成績が報告されている。
  • 固定法には、骨セメント使用の場合と非使用(セメントレス)の場合があるが、近年では後者が多く行われている。
  • 術後数日で歩行可能となり、痛みも解消し、股関節の可動域が改善して、短くなった患肢の脚延長もできる。短所としては、感染などの合併症のリスクや、将来再置換が必要になる可能性があることなどがあげられる。人工股関節の耐用年数は、20年程度と考えられる。
  • 前側方アプローチでは、大転子を中心に8~14㎝の皮切を加え、関節の前側方部分を展開、その後大腿骨頭を切除する。関節唇や肥厚した関節包を切除し、臼蓋側のリーミングおよび臼蓋インプラントの設置を行う。次に、大腿骨側のリーミングラスピング*を行い、トライアルインプラントを使って、股関節の安定性や緊張状態などを確認して、最終的に実際のインプラントを大腿骨に挿入する。
  • *ラスピング:人工関節置換術などを行う際、ヤスリを用いて骨の穴を削ること
  • 後方アプローチ前方アプローチなどの方法もあり、最近では小切開での手術が広まっている。
人工股関節全置換術(THA)

看護のポイント

■高齢者が手術適応になることから、全身合併症に注意する必要がある。常用薬や金属アレルギー、抗生物質や消毒薬、絆創膏への過敏反応がないかを確認する。
■術前から松葉杖や杖の使用訓練、患部の清拭などを行う。 術後は体温・血圧・脈拍・呼吸などのバイタルサインの観察をはじめ、麻酔の覚醒状態、輸液量、出血の有無、創部痛の有無、ドレーンの機能状況、末梢循環の良否、神経学的チェックなどを行う。
■深部静脈血栓症を発症しやすいため、下肢の腫れと痛みに注意する。とくに重要なことは、執刀医に脱臼しやすい危険な肢位(術式によって患者ごとに異なる)を確認することで、体位、肢位、外転位の保持、脱臼した場合の異常肢位にも気をつける。
■移動可能時期になったら、起座訓練、車椅子への移動方法の指導、股関節周囲筋の筋力増強訓練を指導する。なお、車椅子への移動の際に、人工関節の脱臼を起こしやすいので、過度の股関節の屈曲、伸展、内転、内外旋などに注意する。
■歩行訓練を開始する時期に、肺塞栓を生じることがあるので、歩行後の呼吸状態やバイタルサインに注意する。

人工膝関節

手術の適応

  • 失われた膝関節の機能を、人工膝関節によって回復させる手術的方法が、人工膝関節置換術である。
  • 変形性膝関節症、関節リウマチ、その他の関節炎が適応となる。

手術方法

  • 人工膝関節にはさまざまな種類があるが、表面置換型が解剖学的構造に近く、一般に使われている。脛骨側、膝蓋骨側はポリエチレン+金属、大腿骨側は金属材料からなる。骨腫瘍などでは蝶番(ちょうつがい)型が用いられる。
  • 術式は、人工膝関節全置換術(TKA)と、単顆置換型人工膝関節置換術(UKA)の2種類に大きく分けられる。
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty : TKA)
膝関節全体を人工関節に置き換える手術で、進行した変形性膝関節症によって日常生活が顕著に制限され、理学療法や薬物療法では十分な効果が得られない場合に適応となる。感染性疾患がある場合は、禁忌である。
膝蓋骨上の近位から脛骨粗面直下まで正中切開を加え、膝関節を展開後、必要に応じて炎症性滑膜組織の切除を行う。手術ガイド器具を使って、大腿骨脛骨膝蓋骨の骨切りを行う。
その後、トライアルインプラントを挿入し、アライメントと屈曲伸展を確認した後、人工関節を挿入する。
人工関節の固定には、骨セメント使用の場合と非使用の場合とがあり、主に高齢者や骨粗鬆症の症例ではセメント使用型が、比較的若年者にはセメント非使用型が選択されることが多い。
人工膝関節全置換術
術後の患肢の運動(CPM装置の使用)

術後は深部静脈血栓症予防用のストッキングを履かせ、積極的な自動運動を指導する。医師の指示のもとに、フットポンプの使用を考える。ドレーン抜去後には、CPM(持続的他動運動)装置を使用して可動域訓練を行う。

CPM装置
単顆置換型人工膝関節置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty : UKA)
膝関節の内側または外側だけを人工関節に置き換える手術で、前十字靭帯の機能が温存されており、屈曲拘縮と内外反の変形が15度以内などの条件をクリアした場合に、適応となる。
TKAと比べて侵襲が少なく、社会復帰までの期間を短縮できるのが特長である。

看護のポイント

■関節リウマチ患者などは、全身状態に問題のある場合が多い。ステロイド薬などの常用薬のチェックをするとともに、薬物過敏、金属アレルギーなどに注意する。
■術前には、松葉杖の訓練、患部の清拭、爪のケアなどを行う。
■術後は体温・血圧・脈拍・呼吸などのバイタルサインの観察をはじめ、麻酔の覚醒状態、輸液量、出血の有無、創部痛の有無、ドレーンの機能状況、末梢循環の良否、神経学的チェックなどを行う。人工股関節よりも短時間に大量出血しやすく、出血性ショックに陥ることがあるので注意する。
■人工股関節以上に、深部静脈血栓症や肺塞栓、肺梗塞を生じやすいので、十分に注意する。
■術後数日経過しても創部の腫脹、疼痛、発赤が著明な場合は感染を疑う。医師の指示のもと、血液検査や関節液の培養を行う。
■移動可能時期になったら、起座訓練、車椅子への移動方法の指導、筋力強化訓練、膝関節可動域訓練を指導する。なお、歩行訓練を開始する時期に、肺塞栓を生じることがあるので、歩行後の呼吸状態やバイタルサインのチェックを十分に行う。