第2章 検査・診断・アセスメント ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第2章検査・診断・アセスメント

整形外科で行われる診察の概要や検査の種類について、画像写真を交えて解説しています。

問診から検査までの流れ

診察の流れのポイント

  • 効率的に診断・治療を行うために、次のように診察を進めていく。
  • 患者と直接対話して、痛みやしびれなどの症状の部位・質・持続時間・経過などを聞く(問診)
  • 視診と触診を行って所見をとる
  • 必要な検査を行い、可能性のある特定の疾患を絞り込み、診断・治療する
診察の流れと看護師の対応

問診

問診のポイント

  • 整形外科領域の患者は、痛みを訴えて病院を訪れるケースが非常に多い。その場合は、どこがどのように、いつから痛むのかなどを詳しく聞く。
  • 持病などの基礎疾患がある場合、今回の疾患が合併症となっているケースもある。既往歴の確認は、その意味でも重要である。

主訴

  • 患者の主訴が痛みの場合は、以下の項目にそって症状を確認する。
痛みの部位と質
痛みの部位はなるべく詳しく聞き、患者本人に痛む部位を示してもらう。痛みの質については、「じんじん痛みますか」などと問いかけ、患者の具体的な表現を引き出す。
痛みの持続時間と経過
痛みがいつ始まり、どれくらい続いているのかを問う。
「歩きはじめは痛むが、しばらくすると痛くなくなる」
変形性膝関節症の疑い
「歩きはじめは痛まないが、100m歩くと下肢が痛む」
間欠性跛行の疑い
痛みのきっかけ(誘因)
痛みが発現するきっかけを問う。
「くしゃみをしてから背部痛が出現した(高齢者)」
胸椎圧迫骨折の疑い
「何度も咳をしていたら胸が痛くなった(高齢者)」
肋骨骨折の疑い
外傷の有無
外傷がある場合は、いつ、どこで、どのような状況で外傷を負ったのかを問う。認知症や神経障害がある場合、本人も気づかないうちに傷を負ったり骨折したりしているケースがあるので、視診や触診の際に腫れや皮下出血をよく確認する。
ADL(日常生活動作)への支障
患者の病態にもよるが、それが日常生活動作に支障となっているか否か、支障となっている場合は、どんなときに支障が出るのかについて、詳しく問う。

既往歴

  • 基礎疾患は、手術やリハビリに影響する高血圧や心疾患、肺疾患、アレルギー性疾患、脳血管障害のほか、以下についても確認する。
  • 糖尿病、AIDS、ステロイド服用→感染性疾患の合併
  • アルコール多飲、肝疾患、ステロイド服用→骨壊死
  • 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、関節部外傷→変形性関節症
  • がん、悪性腫瘍→骨転移
  • 閉塞性動脈硬化症、糖尿病→壊死(足)
  • 薬剤アレルギー・妊娠の有無→投薬・検査に影響

職業歴

  • 職業が要因となって罹患する疾患も少なくないので、患者の職業を必ず確認する。
  • 大腿骨頭壊死(潜水作業など)
  • 腰椎疾患(長時間のデスクワーク、農作業など)

家族歴

  • 家族内で発生する確率の高い疾患がないか、注意する。
  • 関節リウマチ
  • 先天異常
  • 骨系統疾患
  • 遺伝性疾患など

嗜好

  • 多量飲酒、アルコール中毒患者に発症しやすい疾患もある。
  • 大腿骨頭壊死

身体所見

身体所見のポイント

  • 問診が終わったら、身体所見をとる診察へと進む。その段階で、ある程度の疾患を推定する。
  • 身体所見は、視診と触診を中心に行われる。
  • 看護師は、医師が手際よく診察できるように患者の介助を行うので、診察内容をよく理解しておく。

外傷がない患者の視診

  • 歩き方やドアを開閉するしぐさなどの患者の全体像と、特定部位の異常の有無との両面を観察する。
体型
肥満体型は、やせ型よりも関節、腰椎の変性疾患が多くみられる。逆にやせ型には、骨粗鬆症による脊椎変形が多い。
歩行と跛行(はこう)
筋力の低下や神経の麻痺、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)などがあると、通常の歩行にはみられない、その疾患に特徴的な跛行が生じる(下表:跛行の種類を)。 歩行の際に、骨盤が斜めになっていないか、また脊椎の変形はみられないかどうか、注意深く観察する。
●跛行の種類●
四肢(しし)・体幹の変形
高齢者には、骨粗鬆症に起因する脊椎圧迫骨折による胸腰椎後弯変形や、それに伴う体幹の変形がよくみられる。
重度の骨粗鬆症をもつ高齢者では、明らかな外傷がない場合にも脊椎圧迫骨折を生じるので、注意が必要である。
変形性膝関節症による膝の内反変形、外反母趾による足の変形、麻痺性疾患による筋の萎縮なども頻度が高い。
小児の疾患として以前はよくみられた発育性股関節形成不全内反足筋性斜頚などによる変形は、近年減少傾向にあるが、重要な疾患であることに変わりはない。
皮膚
患部に発赤や腫脹、疼痛はないか確認し、ある場合は大きさやその範囲を観察、記録する。
発赤をともなう腫脹と疼痛は、蜂窩織炎などの細菌感染、痛風アレルギー性疾患などの炎症を疑わせる。
発赤がない腫脹は静脈環流の異常が疑われ、深部静脈血栓症に注意する。この疾患では、疼痛がない場合も多い。
静脈にこぶや怒張がある場合は、静脈瘤が考えられる。

外傷がない患者の触診

  • 直接患部に触知し、診察する。患部側だけでなく、健側もよく観察しながら触知し、左右差を確認する。
温度
患部に炎症があれば、その部位を中心に発赤や熱感がある。熱感、腫脹、疼痛があるかどうかを確認する。
動脈の循環障害があれば、患肢末梢の冷感があり、動脈の拍動が触知できない。
筋肉
正常な筋肉はある程度緊張し、硬さがあるが、末梢神経の麻痺では緊張が低下して軟らかく、萎縮がみられる。
患部の筋肉が断裂しているケースでは、患部に陥没がある。
痛み
患部の周辺に痛みはないか、痛みがあればどんな痛みなのかを確認する。主に医師の診察を介助しながら観察したり、医師から直接情報を得たりする。
むやみな触診は痛みを悪化させ、信頼感を失うことになるので注意する。
関節
関節では熱感、発赤、腫脹などの炎症所見以外に、関節可動域(ROM:range of motion)と不安定性に注目する。関節内の異常以外にも、関節包や関節外にある軟部組織の異常などが原因で、可動域が制限される場合もある。その逆に、正常な可動域以上に可動する場合もある。
筋や神経系に障害が起こり、関節を動かさない状態が2週間以上続くと、関節可動域が制限され、関節拘縮が生じる。いわゆる関節が硬くなった状態で、自発的な動作が困難になり、日常生活にさまざまな支障が起こる。
あご・手・膝・足の関節は、皮膚の上からでもその異常を触知することが可能だが、股関節などの筋肉で覆われている部位は触知が難しい。
関節に炎症が起こると、水腫が生じることがある。これは組織の腫脹とは異なり、関節包内に関節液が貯留した状態であり、触診によって液体の波動を触れる。膝関節はとくに水腫ができやすい部位である。
膝関節水腫の触診法

外傷がある患者の視診・触診

  • 整形外科は、骨折などの緊急を要する患者が多くみられることが特徴である。骨折など外傷がある患者は、初期の治療がその後の経過に大きく影響するため、その前提となる所見は、特に重視される。
全身状態
損傷が大きい場合は、呼吸・血圧・心拍・意識状態などのバイタルサインの確認を最優先させる。
開放骨折の有無
骨折があり、しかも開放創のある外傷は、緊急処置が必要となる。創の状態を注意深く観察し、神経や血管の損傷はないか確認する。
出血に油滴が混じっている場合は、骨髄組織も損傷している可能性が高く、開放骨折(いわゆる複雑骨折)である。この場合は、ゴールデンタイム(受傷後6時間)以内に洗浄デブリードマンなどの処置が必須となる。
循環動態
骨盤や大腿骨などの大きな骨の骨折では、受傷直後は循環が保たれていても、時間の経過による大量の出血が、循環不全につながる場合がある。全身の循環を観察する際は、時間の経過にそってバイタルサインの記録をとることが重要である。
また、長期臥床になった場合には、深部静脈血栓症肺塞栓(PE)による循環不全を起こすことがあり、ときに致死的となる。
痛み
骨折や軟部組織損傷があれば、圧痛叩打痛がある。
高齢者の脊椎圧迫骨折の場合は、背部を叩くと、骨折部位に痛みが走る。
神経の損傷がある場合は、その部位を軽く叩くと、その部位よりも離れた部位に放散痛*1やしびれがある。
四肢(しし)・体幹の変形や腫脹(しゅちょう)
外傷では、骨折や脱臼による変形や腫脹が最もよくみられる。転位(ずれ)のある骨折では、患部の異常な可動性が認められる。 患者の移動や処置の介助を行う場合は、患部の安静を保ちながら愛護的に行い、さらなる組織の損傷を予防する。
受傷による損傷だけではなく、外傷後に徐々に生じる腫脹や、コンパートメント症候群による循環障害・神経障害を見逃さないためにも、腫れや痛み、しびれなどを経時的に観察、記録することが重要である。
骨折部の腫れは、一般に受傷から2~3日で最大となる。したがって、徒手整復は腫脹が悪化する前、受傷後数時間以内に行うことが望ましい。
通常の腫脹や疼痛が減少する1~2週間を経過しても、異常な腫れや痛みが継続する場合は、何らかの神経損傷やRSD*2(CRPS*3)を疑う。

一般検査

一般検査のポイント

  • 骨や関節の状態を調べる手段として、X線検査や血液・尿検査・関節穿刺による関節液採取などの基本的な検査が行われる。
  • 検査を前にした患者は、これから始まる検査が痛くないかなどの不安をかかえている。看護師は、その不安をなくすために、検査内容についてわかりやすく説明することが大切である。

単純X線検査

  • 骨がX線を吸収して白く映る原理を利用した検査法。患者の運動器疾患や外傷の状態を診察する方法として、最もよく行われる。

検査前後のケア

患者が女性なら、事前に妊娠の有無を確認しておく。
外傷や疼痛のある患側と同時に、問題のない健側も撮影することがある。その場合は、より診断しやすくするために行うことを、患者に説明する。
単純X線検査の画像

血液・尿検査

  • 内科などほかの科と同様に、整形外科においても、一般血液・尿検査は基本的な検査である。
  • 血算生化学免疫尿定性検査などのほか、手術を前提とする場合は、血液型感染凝固系の検査も行われる。

関節穿刺

  • 関節液が貯留している場合には、関節穿刺による採取が行われることがある。
  • 関節液内の結晶成分の同定(痛風の尿酸結晶や偽痛風のピロリン酸Ca結晶など)や、顕微鏡検査による細菌の同定、培養検査、抗生物質の感受性検査などが行われる。

特殊画像検査

特殊画像検査のポイント

  • 画像のコンピュータ処理などの高度最先端技術の発達によって、患者に対する負担の少ない、非侵襲的検査法が広く普及してきた。しかし、脊髄造影や関節造影などの侵襲的検査も、必要に応じて行われる。
  • 個々の検査の特徴を理解し、患者への最善のケアを行うよう、心がける。

CTスキャン

  • X線を用いるという点では単純X線撮影と同様だが、CTスキャンの場合はX線撮影で得た画像を、コンピュータで再構成する。単純X線撮影では得られない、骨内部や軟部組織の病変を、リアルに再現する。
  • 画像の再構成のしかたによっては、3Dと呼ばれる立体画像を作成することもできる。たとえば、骨腫瘍の部位や病巣の広がり方、粉砕骨折の形状などについても、正確に確認することができる。
  • クモ膜下腔に造影剤を注入してCTを施行し、造影剤の広がりから病巣を特定する、CT脊髄造影法(CTミエロ)という検査も行われている。

検査前後のケア

X線を使用するので、女性の場合は妊娠やその可能性の有無を確認しておく。
造影剤を使用する場合は、ヨード過敏症かどうか、問診やテストを行う。また、副作用の可能性について説明し、検査中や検査後に異常を感じたら、すぐに知らせるように伝える。
3D-CTの画像
脊髄造影とCTミエロの画像

MRI(核磁気共鳴断層画像検査)

  • 体内の水素原子が特定の周波数の磁気を吸収する性質を利用し、強力な磁石でできた筒状の機械に入って人体に磁場をかけ、断層像を撮影する方法である。
  • 2種類の磁場に人体を置くことによって、水素原子の磁場的な特性の違いをコンピュータ処理して、体内の状態を画像に表す。
  • 放射線被曝のような人体への侵襲がなく、人体のあらゆる断層を撮影できる。

検査前後のケア

他の検査法と比べて撮影時間が長いこと、検査中は不快感につながりやすい、断続音のする狭い機械の中にとどまらなければならないことを説明しておく。
閉所恐怖症ではないかどうかを確認する。
金属や磁気カードを身につけたままでは検査を受けられないことを、説明しておく。
刺青(入れ墨)のある患者やアイシャドーを使用している場合は、金属粉末混入の影響で検査ができないことがあるので注意する。
手術によって、体内に金属性プレート類や人工関節などのインプラントが埋入されている場合には、磁気の影響を受けるおそれがあるので、検査が可能かどうか必ず主治医に確認する。 ペースメーカーを入れている患者には禁忌である。
腰椎MRIの画像

骨シンチグラフィー

  • 放射性同位元素を血管内に注入し、全身の骨に集まった放射能の集積度を画像化する方法である。
  • 骨腫瘍骨折炎症部分に集積するため、その病変は強く映し出される。

検査前後のケア

放射性物質を体内に注入することに、強い不安を抱く患者も少なくない。この検査で使用される薬剤の放射線量は極めて微量で、体内に注入しても悪影響のないものであり、副作用はないことをわかりやすく説明する(この検査による被曝線量は、単純腰椎X-pより多いが、腹部全体のCTスキャンよりは少ない程度で、3~6mSvと報告されている)。
注射から撮影まで3時間程度かかり、撮影自体にも30分~1時間程度かかることを事前に説明しておく。
骨シンチグラフィーの画像

関節造影法

  • 膝・肩・肘・手足の関節の、関節腔の形、関節内の軟骨、軟部組織の病変、滑膜、関節内遊離体など、X線撮影では得られない情報が得られる。
  • 最近はMRIなどの非侵襲的検査が飛躍的に発展しているため、関節造影の適応範囲は減少しているが、必要に応じて行われる。また、CTスキャンを併用して、詳細な関節構造を観察することもできる。
  • 検査には水溶性ヨード剤を用いるため、ヨード過敏症に対する問診やテスト、感染防止の説明を行い、血管や神経の損傷に注意する。

検査前後のケア

感染を予防するために、検査当日の入浴・シャワーは避けるよう説明する。
検査部位が腫れたり、痛む場合は、すぐ知らせるように伝える。
検査後の抗生剤の服用について説明する。
関節造影の画像

脊髄造影法(ミエログラフィー)

  • 脳脊髄液は、脳と脊髄を外部の衝撃から守るクッションの役目を果たしている。脳室脈絡叢の毛細血管内で血液より産生、放出され、クモ膜下腔を循環した後、再び血液中へ吸収される。脳脊髄液は無色透明で、全量は約100~150ml程度である。一日に500ml程度産生されるので、日に3回以上入れ替わっている。
  • 脊髄造影法は、脳脊髄液が循環しているクモ膜下腔を針で穿刺して造影剤を注入し、その流れがスムーズか否か、流れに異常がみられる場合は、どの部位で滞っているのかを観察して、狭窄や閉塞の部位などを特定する。
  • 痛みなどの患者への負担が大きいため、その必要性を疑問視する声もあるが、椎間板ヘルニア脊柱管狭窄脊髄腫瘍などの外科治療が必要な疾患で行われることがある。

検査前後のケア

ヨード過敏症か否かの問診、テストを行う。
造影剤の頭蓋内への流入を予防するために、検査後は8時間程度床上安静、軽度頭部挙上(15°程度)を守る。
検査後の痙攣などの副作用に備え、輸液路を確保しておく。また、痙攣が生じた場合は、鎮静薬・抗不安薬を投与する。
検査後(おもに翌日)に、針穴からの髄液漏出による低髄液圧によって、頭痛が生じることがある。その場合は安静・水分補給(点滴)・鎮痛薬の投与を行う。
脊髄造影の画像

骨密度の測定方法

骨密度の測定方法

高齢社会の中で増加の一途をたどっているのが、骨粗鬆症である。骨密度が低下し、ちょっとしたはずみで脊椎や大腿骨頚部、前腕骨などを骨折しやすくなる。寝たきりになるケースも少なくないため、医療費の増大に拍車をかけていることも、社会的に大きな問題となっている。 近年は、市町村レベルの定期検診で、骨密度が測定されるようになってきている。また、人間ドックに組み込んでいる病院も増えている。 骨粗鬆症の診断基準として、国内では、日本骨代謝学会が女性の原発性骨粗鬆症の基準を作成した(2000年)。骨密度が若年成人平均値(YAM:Young Adult Mean)の70%未満に低下しているものを、骨粗鬆症と診断している。代表的な測定法には、以下のようなものがある。

■DXA法(デキサ法)
現在広く普及している測定法。微量のX線で、腰椎、大腿骨頚部、橈骨、踵骨などを詳しく測定する方法で、より正確な測定値が得られる。
■MD法(エムディー法)
手の中手骨をX線撮影し、その画像の濃淡で骨密度を算出する。
■超音波法
踵骨を測定し、超音波による骨量指標を導き出す。保健所などで低骨量者のスクリーニング検査として用いられることが多い。
■pQCT法
専用のCT装置によって、橈骨を測定する。