第2章 主な代謝・内分泌疾患 糖代謝の異常 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第2章主な代謝・内分泌疾患
糖代謝の異常

糖尿病

異常の概要

  • 糖尿病とは、インスリンの作用不足により、高血糖状態(空腹時血糖値≧126㎎/㎗、75gOGTT後2時間血糖値≧200㎎/㎗、随時血糖値≧200㎎/㎗)が慢性的に持続する疾患である。
  • インスリンの作用不足には、膵臓でのインスリンの産生・分泌量が決定的に少ないことによって生じるケースと、インスリンの分泌量は一定程度あるものの、インスリンの標的細胞がインスリンの作用を受けにくい状態になっている(インスリン抵抗性)ために生じるケースがある。
  • 高血糖状態が持続すると、全身の血管が傷害されて、さまざまな合併症が起こる。糖尿病自体より、それらの合併症によって生じる QOL の低下や生命の危険が、糖尿病の怖さとなる。
■高血糖が生じる理由

1型糖尿病

原因・病態
1型糖尿病は、自己免疫によりランゲルハンス島β細胞が破壊されることにより、インスリンの産生量が極度に不足するようになって起こる。自己免疫は、ウイルス感染などを誘因として起こることが多い。
1型糖尿病は、すべての年代で発病するが、とくに25 歳以下の発病例が多い。ただし、全患者に占める1型糖尿病患者の割合は、約5%と少ない比率である。
1型糖尿病の発病素因としての遺伝的要素は低いが、ある種の遺伝子のかかわりは指摘されている。
症状
1型糖尿病のなかには緩やかに進行するケース(緩徐進行型1型糖尿病)もあるが、多くは急速に進行して症状を現す。
初期の代表的な症状は、口渇、多飲、多尿、体重減少など。
対応が遅れると、ケトアシドーシスが急速に進行して、昏睡を起こす。
妊娠糖尿病

一般に、妊娠するとインスリン抵抗性が上昇しやすい。そのため、妊娠を契機として血糖値が上昇、糖尿病を発病することがある。これを、妊娠糖尿病という。糖尿病の女性が妊娠した場合は、糖尿病合併妊娠と呼ぶ。 いずれの場合も、血糖コントロールをきわめて厳格に行わないと、奇形児や巨大児の出産の恐れが高くなるので、十分な教育と、それに基づいた厳格な血糖コントロールが必要である。

■ 1 型糖尿病と 2 型糖尿病の比較

2型糖尿病

原因・病態
2 型糖尿病は、遺伝的素因をベースにして誘因が加わることにより発病する。
発病誘因の大半は、過食や運動不足などの生活習慣である。
全年齢層で発病するが、とくに中高年齢層の発病が多い。
症状
発病の初期には、症状がまったくない。
高血糖状態が長期間持続するうちに、1 型糖尿病と同様に合併症が徐々に現れてくる。
■ 2 型糖尿病の発病誘因

糖尿病の合併症

急性合併症と慢性合併症

  • 糖尿病の合併症は、急性合併症と慢性合併症に分類できる。
  • 急性合併症は、血糖値の急速な上昇あるいは極度の高血糖状態がもたらす症状、すなわち極度の糖代謝異常に起因する。
  • 急性合併症とは、具体的には糖尿病昏睡をさす。
  • 慢性合併症の多くは、持続的な高血糖の結果生じてくる血管障害に起因する。
  • 血管障害は、眼の細膜や腎臓、末梢神経などに分布する細小血管の障害と、脳や心臓、大動脈などの大血管の障害に分類することができる。
  • 慢性合併症のうち、とくに広範にみられる糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を「糖尿病3大合併症」と呼ぶ。

糖尿病昏睡

原因・病態
高血糖が原因で起こる意識障害を、糖尿病昏睡という。
糖尿病昏睡には、1型糖尿病患者に多い糖尿病ケトアシドーシスと、2 型の高齢の患者に多いケトン体産生量が比較的少ない高浸透圧高血糖症候群がある。
糖尿病ケトアシドーシスは、極度のインスリン作用不足からエネルギー源確保のため脂肪の分解が亢進し、その結果ケトン体が増加、体液を酸性に傾けることにより起こる。
高浸透圧高血糖症候群は、著しい高血糖(≧600㎎/㎗)と極度の脱水に起因する。重症例では、脳神経の細胞が脱水により機能低下を起こし、昏睡状態を招く。感染、脳血管障害、心筋梗塞、下痢、ストレスなどが誘因になることが多い。
■糖尿病の主な慢性合併症
症状
昏睡状態に陥る前の前駆症状として、口渇感、多飲、多尿、頻脈、全身倦怠感、意識の低下などが現れる。
今まで普通に過ごしていた人が、突然倒れて昏睡状態になることはなく、数日の経過がある。
手術、高カロリー輸液、ステロイドホルモン投与などが誘因になることもあり、注意が必要である。
■ 2 つのタイプの糖尿病昏睡

糖尿病網膜症

原因・病態
高血糖状態により、眼球の奥の網膜に分布する血管壁細胞の変性、基底膜の肥厚による血流障害、血管閉塞、血液成分の漏出などにより発症する。
血管の透過性が増して網膜に浮腫が生じたり、血管から漏出した脂肪分が沈着して白斑が生じる。
進行すると高度な血流障害(虚血)が生じ、それに対応して新生血管が硝子体のなかや網膜の前などに伸びてくるが、これは脆弱な組織構成の血管であり、極めて破れやすい。これが破れると、硝子体や眼底の出血、網膜剥離が生じ、強い視力障害、ときに失明の恐れが生じる。
糖尿病網膜症は、全糖尿病患者の40%前後に発症しており、これによる失明は、毎年約3000人、後天的失明の原因の トップになっている。
症状
かなり進行するまで、特有の自覚症状は現れない。ただ、浮腫や血管閉塞が、視力の中心である眼底の黄斑部に起きた場合は、初期の段階で視力低下が起きる。
進行した結果現れてくる症状は、視力の低下、飛蚊症(眼前を小さい虫が飛んでいるように見える)、視野の異常など。自覚症状が現れた時点では、網膜症がかなり進行している。また、大量の硝子体出血が起こると、視界全体が赤く染まって見えなくなる。
■眼球の構造
■糖尿病網膜症の進行モデル

糖尿病腎症

原因・病態
糖尿病腎症は、持続的な高血糖が、腎臓の糸球体血管を傷害することにより発症する。
持続的高血糖により、糸球体内部で濾過率を調整しているメサンギウム細胞(結合組織を形成)の増加・肥厚、毛細血管をおおう糸球体基底膜の劣化など、糸球体の構造の破壊、さらに血圧上昇などが加わり、腎機能が徐々に低下していく。
発症後、10年程度経過しないと、通常の尿検査で尿たんぱく陽性反応は出ない。
糖尿病腎症の早期発見には微量アルブミン尿の有無を定期的に検査することが重要である。アルブミン尿の基準値は、正常尿<30㎎ /g クレアチニン、微量アルブミン尿30~299㎎ /g クレアチニン、たんぱく尿≧300㎎ /g クレアチ ニンと定義されている。
症状
発症してしばらくは、自覚症状はまったくない。
進行すると、血圧上昇、むくみ、倦怠感などの症状が現れてくる。
■糸球体の模式図

糖尿病神経障害

原因・病態
糖尿病神経障害の発生原因は単純ではないが、高血糖時に生じるポリオール代謝の亢進が、最も重要とされている。
ポリオール代謝とは、細胞内にあるグルコースの一部が、ソルビトール、フルクトースへと変化するもので、この経路の代謝が亢進すると、細胞内にソルビトールの過剰蓄積が起き、これが神経を傷害する原因になる。
糖尿病神経障害は、3 大合併症のなかでもっとも早く、また高頻度に起こる障害である。
症状
神経障害の症状は多様である。主なものは、次のとおり。
■主な糖尿病神経障害の症状

糖尿病足病変

原因・病態
血糖コントロールが長期にわたり不良な患者にみられる足の足趾間や爪の白癬症、変形や胼胝(たこ)、難治性の潰瘍や壊疽を、糖尿病足病変と総称する。
血管(血行)障害と神経障害が、主要な原因となる。
神経障害では、末梢神経障害(触覚 ・ 痛覚 ・ 温覚の鈍麻など)や自律神経障害(発汗の減少による皮膚の防御能力の低下、血流分布異常など)が、血管障害では下肢の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)の進行による栄養・酸素の運搬能力の低下などが、病変を進行させる主要な因子となる。
対応が遅れると、病変部に潰瘍が生じ、壊疽に至る。
症状
痛覚・温覚の鈍麻により、外傷や熱傷などに気づきにくく、治療が遅れたり、皮膚肥厚や胼胝の亀裂、足変形による圧迫、靴擦れが起こる。また、白癬症などが誘因となり潰瘍が生じる。潰瘍が深刻化しても、あまり重大にはとらえない患者が少なくない。
■主な糖尿病足病変