第4章 手術療法とその他の治療法 手術前後のケアの流れ ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

看護師求人TOP > ナースフル疾患別シリーズ > 整形外科 >第4章 手術療法とその他の治療法 手術前後のケアの流れ

第4章手術療法とその他の治療法
手術前後のケアの流れ

手術前後のケアの流れ

術前・術後のケアのポイント

  • 術前は、心身両面から患者の全身状態を把握する。
  • 術後は、本来の手術の目的を達することができるように、術後のリハビリテーションや、QOLを向上させる生活指導を十分に行い、患者の順調な回復を援助する。

術前のケア

身体面のアセスメント
以下の項目を観察して、状態を把握する。
血液検査:赤血球数、白血球数、血色素量、ヘマトクリット値、血小板数、出血時間、凝固時間、血液型、感染症など
尿検査:蛋白、糖、ウロビリノーゲン、潜血、沈査
呼吸機能:胸部X-p、血液ガス、酸素飽和度など
循環機能:心電図、心エコーなど
栄養状態
肝機能
腎機能
薬剤・食物・金属アレルギーの有無、喘息の既往
既往歴の確認(とくに服用中の薬の確認と中止すべき薬の指示が重要)
皮膚の状態
ADL(日常生活動作)→FIM***が利用されることが多い
FIM:機能的自立度評価表(Functional Independence Measure)のこと。身体能力を評価する方法の一種
貯血
術前に600~1000ml貯血することが多いが、通常は各施設によって貯血法や手順が決められているので、確認しておく。
術後の合併症を予測
高血圧糖尿病心疾患腎疾患呼吸器疾患筋力低下拘縮肥満脂質異常症などの既往がある場合は、術前に評価しておく。創部感染深部静脈血栓肺塞栓肺炎褥瘡などの合併症を予測し、術前から対策を立てておく。また、不穏うつ傾向認知症などの精神症状にも注意が必要である。
精神面のアセスメント
インフォームドコンセントを行い、手術を受容しているかどうかを確認し、各施設の定型書類をそろえる。できていない場合は受容できるように援助し、不安の程度、家族の支える力、さらに退院後の家族の受け入れ状況も把握しておく。
オリエンテーション
術前・術後の経過、クリニカルパスがあればその説明
術後の患部のサポートのしかた
術前の検査内容
術後に必要な生活動作の訓練
呼吸訓練
車椅子操作
排泄、食事、体位変換など

術前の処置

1~2日前の処置
清拭による全身の清潔
手術部位の清潔
頭髪、爪、口腔の清潔
便通調整
当日の準備
食事制限
排便、排尿の有無の確認
バイタルサイン測定
尿路の確認(尿道カテーテル挿入の有無と尿量)
点滴ラインの確認、抗生物質投与の確認
麻酔前(60~90分前)の前投薬
化粧・マニキュアの禁止、義歯・指輪・貴重品の管理
手術室への引き継ぎ

看護のポイント

■高齢者は、抗凝固薬・抗血小板薬血管拡張薬など、麻酔や手術に支障となる薬を服用している場合が多く、確認と指導が重要である。各病院の服薬中止時期の取り決めを確認する。
■骨や関節は、とくに感染に弱い部位である。術後、4日以上の発熱が続く場合は、感染の有無を確認しなければならない。
■創部感染が起こると、抗生物質の投与期間の延長や、手術で挿入した人工物の抜去などを行う必要が生じ、患者への負担が大きい。術前の局所の準備から、術後まで徹底した感染予防を行う。

術後のケア

手術直後
ベッド上での安楽な体位、患側肢位(医師の指示を確認)の保持
医師の指示があれば酸素吸入
輸液の滴下速度を確認し、チューブ閉塞、血管外への漏れの有無を確認
意識レベルの確認
バイタルサイン尿量手術部位からの出血ドレーンからの排出を確認(とくにドレーンからの排液の性状と量の予測を医師に確認しておく。術後24時間は、出血による血圧低下、頻脈、ショック、尿量減少に十分注意する)
ギプスなどの圧迫による循環障害神経障害はないかの確認(患側の手指・足趾の自動運動、触覚、爪の色などに異常はないかを確認する。異常がみられたら、ただちに圧迫をゆるめる、はずすなどのケアを行う)
麻酔、輸液、輸血の影響による体温低下の有無を確認
飲食制限をとく時間を患者に伝える
術後はじめての飲水・飲食時は、麻酔からの覚醒レベルのチェック、腸蠕動音の聴診、排ガス・嘔吐などの有無を確認
術後数日間
ベッド上での安静が続く場合は、肺炎胆嚢炎尿路感染に注意する。とくに原因不明の発熱が続く場合は、創部感染とともにこれらの感染症を疑って、検査が行われる。

疼痛対策

  • 手術直後から数日間は、手術創の強い疼痛が認められる。循環障害や皮膚圧迫、体位、カテーテルなどの、手術創とはまったく別の問題、精神的な要因なども痛みとなって現れる。患者の性格などによって、痛みの強さが異なることもある。
  • いずれにしても、患者が術後を安楽に過ごし、手術の目的が達せられるように、疼痛の原因をアセスメントして、緩和の工夫を行わなければならない。
手術創の疼痛緩和
非ステロイド系抗炎症鎮痛薬などの投与が行われるが、まだ痛みを感じていない、麻酔覚醒前から投与するほうが効果的である。痛みが緩和できない場合は、麻薬などオピオイド系薬物の投与も検討する。
血液が創内に貯留しないように、吸引チューブ(ドレーン)が創内に留置してあるが、チューブ内で血液が凝固して吸引できなくなる場合もある。そのような場合を想定して、あらかじめ対処方法を医師に確認しておく。

出血対策

  • 患肢は心臓よりも高い位置に挙上しておく。また、ガーゼを重ねて創部にあて、包帯を巻いて圧迫し、止血を試みることもある。これらは医師の指示のもとに行う。
輸血
出血量が600mlを超える場合は、輸血を検討する。輸血を行う場合は、患者サイドにその目的や危険性を、事前に説明する必要がある。

術後や夜間のせん妄対策

  • 高齢者は入院後、夜間や術後に一過性の精神障害(錯乱状態)を生じることがある。これをせん妄といい、不安感興奮幻覚妄想などの症状や、睡眠障害が生じる。 ストレスや生活リズムの異常が原因になるといわれているので、不安を取り除き、日中の刺激を確保して、昼夜のリズムを取り戻すことが重要である。

深部静脈血栓症(けっせんしょう)・肺塞栓(はいそくせん)の予防

  • 術後はできるだけ早期に四肢の床上運動を開始し、早期離床をはかることが重要である。離床直後は動悸や息切れなどがないか、全身症状をよく観察する(深部静脈血栓症・肺塞栓について詳しくはこちらを参照)。

術後の拘縮予防

  • 大腿骨骨折化膿性骨髄炎化膿性関節炎関節内骨折などは、術後に拘縮を起こしやすいので、良肢位を保持することが重要である。
拘縮が発生しやすい部位の観察と早期発見
大腿骨骨幹部骨折→膝関節拘縮
上腕骨骨折→肩関節・肘関節拘縮
股関節手術→外旋拘縮
橈骨遠位端骨折→手関節・手指関節(MP関節、PIP関節)拘縮
関節内骨折全般
●関節の良肢位●

看護のポイント

■ギプスなどの固定範囲は、必要最小限にすることが望ましい。
■可能な限り、早期離床を行う。
■動かせる関節は、可動域での自動運動を行わせる。