第3章 代表的な臨床検査法 骨折 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章代表的な臨床検査法
骨折

整形外科領域の疾患と合併症について、病態のポイントや症状、診断、治療方法などを解説しています。

骨折の分類

骨折の分類

  • 閉鎖骨折(単純骨折):骨が皮下で折れている。皮膚を破らず、骨折端の露出がない。
  • 開放骨折(複雑骨折):骨折端が軟部組織と皮膚を破って露出する。骨髄炎などの感染症を発症しやすく、緊急処置が必要である。創処置として、大量(数リットル)の生食水による洗浄・ブラッシング・デブリードマン*を行う。固定法には、創外固定や内固定、シーネ、ギプス、牽引などがある。
  • 注意:ブラッシングは、組織を傷めることがあるので賛否両論である。
閉鎖骨折と開放骨折
●開放骨折のGustilo分類●
  • デブリードマン:壊死組織などを切除し、感染を予防する処置
●骨折の型による分類●
●骨折の原因による分類●

骨折の症状

局所症状
骨折した部位に、疼痛変形腫脹異常可動性がみられ、徐々に関節拘縮筋萎縮が生じる。
全身症状
疼痛による神経性ショックや、出血性ショック(大腿骨骨折500~2000ml、骨盤骨折3000ml以上)、発熱などがある。
合併症
神経や血管の損傷コンパートメント症候群内臓損傷脂肪塞栓深部静脈血栓PE(エコノミークラス症候群、肺塞栓)肺梗塞などがある。

骨折の初期治療(緊急処置)

全身的処置
重症例ではまず以下の処置を行う
救急救命処置のABCDの実施
救急救命処置のABCDの実施
出血性ショックの予防(輸液、昇圧剤、輸血、止血処置、血行再建術)
尿路の確保
他臓器合併損傷の治療
局所処置
安静、整復、固定(シーネ、ギプス、牽引、創外固定)
患肢挙上、クーリング

骨折治療の3段階

1 整復
転位した骨をもとの位置に戻す。
徒手整復法:用手的に整復する。
徒手整復法
持続牽引法:骨折部に直接牽引力を加える直達牽引法(骨に鋼線を刺入して直接牽引する)と、骨折部に間接的に牽引力を加える介達牽引法(患肢に絆創膏包帯を巻いて牽引する)がある。
手術的整復法:観血的整復術ともいう。
2 固定
骨折部の安静、疼痛の軽減、変形の防止・矯正を目的として、患部を固定する。
外固定術:ギプス、包帯、副子(シーネ)で、外側から固定する。
応急的外固定術
持続牽引による固定術:牽引法によって持続的に固定する。
内固定術:手術によって、プレートなどの内固定具を用い、骨折部を直接固定する。
3 リハビリテーション(機能訓練)
骨折部の固定に影響のない部位は、関節拘縮筋力低下の予防のため、できるだけ早期に運動の指導を行う(橈骨遠位端骨折での肩の運動など)。
骨折部近接関節は、骨折部の癒合が始まったとき、または癒合の確認後に開始する(橈骨遠位端骨折での手関節や肘関節の運動など)。
手術的に良好な固定が行われた場合は、術後早期から行う。固定によって低下した筋力の回復・強化と、関節可動性の回復・改善を図る。
骨折の遷延性癒合と癒合不全

骨折は、血腫の凝固→肉芽組織形成→仮骨形成という段階を経て、癒合が完成する。骨癒合の進行が遅れた状態を遷延性癒合、骨癒合が不完全なまま停止した状態を癒合不全という。癒合不全によって骨折部に関節のような異常可動性がみられるものが、偽関節である。
大きな原因としては、骨折部の骨の欠損や、固定不良、感染などがあげられる。また、患者自身に糖尿病などの合併症や栄養障害があると、骨癒合の遷延や不全が発生しやすい。これらの難治性骨折は再手術が必要になるケースがあり、骨移植を要することが多い。
しかし、最近になって、超音波療法が骨癒合の促進に有効であることがわかってきた。専用の治療器によって、微弱な超音波を毎日一定時間(20分)骨折部位に断続的にあてる方法で、自宅での加療が可能であり、有効性が実証されている。現在は保険適用となっている。

頻度の高い骨折

鎖骨骨折

  • 交通事故や落下事故などが主な原因である。肩関節周辺の骨折のうち約70%を占め、若年者に多い。
  • 保存療法を行うことが多いが、転位が高度の例や、鎖骨遠位端骨折などの場合は手術適応となる。
鎖骨骨折

上腕骨近位端骨折

  • 肩を強打して骨折する場合もあるが、転倒して手や肘をついたときに骨折する場合が多い。高齢者の骨粗鬆症による骨折が起こりやすい部位でもある。
  • 骨折の形態や転位の状態によっては、手術適応となる。
上腕骨近位端骨折

上腕骨骨幹部骨折

  • 交通事故や転倒による外傷のほか、腕相撲、投球などによっても発症する。高齢者の骨粗鬆症が原因となる場合もある。
  • 血管損傷橈骨神経損傷の合併例も少なくない。
  • 閉鎖骨折の場合は保存療法も行われるが、開放骨折血管・神経損傷の合併例は手術適応となる。
上腕骨骨幹部骨折

上腕骨顆上骨折

  • 転落したときなどに、肘関節を伸展した状態で手をつくことによって生じることが多く、小児によくみられる。
  • 保存療法による整復と固定が原則だが、不安定性が強い場合は手術による固定を行う。
上腕骨顆上骨折

前腕骨(橈尺骨)骨幹部骨折

  • 橈骨と尺骨を、同じ部位または違う部位で、同時に骨折する。手をついた場合は、違う部位で斜骨折らせん骨折を生じ、腕に直接打撲を受けた場合は、同位置で横骨折を生じる。
  • 橈骨または尺骨の一方のみが骨折する場合もあるが、両骨骨折で転位のある場合は、ほとんどが手術適応となり、正確に整復することが求められる。
前腕骨骨幹部骨折

肘頭骨折

  • 主に転倒によって、肘頭部に直接的な外力が加わることで起こり、粉砕骨折となることが多い。手をついて倒れたとき、上腕三頭筋が反射的に強力に牽引した結果、間接的に生じることもある。
  • 転位が少ない場合は保存的な固定を行うが、転位がある場合は手術による固定が行われることが多い。
肘頭骨折

モンテジア骨折

橈骨遠位端骨折

  • 骨粗鬆症を伴った高齢の女性に多く、転倒して手をついた場合に生じる。
  • 保存療法による整復位保持が困難な場合は、手術適応となる。
橈骨遠位端骨折

肋骨骨折

  • 比較的頻度の高い骨折部位である。直接的な強い外力によることが多いが、骨粗鬆症の高齢者では、咳などの軽微な外力でも生じる。
  • 骨折部位に疼痛圧痛がみられ、呼吸によって痛みが強まる。
  • バストバンド固定による保存療法によって、良好な骨癒合を得られることが多い。多数の肋骨が折れて胸郭が不安定な場合や、肺組織の損傷を伴う場合は、全身管理が必要となる。
肋骨骨折

胸腰椎骨折

  • ほとんどが圧迫骨折で、上下からの圧力によって骨がつぶれた状態になる。骨粗鬆症によって起こることが多く、高齢者で頻度が高い。まれに脊髄損傷を合併することもある。
  • 軽度の場合は背部痛腰痛が主な症状である。
  • 治療の中心は保存療法で、悪化を防ぎ、疼痛を取り除き、早期の離床を促すようにする。
  • 高齢者以外では、転落事故などによる高エネルギー外傷で生じる。この場合は神経症状を伴いやすく、固定や除圧手術などの適応になることも多い。
胸腰椎骨折

骨盤骨折

  • 交通事故や転落などで、大きな外力が加わったときに生じることが多い。血管や膀胱尿道などを合併損傷することもある。
  • 骨折部位に強い疼痛が生じ、自力では体を動かせない。内臓に障害が及ぶと、腹痛排尿困難が起こる。大量出血によってショック状態になることもある。
  • 大量出血がある場合は、緊急に創外固定などの外固定による骨盤の安定化をはかるとともに、血管造影塞栓術などの止血処置をする。全身状態が安定した後に、さらに骨折部の整復と固定を行う。
骨盤骨折

大腿骨頚部骨折

  • 若年者にはまれだが、高齢者に頻発する骨折の1つである。直接の原因は転倒などによる外力だが、骨粗鬆症によって骨の強度が低下している人に多く発生する。
  • 主な症状は股関節部の疼痛歩行困難だが、不全骨折では症状がはっきり現れないこともある。
  • 最も癒合しにくい骨折といわれる。保存療法は長期臥床による各種の合併症を発症する例が多いため、手術療法で早期の離床を促す。
大腿骨頚部骨折

大腿骨転子部骨折

  • 大腿骨頚部骨折と同様、骨粗鬆症の高齢者に多いが、比較的癒合しやすい。
  • 大腿骨頚部骨折よりも症状が強く現れ、大量出血がみられることもある。
  • 手術療法で早期の離床を促す。
大腿骨転子部骨折

大腿骨骨幹部骨折

  • 一般には交通事故などの高エネルギー外傷によって発生し、若年者に多い。力の加わり方によって、横骨折斜骨折粉砕骨折など、さまざまな形態をとる。神経や血管などを合併損傷することもある。
  • 最近は、人工関節置換術後の高齢者が、骨粗鬆症の進展によって、転倒などの軽度の外力で骨折する例も増加している。
  • 小児の場合は保存療法を原則とするが、成人では通常手術による固定を行う。開放骨折の場合は、まず創部の洗浄や、デブリードマンなどの処置を実施する。
大腿骨骨幹部骨折
複合性局所疼痛症候群(CRPS)

骨折などの外傷や神経損傷をきっかけに発症する、難治性の慢性疼痛症候群である。神経損傷を伴わないTypeⅠ(これまではRSD〈反射性交感神経性ジストロフィー〉と呼ばれていた)と、神経損傷を伴うTypeⅡ(カウザルギー)に分けられる。主要な症状は激しい痛みと腫脹で、徐々に皮膚や骨の萎縮拘縮を伴う運動障害発汗異常などが現れる。まだ確定的な診断方法はなく、各種の画像検査や症状などから総合的に診断される。薬物療法や理学療法、交感神経ブロックなどの治療で、症状の改善を試みる。

大腿骨顆部骨折

  • 大腿骨遠位部を構成している部分を顆部といい、膝に内反または外反する強い力が加わることで骨折する。高所からの転落や転倒、交通事故などによって生じる。
  • 強い疼痛腫脹膝関節変形や動揺性がみられる。
  • 手術療法になる場合が多く、専用のプレートで固定する。
大腿骨顆部骨折

膝蓋骨骨折

  • スポーツや転倒などで、膝の前面を直接打ちつけることで発生する。また、大腿四頭筋が急激に引っ張られて膝蓋骨に間接的な力が加わると、上下に割れて横骨折になることもある。
  • 転位がない場合などは保存療法を行うが、横骨折で骨片が離開している場合は手術適応となる。
膝蓋骨骨折

脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折)

  • 大腿骨顆部骨折と同じく、高所からの転落や交通事故によって膝に強い外力が加わって骨折し、脛骨の関節面が陥没するものをこのように呼ぶ。半月板の損傷を合併することも多い。
  • 強い疼痛腫脹膝関節の変形や動揺性がみられる。
  • 陥没の程度によっては、プレートによる固定や自家骨・人工骨移植を行う。
脛骨高原骨折

脛・腓骨骨幹部骨折

  • 下腿は前面に軟部組織が少ないため、開放骨折になる場合が多く、感染症も合併しやすい。
  • 脛骨か腓骨、どちらか一方の骨折の場合もある。
  • 開放創がある場合は、受傷後なるべく早く開放創を洗浄し、デブリードマンを実施する。抗生物質を投与して感染・化膿を予防し、手術療法で骨折部の安定と軟部組織の修復をはかる。
脛・腓骨骨幹部骨折

足関節骨折

  • スポーツや転倒などによって関節内に生じる骨折で、靭帯損傷を伴うケースもある。
  • 転位が大きい場合は変形がみられる。皮膚に水疱の形成がみられることもある。
  • 保存療法による整復位の保持が困難なことも多く、手術適応になりやすい。
足関節骨折

踵骨骨折

  • 高所から転落したり、飛び降りたりした際に生じやすい。血行がよいので癒合しやすいが、転位を正確に整復することが困難で、疼痛が持続することもある。
  • 疼痛によって歩行困難となり、腫脹皮下出血がみられる。
  • 転位がない場合は保存療法を行うが、転位が大きい場合は手術適応となる。
踵骨骨折
骨挫傷

外力が加わった結果、骨折には至っていないが、骨内に出血浮腫を生じている状態で、損傷の程度としては打撲と骨折の間にあたる。痛みが強いにもかかわらず、X線検査やCT検査では異常が発見できない場合でも、MRIによって確認できる。膝関節や足関節の外傷で比較的よくみられ、とくに治療をしなくても、多くは数週以内に自然治癒する。受傷直後は捻挫や打撲と鑑別しにくいため、注意が必要である。

看護のポイント

■強度の外力によって骨折に至った場合は、精神的にショックを受けていることがある。とくに、大腿骨骨折や脊椎・骨盤骨折などで歩行不能になった場合は、死への恐怖感、後遺症への不安感などを緩和するようにケアすることが大切である。
■長期臥床に伴う合併症(誤嚥性肺炎、褥瘡、尿路感染、深部静脈血栓症や肺塞栓など)を予防する。
■早期離床をめざした看護を追求する。
■受傷以前の状態に完全に復帰することができない場合でも、ADLやQOLを高める方法を追求する。とくに、退院後のケア・治療(通院や訪問リハビリなど)、社会保障(施設入所、介護保険、身体障害者手帳の申請など)に関する情報を、ケースワーカーやケアマネージャーと連絡をとりながら、適切に与える。