第4章 治療と日常管理 治療と日常管理 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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糖尿病の治療(食事療法)

治療の概要

  • 糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法が、3本の柱となる。
  • すべての糖尿病で、食事療法が基本。また、運動療法が多くのケースで重要となる。薬物療法は、食事と運動だけでは血糖コントロールがむずかしい場合に採用される。

糖尿病の食事療法

  • すべての糖尿病で実施するが、2型糖尿病では食事療法の成否が治療の成否に直結する。
  • 患者の1日の摂取エネルギー量は、その人の標準体重と、その人の身体活動量から算出する。
  • 1日の摂取エネルギー量(kcal)=標準体重(㎏)×身体活動量★(kcal/㎏標準体重)

身体活動量はからだを動かす程度によって決まるエネルギー必要量(kcal/㎏標準体重)

  • 食事療法では、『糖尿病食事療法のための食品交換表』(日本糖尿病学会編/日本糖尿病協会・文光堂刊)の活用が推奨されている。
  • 食事療法では、1日の食事摂取量を守るほか、3大栄養素の摂取バランスにも注意することが求められる。これについても、『食品交換表』がよい参考書になる。
■身体活動量の目安
  • 1型糖尿病の場合も、食事療法の継続は血糖コントロールを安定させるために必要だが、それだけで高血糖が改善されることはなく、インスリン注射の使用が必須である。
  • 外食が多い人や飲食のつき合いの多い人は、食事療法を守りにくい傾向がある。そのような患者には、医師と緊密に連携して、具体的なアドバイスをすることが望ましい。

看護のポイント

きめこまやかな対応を
患者さんにはさまざまなタイプがあるので、看護計画を画一的なものにしてしまうと、きめこまやかな看護は不可能となる。患者さん個々の性格・心理面、職業や家族関係の側面などの情報も踏まえて、それぞれに合った形でサポートすることが大切である。

糖尿病の治療(運動療法)

治療の概要

  • 運動療法には、急性効果と慢性効果がある。
  • 急性効果:筋肉でのグルコース(ブドウ糖)、脂肪酸の利用促進と血糖値の低下。
  • 慢性効果:エネルギー消費器官である筋肉の増加、心肺機能の維持・向上、肥満の解消とインスリン抵抗性の改善。
  • 選択する運動の種類は、上記の目的に照らすと、有酸素運動が適している。無酸素運動は、グリコーゲンがエネルギー源となるためグルコース(ブドウ糖)の消費につながりにくく、また血圧の過度の上昇を招くので、適していない。

糖尿病の運動療法

  • 運動療法を始めてもらう前に、所定のメディカルチェックを行い、安全を確保することが必要。
  • 安全で効果のある運動療法を続けるためには、個々の患者に適した運動の種類、強さ、運動時間などについて、調整することが必要。運動の種類は有酸素運動が適切である。
  • 運動についての一般的な目安は、1日150~250kcal の消費、1週間にできるだけ4~5日の実行。
  • 心臓への過度の負担を避けるため、運動中や運動後の脈拍数チェックを励行してもらう。
  • 運動が激しすぎると、かえって血糖値の上昇やケトン体の増加などのマイナスの影響が心配されるので、その点のアドバイスも必要である。
■ 1 日の運動時間の計算法
■運動強度の目安

糖尿病の治療(薬物療法)

治療の概要

  • 糖尿病の薬物療法は、経口血糖降下薬療法と、インスリン療法に大別できる。
  • 経口血糖降下薬は、2 型糖尿病の人に有効である。
  • インスリン注射は、1 型糖尿病では絶対的に必要である。
  • 2型糖尿病の場合、インスリン注射は経口血糖降下薬があまり、あるいは全然効果を示さないケースで使用される。また、極度の高血糖状態をただちに解消する必要がある場合や、妊娠糖尿病(糖尿病の人が妊娠した場合も含む)、手術前後でも、使用される。

経口血糖降下薬の種類と基本的な使用法

  • 経口血糖降下薬には、インスリン分泌を促進させる作用のあるもの、小腸での糖質の吸収を遅延させ、食後高血糖を緩和するもの、インスリン抵抗性を改善する効果のあるものなどの種類がある。
  • これらの経口血糖降下薬は、必要に応じて、単独あるいは組み合わせて使用され、使用に際しては少量から開始し、血糖値やHbA1c値などをみながら、少しずつ増量していく。
  • 薬効の一次無効(当初より無効の場合)やニ次無効(当初有効であったが次第に無効になった場合)が生じたら、別の経口血糖降下薬に変更するか、インスリンの併用またはインスリン療法に移行する。
■経口血糖降下薬の種類
  • 2型糖尿病でインスリン注射を適用することになった場合でも、血糖コントロールが改善されれば、インスリン注射の中止・経口血糖降下薬のみの使用という形に戻すことができるケースが少なくない。

インスリン注射薬の種類と基本的な使用法

  • インスリン注射薬は、膵臓から分泌されるインスリンと同じものを合成した薬剤である。
  • インスリン薬には、超速効型・速効型・混合型・中間型・持効型(持続型)の、効果の現れ方の違いによる5 種類があり、病態に合わせて選択される。
  • インスリン注射薬は、単独で使用される場合もあるが、病態により、複数を組み合わせることもよくある。注射回数も、1日1回のケースもあれば、3~4回というケースもある。
  • 1日1回の場合は、膵臓のインスリン分泌能力がある程度あるケースが基本となる。
  • 1日3~4回の場合は、健康な人の自然なインスリン分泌状態に似せた効果を狙う注射方法をとるのが普通である。

看護のポイント

低血糖への対応法を確実に伝える
薬物療法をしている患者、とくに血糖コントロールのよい人ほど、服薬・注射と食事の時間的タイミングのずれや運動などにより、低血糖を起こす恐れが生じる。対応が遅れると危険な状態になるので、対応法を確実に患者に伝えておく。その要点は、①低血糖の症状を感じたら、がまんしないこと、②ブドウ糖または砂糖(あるいはビスケットなどの糖質食品: α-グリコシターゼ阻害薬服用中の人はブドウ糖のみが有効)を常に携帯し、症状が現れたらすぐに摂取すること、③自分では対応できないときは、周囲の人に対応してもらえるような環境づくりをすることなど。
■インスリン注射薬の種類と使い方

糖尿病合併症の治療

  • 糖尿病の合併症は、正確には内分泌・代謝疾患そのものではないが、糖尿病患者の多くが発症の危険性をもっているか、すでに発症している。したがって、糖尿病の3大合併症の治療について、その概略に触れておく。

糖尿病網膜症の治療の概略

  • 糖尿病網膜症の治療は、基本的には、その進行の度合い(糖尿病網膜症の病期については「糖尿病網膜症の進行モデル」を参照)に応じたものとなる。
  • 病期①または②の段階で適切な内科的治療を施すことができれば、それ以上の進行を食い止めることが可能となる。
  • 病期③以降は、眼科的治療が必要となる。
■糖尿病網膜症の治療法の原則

糖尿病腎症の治療の概略

  • 糖尿病腎症の治療は、進行の度合い(6段階の病期)に対応して施される。
  • 基本的な治療法は、血糖コントロールと血圧の管理(薬物療法)が中心になる。高血圧合併例では塩分制限(6g/ 日未満が推奨されている)。
  • 第2期までに適切な治療を開始すれば、ほぼ確実に回復できるが、それを過ぎると完治できないケースが大半となる。
  • 第3期(顕性腎症)になるとたんぱく質の摂取制限(たんぱく制限食)が必要となる。
  • 第5期に入ると、人工透析を導入しない限り、生命の維持は不可能となる。
  • 一般的には、発症から第5期に至るのに30年前後かかるとされており、病期が急激に進行することはほとんどない。

看護のポイント

食事制限への“抵抗”に対応する
糖尿病の基本的な治療法である食事療法に対して、「好きなだけ食べられなくなった」と抵抗感を抱いている患者さんが多い。糖尿病腎症を合併すると、たんぱく制限や塩分制限が加わってくるので、その抵抗感はさらに増幅しがちである。
そのような患者さんに対しては、病期と回復の可能性の関係などについて根気よく説明し、食事療法に対するモチベーションを高めてもらえるように配慮したい。
■糖尿病腎症の治療法の原則と生活指導
■糖尿病腎症での血圧管理目標

糖尿病神経障害の治療の概略

  • 糖尿病神経障害による症状は、きわめて多様である。そのため、その治療法も多岐にわたる。その多くは対症療法であるうえ、速効性に乏しいケースが多い。
  • 障害の程度が軽い場合は、血糖コントロールを確実に行うことで改善するものが少なくない。また、血糖コントロールを適切に行わない限り、症状の軽重にかかわらず、改善はむずかしい。
  • 疼痛の鎮静には、鎮痛薬を使用するほか、抗うつ薬や抗けいれん薬、抗不整脈薬などを使うケースもある。
  • 神経障害が複数現れている場合や障害の改善が思わしくない場合などは、糖質の代謝を改善する目的で、アルドース還元酵素阻害薬やビタミンB12薬などを使う。
  • その他、症状に応じて各種薬剤が処方される。
糖尿病神経障害が招く思わぬ事態

糖尿病により動脈硬化が進行していることがベースとなり、自律神経障害が合併すると、心臓の機能にも異常が生じて、突然死の原因になることがある。また、感覚のまひなどが原因となり、発症の徴候に気づかずに突然強い低血糖を起こし、介助が必要になる例がある。糖尿病神経障害は、痛みが強くならない限り軽視されがちなので、患者さんの注意を喚起したい。

脂質異常症の治療

治療の概要

  • 脂質異常症の多くは、摂取エネルギー量過多と、運動不足がベースとなって生じるので、その是正を図ることが必要になる(食事療法・運動療法)。
  • 食事・運動療法によっても改善が思わしくない場合は、薬物療法を行う。
  • 家族性の脂質異常症では、食事療法・運動療法だけでは改善が望めないので、最初から薬物療法を行い、必要があれば血漿交換療法を行う。
  • ニ次性脂質異常症では、原疾患の治療を優先的に行う。それでも脂質異常が継続していれば、状況に沿った脂質異常症の治療を開始する。
  • 肥満がある場合は、その解消をめざす。

食事療法の概要

  • 高コレステロール血症では、コレステロールの摂取量を抑える(1日300㎎以内)。
  • 高トリグリセリド血症では、摂取エネルギー量全体の抑制を図る(1日30kcal/kg 標準体重以内)。

運動療法の概要

  • 運動は、LDLコレステロール値の低下と、HDLコレステロール値の上昇という、両面の効果が期待できる。
  • 脂質異常症の運動療法の方法は、糖尿病の場合と同様に考えてよい。
    糖尿病の運動療法についてはこちらを参照。
  • 肥満の場合は、運動量を増やすことも考慮することがある。
■脂質異常症に使用される主な薬品の種類

肥満症の治療

治療の概要

  • 食事・運動療法を基本とし、必要に応じて薬物療法を行う。
  • 肥満症は、不適切な生活習慣がベースにあることが大半である。したがって、その是正が治療の鍵となる。是正に消極的になる理由が何であり、どうすればそれを克服できるかを本人に考えてもらうことなども、治療の大きなポイントとなる(行動修正療法)。

食事療法の概要

  • 栄養バランスを維持しながらエネルギー摂取量を減らすことが基本となる。

低エネルギー食療法:一般的な食事療法。
●1日のエネルギー摂取量を600~1200kcalに制限する。
●栄養バランスは、糖尿病の食事療法に準じるとよい。
●たんぱく質は、1.0~1.5g/kg標準体重を維持する。

超低エネルギー食療法:低エネルギー食では効果が不十分な場合や、肥満の解消を急ぐ必要がある場合の方法。
●1日のエネルギー摂取量を600kcal以下に制限する。
●たんぱく質の摂取に支障をきたすので、その対応策を講じる(フォーミュラー食など)。

運動療法の概要

  • 基本的には、糖尿病の運動療法と同様に考えてよい。
  • 過体重が原因となり、運動により関節や筋肉を傷めたり、心肺機能に過度の負担がかかることが多いので、それらを予防するためのアドバイスや対応も必要である。

薬物療法と外科療法の概要

  • 薬物療法で使用されるのは、食欲抑制作用のあるマジンドール(商品名:サノレックス)である。使用期間は3か月以内で、通常、BMI35以上ある場合に適用する。
  • 超肥満のケースや、食事・運動・薬物療法だけでは効果が乏しい場合は、外科療法が検討される。胃を小さくしたり、小腸の状態を変えて消化・吸収をしにくくしたりする方法がとられる。
脂肪1㎏のエネルギー量

中性脂肪は、1㎏当たり9000kcalもある。体の脂肪組織にはほかの成分もあるのでそれよりは少ないが、それでも7000kcal以上はある。つまり、食事・運動療法で体重(中性脂肪)を1㎏減らすには、それだけの収支改善が必要になる。机上の計算だが、体重20㎏の減量が必要なら、14万kcal以上減らす計算である。1日400kcal減らすとすると、ほぼ1年がかりという数字になる。

高尿酸血症・痛風の治療

治療の概要

  • 食事療法を中心とする生活指導と、薬物療法が基本となる。
  • 高尿酸血症・痛風には、ほかの生活習慣病が合併することが多いので、その治療と同時並行的に進めるケースが多い。

食事療法の概要

  • プリン体の摂取制限を基本に、糖尿病や肥満の合併を防ぐため、摂取エネルギーを適正化することも必要である。
  • アルコールは、プリン体の産生を促進するなどして血中尿酸値を上昇させる作用があるので、原則禁酒、無理な場合でも確実な減量が必要である。
■高尿酸血症の生活指導のポイント

薬物療法の概要

  • 高尿酸血症では、病型に合わせて尿酸排泄促進薬か尿酸生成抑制薬を用いる。
  • 痛風関節炎には、疼痛を緩和する薬を用いる。また、痛風発作を抑制する薬もある。
■プリン体の多い食品
■高尿酸血症・痛風に使用される主な薬品の種類

骨粗鬆症の治療

治療の概要

  • 骨粗鬆症の治療は、骨吸収の抑制と、骨質の改善を目的にして施される。
  • 骨粗鬆症の最終目標は、骨折の予防である。
  • 治療内容の基本は、運動・食事療法と、薬物療法である。

食事療法の概要

  • 日本人の食生活で、栄養摂取の大半は所要量を満たしているが、カルシウムだけは、少なからず不足状態にある。
  • >骨の主成分がカルシウムであることから、食事療法では、カルシウム摂取量の確保が中心的テーマになる。すなわち、カルシウムを豊富に含む食品の積極的な摂取が必要となる。
  • カルシウムが、骨に効率よく蓄積されるためには、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウムなどのミネラルの確保も欠かせない。

運動療法の概要

  • 運動療法は、筋力増強と骨量の維持を目的として実施する。
  • 個人差が大きく、病態もそれぞれなので、療法としての基準的なものはない。また、事前のメディカルチェックが必要である。
  • 平均的レベルの患者に対しては、ストレッチやウォーキングを推奨する。軽い運動を、可能な限り持続することを目標とする。
  • 運動が転倒・骨折と表裏の関係にあることは否定できないの で、とくに生真面目なタイプの人には、がんばりすぎないようにアドバイスすることが必要である。

薬物療法の概要

  • 骨吸収抑制作用のある薬と、骨質の改善作用のある薬、カルシウムを補充する薬などが使用される。
■骨粗鬆症に使用される主な薬品の種類

ビタミン欠乏症の治療

治療の概要

  • 通常、大半のビタミンは食事による摂取でまかなっているので、ビタミン欠乏があれば、まずは食事内容の改善が必要となる。
  • ほかの疾患が原因でビタミン欠乏をきたしている場合は、その疾患の治療を確実に行う。
  • 欠乏症状が強く現れていたり、欠乏が原因となって別の疾患が起きている、またはその危険が認められる場合は、不足しているビタミンを補給する形での薬物療法も採用される。

食事療法の概要

  • 不足しているビタミンを多く含む食品を、積極的にとるようにアドバイスする。
  • 当面、薬物療法を採用しないケースでも、食事内容の改善を実行してからの病態の推移を観察しつつ、必要に応じて、不足しているビタミンの補充を薬物により行うかどうか検討する。
  • 脂溶性ビタミンは、過剰摂取によりビタミン過剰症を起こしやすいので、「日本人の食事摂取基準」に示されている量を参考にしながら、その摂取を実行するようにアドバイスする。
  • 脂溶性のビタミンAは動物性食品、特に肝臓に豊富に含まれているが、摂食量が多過ぎると過剰症をきたしやすいので、その心配がないビタミンAの前駆物質である植物性食品由来のカロテンを豊富にとるようにしたい。カロテンは緑黄色野菜に多く含まれ、体内で必要に応じてビタミンAに変化する。
  • ビタミンDは、日光を浴びると体内で合成される。食事による摂取と並行して、日光浴の実行も推奨したい。
■欠乏しやすいビタミンを多く含む食品の例

視床下部・下垂体疾患の治療

下垂体腺腫の治療

  • 高プロラクチン血症では、原則的に薬物療法が著効を示す。
  • その他の多くの場合は、手術が第一選択肢となる。また、放射線療法(外部照射・ガンマナイフ)も有効なことが多い。ただし、放射線療法による効果は、半年から数年経過して現れる。
  • 腺腫によるホルモン過剰分泌が原因となり、下垂体性巨人症・先端巨大症、高プロラクチン血症、クッシング病などが起こるが、それらの治療については後述する。

下垂体性巨人症・先端巨大症の治療

  • 腫瘍除去手術が第一選択肢となる。手術法には、ハーディ法と前頭開頭法があるが、ハーディ法による手術が多い。
  • 放射線療法は、必要に応じて選択が検討される位置づけになる。
  • 手術により腺腫の完全除去をめざすが、残存腫瘍がある場合は、ガンマナイフによる除去が行われることがある。また、成長ホルモンの分泌を抑制する作用のある薬剤が使われることもある(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。

高プロラクチン血症の治療

  • 薬物療法が第一選択肢となる。
  • 薬物療法で使用される薬は、主にドーパミン受容体に作用してプロラクチンの分泌を抑制するものである(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。
  • 手術が第ニ選択肢となる。ハーディ法によることが多い。放射線療法を採用することもある。
  • 手術は、薬物療法の効果が思わしくない場合、プロラクチン産生腫瘍が大きい場合、続発性のケースである場合などで実施される。

クッシング病の治療

  • 一般的には、ハーディ法による腺腫除去手術が行われる。
  • 残存腺腫が生じた場合は、放射線療法が行われる。放射線療法は、手術後に腺腫が再発した際にも採用される。
ハーディ法

経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術。内視鏡などを用いる手術法。内視鏡を鼻孔から差し入れ、蝶形骨の下側の洞を通過してトルコ鞍を貫通し、患部に到達させる。そして、内視鏡先端部の器具を操作して腺腫を切除する。切開をしないため、患者への負担が少ない手術法である。

  • 薬物療法では、プロラクチン分泌抑制薬、抗腫瘍薬などのほか、対症療法的に降圧薬が用いられることがある。ただし、一般的に薬物療法の効果は高くない(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。

汎下垂体機能低下症の治療

  • 腫瘍などにより機能低下が起きている場合は、手術または放射線照射により、それを除去する。
  • ホルモン分泌の低下に対応して、ホルモン補充療法を行う。基本的には、下垂体ホルモンの分泌低下により生じる下位臓器のホルモン分泌低下に対応して、その下位ホルモンの補充を行う形をとる(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。
  • 原因疾患が腫瘍性でない場合は、たとえば結核が原因なら抗菌薬をなどというように、その疾患の治療を目標とする薬を投与する。

看護のポイント

骨粗鬆症に注意を
クッシング病は、ACTHの分泌過剰がコルチゾールの分泌過剰を引き起こすことにより、発病する。コルチゾールには、腸でのカルシウム吸収の抑制作用と、腎臓でのカルシウム排泄の促進作用があるため、骨粗鬆症を招きやすい。患者さんには、歩行中の転倒や、ベッドでの起居動作などに、十分に気をつけるように伝えることが大切である。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療

  • 成長ホルモンの分泌不全だけが原因となっている場合は、成長ホルモンの補充療法を行う(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。
  • 下垂体の器質的異常が原因となっている場合は、手術などによりその原疾患の治療を行うことがある。
  • 下垂体ホルモンの分泌不全が成長ホルモン以外のホルモンにも生じている場合は、その補充も並行して行う。

尿崩症の治療

  • 中枢性尿崩症では、ADH(AVP)のホルモン補充療法を行う(視床下部・下垂体疾患の薬 についてはこちらを参照)。
  • 腎性尿崩症では、サイアザイド系の利尿薬が使われる(下記参照)。
尿崩症に利尿薬?

腎性の尿崩症の薬物療法では、サイアザイド系の利尿薬を使用する。サイアザイドは、遠位尿細管でのNa・Cl・水の再吸収を阻害することで、利尿効果を現す。その結果、糸球体濾過率が低下し、それが近位尿細管での Na・水の再吸収を促すことになる。つまり、尿量が減少する。尿量が少なければ、遠位尿細管での水の再吸収があってもなくても、尿量は減少したままである。ほかのタイプの利尿薬では、この効果は得られない。

甲状腺疾患の治療

バセドウ病の治療

  • バセドウ病の治療方針は、年齢や甲状腺腫の大きさ、妊娠の有無や予定など、いろいろな条件を考慮して決定される。
  • 主な治療方法は、薬物療法、放射性ヨード療法(アイソトープ療法)、手術療法の3種類がある。通常は、薬物療法が第一選択肢になるケースが多い。
  • 薬物療法では、抗甲状腺薬が使用される。甲状腺ホルモンはヨードを原料にしてつくられるが、抗甲状腺薬は、甲状腺ホルモンの生合成を妨げる働きをもっている。
■バセドウ病の治療法の種類
  • アイソトープ療法では、ヨードの同位体の入ったカプセルを服用し、血流を介してヨードの同位体を甲状腺に摂取させる。これが放射線を出し、結果的に甲状腺組織を照射するため、濾胞細胞が破壊され、甲状腺ホルモンの過剰分泌が抑制されることになる。
  • 手術療法では、多くの場合、甲状腺の亜全摘出を行う。甲状腺の一部を残すのは、甲状腺ホルモンの分泌量を適正化するため。また、すぐ脇にある副甲状腺や神経・血管を温存するという意味もある。

プランマー病の治療

  • 基本的には、手術療法かエタノール(PEIT)注入療法を行う。抗甲状腺薬はあまり効果がない。
  • 手術では、結節だけをていねいに除去し、正常部分はできるだけ残す。これにより、甲状腺ホルモンの分泌が正常な形で維持できる。
  • PEITは、エタノール(薬用アルコール)のたんぱく凝固作用を活用するもので、これにより結節を壊死させる。患部へのエタノール注入は、エコー下で専用の注射器を患部に直接差し込んで行う。切開しないため、入院する必要はない。

看護のポイント

「寛解」と「治癒」の違い
バセドウ病や橋本病では、十分に治療ができ薬物治療が不要となった状態を「寛解」と表現している。「寛解」とは、症状が収まり、健康な人と変わらない状態になっていることを意味する。ただし、「治癒」とは異なる。体質的に、症状が再び現れる恐れがあるからである。ちなみに症状が再び現れることを、「寛解」の反意語では「再燃」といい、「治癒」の反意語では「再発」と、やはり区別して使っている。患者さんに応対するときは、この違いに注意したい。

慢性甲状腺炎(橋本病)の治療

  • 薬物療法が中心になる。甲状腺ホルモンの分泌低下に対応して、甲状腺ホルモンの補充療法を行う。
  • 痛みや呼吸障害など、生活の質(QOL)の低下にかかわる症状が出ていない段階では、甲状腺ホルモンの血中濃度が低下していない限り、経過観察となることが多い。
  • 橋本病以外の甲状腺機能低下症でも、治療の方法に大きな変わりはない。すなわち、ホルモン補充療法が行われる。

甲状腺腫瘍の治療

良性腫瘍の場合
下垂体前葉ホルモンのTSHには、腫瘍の増殖促進作用もある。甲状腺ホルモンの血中濃度が上昇すると、TSHの分泌がフィードバック機構により抑制される。それを利用し、甲状腺腫瘍の増進を抑制する、あるいは縮小をはかるため、甲状腺ホルモン薬を投与する。
甲状腺嚢胞の場合は、その内部の液体を、注射器により吸引する。液体の貯留が再発するようなら、PEITか手術を行う。
悪性腫瘍の場合
手術療法・アイソトープ療法・放射線照射療法・薬物療法の4種類に大別できる。
手術は、甲状腺の機能をできるだけ残すという趣旨から、病態をみて、葉切除術にするか、亜全摘出あるいは全摘出にせざるを得ないかを判断する。
腫瘍の転移がある場合は、アイソトープ療法を実施する。ただし、甲状腺が残っていると転移巣にアイソトープが届きにくいため、事実上、甲状腺の全摘出をしたあとのケースで適用されることが多い。
手術やアイソトープ療法での治療がむずかしい場合は、ほかの悪性腫瘍と同様に、放射線照射や抗がん薬を使用する。
■甲状腺腫瘍の種類と基本的な治療法

副甲状腺疾患の治療

原発性副甲状腺機能亢進症の治療

  • 副甲状腺機能亢進症の症状が現れていれば、4 個の副甲状腺のうち、腺腫が形成されているものを手術により除去することになる。
  • 過形成の場合は、亜全摘出とするか、4 腺を全摘出をしたうえで 1/2 腺を前腕などの皮下に自家移植する。
  • がんの場合は、周辺部も含めて摘出し、必要があれば近くのリンパ節を郭清する。
  • 手術後、低カルシウム血症が生じることが珍しくないので、テタニー症状の発症を予測した準備が必要なこともある。
■原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応条件

続発性副甲状腺機能亢進症の治療

  • 続発性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎不全などが原因で起こる低カルシウム血症が原因となるので、薬物療法により血中カルシウム濃度を正常化させることが、基本的な予防法になる。また、副甲状腺の腫大が明白でない時期の治療法ともなる。
  • 薬物療法では、カルシウム製剤やビタミンDの投与を行う。
  • 患者が人工透析を受けている場合には、活性型ビタミンD3やリン吸着剤も使用する。
  • 続発性副甲状腺機能亢進症であって、副甲状腺の腫大が明白な場合は手術による除去やPEIT(エタノール注入療法)を行う。

副甲状腺機能低下症の治療

  • 副甲状腺機能低下症には、特発性、続発性、偽性などの種類があるが、いずれも低カルシウム血症の状態が根本にある点で共通しているので、治療法はほぼ同様である。
  • 治療は薬物療法で、活性型ビタミンD3の投与が基本となる。ただし、投与量は副甲状腺機能低下症の種類により異なる。
  • 腎結石の発症を防ぐため、カルシウム製剤の投与は行わないのが一般的である。
  • テタニー症状が現れている場合は、低カルシウム状態をすみやかに緩和するために、カルシウムの静脈注射を行う。

副腎疾患の治療

原発性アルドステロン症の治療

アルドステロン産生腺腫
アルドステロン産生腺腫を、手術により摘出する。
腫瘍の遠隔転移が生じているケース、心不全を合併しているケース、患者が高齢であるケースなどで手術が困難な場合は、薬物療法を行う。
薬物療法では、アルデステロンに拮抗的な作用をもつ薬の投与が必須であり、それで十分に血圧がコントロールできない場合は、降圧薬(カルシウム拮抗薬など)などを使用する。
特発性アルドステロン症
両側の副腎皮質球状層の過形成が原因となるので、摘出することはできない。
薬物療法として、腺腫の場合と同様の薬などが使われる。

副腎皮質機能低下症の治療

  • 急性・慢性副腎皮質不全とも、副腎皮質ホルモンの分泌不足を補うため、副腎皮質ステロイド薬を投与することが基本となる。
  • 急性の場合(副腎クリーゼ)は、すみやかな水溶性ステロイドホルモンの経静脈的投与および生理的食塩水+5%ブドウ糖の点滴を行う。また、血圧の低下に対応して昇圧薬や強心薬の投与、感染症の恐れに対応して抗生物質の投与などを、必要に応じて行う。

褐色細胞腫の治療

  • 腫瘍が副腎髄質内にある場合が圧倒的に多く、そのケースでは、腫瘍のある副腎の全摘出手術を行う。
  • 手術前に血圧の安定(高血圧の是正)をはかることが必要であり、降圧薬(α遮断薬など)を使用する。
  • 摘出手術ができない場合や、副腎以外に褐色細胞腫が発生している場合も、対症療法として、降圧薬(α遮断薬など)を用いる。
  • 降圧薬の第一選択はα遮断薬である。それで効果が不十分である場合は、β遮断薬を併用する。ただし、β遮断薬の単独使用は、逆に急激な高血圧を招く恐れがあるので、禁忌である。
  • 褐色細胞腫の多くは良性だが、悪性である場合には、抗がん薬を投与する。ただし、抵抗性が生じるケースが多くみられ、5年生存率もあまりよくない。
  • 腫瘍の両側発生により両副腎を摘出している場合は、副腎髄質・皮質ホルモンの補充療法が必要になる。

膵内分泌腫瘍性疾患の治療

ガストリノーマの治療

  • ガストリノーマは悪性腫瘍であることが多いので、基本的には腫瘍の摘出手術を行う。
  • 摘出が不可能、あるいは残存腫瘍が生じる場合は、胃の全摘出手術を行う。これは、ガストリノーマの主症状が胃酸の過剰分泌であり、胃・十二指腸潰瘍の原因となるからである。
  • 手術が困難な場合は対症療法として、胃酸分泌を抑制する作用のあるH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬などが使われる。

インスリノーマの治療

  • 腫瘍そのものは良性であることが多いが、インスリンの過剰分泌により空腹時に意識障害などの低血糖症状が頻発するので、腫瘍の摘出手術(単発であれば核出術)が必要である。
  • 腫瘍の核出手術がむずかしい場合や発生部位によっては、膵全摘出、あるいは部分摘出を行う。
  • 摘出がむずかしい場合は、抗がん薬や、ランゲルハンス島β細胞を破壊する作用のある抗腫瘍薬やインスリン分泌抑制薬などが使用される。

その他の内分泌疾患の治療

クラインフェルター症候群の治療

  • 先天性の疾患で、根治療法はない。
  • 精子の形成障害を正常化するためのホルモン薬による治療を行う。

ターナー症候群の治療

  • 先天性の疾患で、根治療法はない。
  • 排卵の誘発を促進する目的でホルモン薬による治療を行う。

多発性内分泌腫瘍症の治療

  • 2つ以上の内分泌腺に腫瘍が発生する疾患で、治療も単純ではないが、基本的には可能な限り病巣部の切除を行うことになる。
  • 個々の腫瘍による障害があれば、それぞれ対症療法を行う。

多発性自己免疫症候群の治療

  • 遺伝子異常が原因であり、根治療法はない。
  • 甲状腺・副甲状腺・副腎・膵臓などの機能低下症を合併するので、それぞれに対応した治療を行う。
糖尿病昏睡への対応
◆意識障害が低血糖性か高血糖性かを判断する

糖尿病患者が意識障害を起こしたときは、まず、それが低血糖によるものか、高血糖によるものかを判断する必要がある。治療法が、まったく逆になるからである。
即刻、血糖値を測定すればよいのだが、なんらかの理由によりそれができない場合には、ブドウ糖の静注、またはそれに準ずる対応を行う。低血糖性なら、それにより状態が改善され、低血糖であることが判別できる。
低血糖で注意しなければならないのは、長時間(1~2時間以上)重症の低血糖が続いた場合の脳神経の損傷であるから、これは治療する際の心得としても重要である。高血糖であった場合にブドウ糖の静注をしたからといって、その悪影響は多くの場合、その後の対応を深刻化させるほどのものではない。

◆高血糖性ではそのタイプを判別して対応

高血糖である場合には、アシドーシスの有無、血漿浸透圧や尿中・血清ケトン体の状態を調べ、糖尿病昏睡のタイプについて早急に鑑別し、それに応じてできるだけ早く治療を開始する。そのほか、血圧や脈拍数、呼吸状態、体温などのモニターをはじめ、バイタルサイン、脱水症状などを観察することが必要になる。