第1章 解剖と生理 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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栄養と代謝

3大栄養素と微量栄養素

  • 3大栄養素とは、生体の構成物質となったり、エネルギー源になったりする栄養素、すなわち、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質の総称。また微量栄養素とは、ビタミン、ミネラル(微量元素)などのことで、からだの発育や組織の機能維持などに、微量で作用している。
■ 3 大栄養素の主な役割

栄養素の代謝

  • 摂取された3大栄養素は、さまざまなからだの構成成分に生合成されたり、エネルギー源として活用され、また分解されたり、廃棄されたりする。この栄養素の体内での変化の過程を「代謝」と呼ぶ。代謝は「異化」と「同化」に分けられる。異化と同化は、通常は互いにバランスを保ちながら進行している。
異化
摂取された栄養素や体内にある成分を、からだが活用しやすいように、より単純化した形に分解する過程のことを異化という。たとえば、体内に蓄積された炭水化物(グリコーゲン)は、ブドウ糖にまで分解されて、エネルギー源として活用される。
同化
からだの構成物質を生合成する過程を同化という。たとえば、食物中のたんぱく質は消化管でアミノ酸にまで分解され吸収されるが、吸収されたアミノ酸からからだを構成するたんぱく質が生合成される。
代謝疾患には2つのタイプがある

代謝の過程に異常があって生じる疾患を、代謝疾患と総称している。代謝疾患には、遺伝子の欠陥による先天性のものと、主に生活習慣に起因する後天性のものがある。後天性代謝疾患の代表的なものが肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症であるが、これらの発症にも遺伝的要因がかかわっていることが明らかになりつつある。

ホルモンの機能と内分泌のしくみ

ホルモンの定義

  • ホルモンとは、ごく微量で特定の細胞(標的細胞)に作用して、その細胞の活動を調整している物質。従来の定義では、内分泌腺から分泌され、血液を介して、そのホルモンの受容体をもつ細胞(標的細胞)に届けられる物質をさす。
  • ただし、近年、血液を介さずに作用する物質が次々に発見されている。それらをホルモン様物質、生理活性物質、サイトカインなどと呼ぶこともあるが、現在では、従来の定義によるものと合わせてホルモンと呼ぼうとする提案もある。

内分泌と外分泌

  • 内分泌とは、内分泌腺のホルモン分泌細胞で産生されたホルモンが、血流に乗って標的細胞をもつ器官(標的器官)に届けられ、作用を発揮するしくみをいう。内分泌腺には導管はなく、分泌されたホルモンは直接血流に入る。
  • これに対して外分泌とは、脂皮腺や汗腺、乳腺などの外分泌腺で産生された脂質や汗、母乳などを、それぞれの導管を通して外界に分泌するしくみをいう。消化液も外分泌物質であり、この場合、消化管が外界としての性格をもつ。
■内分泌腺の位置
ホルモンのフィードバック機構

甲状腺、副腎あるいは性腺ホルモンの分泌は、上位内分泌腺である視床下部・下垂体が分泌するホルモンによりコントロールされている。そのホルモンが分泌されると、それに対応する下位標的分泌腺のホルモンが分泌され、その血中濃度が一定量に達すると、信号が送られて上位内分泌腺ホルモンの分泌が抑制され、下位内分泌腺ホルモンの血中濃度が一定に維持される。これをフィードバック機構と呼ぶ。

視床下部・下垂体

位置と構造

  • 視床下部は、脳の奥にある間脳の一部で、第3脳室の最下端に位置している。
  • 下垂体は脳基底部の蝶形骨の、トルコ鞍と呼ばれるところに収まっているが、下垂体茎を介して視床下部の下側につながっている。下垂体は、解剖学的には前葉・中葉・後葉の3葉からなっているが、中葉は退化して痕跡のみとなっているため、事実上、前葉と後葉の2葉と考えてよい。
■視床下部・下垂体の位置
■視床下部・下垂体が分泌するホルモン

甲状腺

位置と構造

  • 甲状腺は、前頸部の中央部にあり、羽を広げた蝶のような形で気管に張りついている。羽のように見える部分を右葉・左葉といい、その間をつなげている部分を峡部と呼ぶ。右葉・左葉の大きさはそれぞれ縦4㎝、横2㎝程度で、甲状腺の全重量は約20g。
  • 甲状腺の内部には、大きさが0.05~1㎜の濾胞という袋状の構造物が無数に詰まっている。この濾胞には、甲状腺ホルモンの前駆体がたくわえられている。
■甲状腺の位置

分泌されるホルモン

  • 濾胞の外壁を構成する細胞を、濾胞上皮細胞という。この細胞内で合成されたサイログロブリン(Tg)と、血液から取り込まれたヨウ素イオン(I-)が材料となり、濾胞内で甲状腺ホルモンの前駆体が合成され、貯蔵される。
  • この前駆体は、加水分解を受けて甲状腺ホルモンとなり、血液中に分泌される。甲状腺ホルモンの分泌を促しているのが、下垂体前葉から分泌されている甲状腺刺激ホルモンである。
  • 甲状腺ホルモンは、全身の代謝促進にかかわっている。
  • 分泌される甲状腺ホルモンの大半はサイロキシン(T4)であるが、活性は弱く、末梢でトリヨードサイロニン(T3)に変化することにより、強力な活性をもつことになる。また、血液中の甲状腺ホルモンの大半は血漿たんぱく(サイロキシン結合グロブリン=TBG)と結合しており、ごく一部が遊離して存在している(FreeT4=FT4/FreeT3=FT3)。たんぱく結合型は活性をもたない。したがって、実際に強力な作用を有するのは、きわめて微量に存在するFT3である。
■甲状腺ホルモンの分泌のしくみ

副甲状腺

位置と構造

  • 副甲状腺は、甲状腺の右・左葉の後面(背中側)にあり、それぞれ上下2個ずつの計4個が、甲状腺皮膜に張りつくような形で存在している。ただ、ごくまれに、それより数が多かったり、甲状腺後面以外の部分に形成されていたりすることもある。
  • 内部組織は、主細胞と好酸性細胞、そしてそれらをまとめる結合組織からなり、全体は楕円形をなす。副甲状腺の内分泌腺としての機能を果たしているのは主細胞で、好酸性細胞は主細胞の間に散在しているが、その働きは不明である。
■副甲状腺の位置

分泌されるホルモン

  • 副甲状腺からは、副甲状腺ホルモン(PTH:Parathyroid hormone)が分泌されている。PTHは、カルシトニンや活性型ビタミンD3と連携して、カルシウム代謝に重要な役割を果たしている。
■カルシウムの代謝にかかわる物質
カルシトニンとは

カルシトニンは、甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されるホルモンで、PTHと拮抗して骨吸収(カルシウムの骨からの遊離)を抑制する作用をもつ。また活性型ビタミンD3は、骨吸収・骨形成の両面に作用している。

副腎

位置と構造

  • 副腎は、その名が示すように、左右の腎臓の上部にそうような位置にある。左は胃の後方、右は肝臓の後方となる。左右の副腎の形状は少し異なり、左が半月状、右が三角状の外観を見せる。また横断面は、左がY字または三角形、右がV字形になる。重さはともに5~8g。
  • 副腎の内部は皮質と髄質で構成され、外側は皮膜におおわれている。皮質と髄質の構成比は、だいたい4:1である。
■副腎の位置と構造

分泌されるホルモン

  • 副腎皮質から合成・分泌されるステロイドホルモンの原材料は、コレステロールである。また、副腎髄質からは、チロシンを原材料にして、カテコールアミンが合成・分泌される。
■副腎から分泌されるホルモン

膵臓

位置と構造

  • 膵臓は、上腹部のやや左寄り、胃の後方に横たわるように位置する。長さ15~20㎝、幅の平均約4㎝、重さ70~90g。
  • 膵臓は、内分泌腺であると同時に、消化にかかわる消化酵素を分泌する外分泌腺としても機能している。膵臓内部にはいくつかの性格をもつ細胞が混在しているが、内分泌腺の機能を果たしているのは、ランゲルハンス島と呼ばれる100万個以上の細胞群から成る組織である。
  • 膵管は、総胆管と合流して十二指腸に開口しているが、これは消化酵素を含む消化液の通り道である。
■膵臓の位置と構造

分泌されるホルモン

  • ランゲルハンス島(膵島)に混在するα(A)細胞、β(B)細胞、δ(D) 細胞は、それぞれ異なるホルモンを産生・分泌する。すなわち、α細胞からはグルカゴン、β細胞からはインスリン、δ細胞からはソマトスタチンが分泌される。
■ランゲルハンス島から分泌されるホルモン

血糖値を低下させるホルモンは、インスリンだけである
血糖値を上昇させるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)には、上記のグルカゴンのほか、下垂体前葉から分泌される成長ホルモン、副腎皮質から分泌されるコルチゾール、副腎髄質や交感神経から分泌されるカテコールアミンなどがある

膵臓から分泌されるその他のホルモン

膵臓は、ランゲルハンス島由来のホルモンであるインスリンやグルカゴンのほか、胃酸の分泌を促進するガストリンや、膵臓の消化液の分泌を抑えるポリペプチドの一種なども分泌している。分泌細胞は、それぞれG細胞、PP 細胞と呼ばれるが、不明な点も多い。

性腺

位置と構造

  • 男性の性腺は精巣、女性の性腺は卵巣である。精巣は骨盤腔外につり下がる陰嚢内に2個、卵巣は骨盤腔内の子宮をはさんで左右に2個ある。
  • 精巣の内部は、精子をつくる精細管と、ホルモンをつくる間質細胞から成り立っている。また卵巣の内部には、出生時の段階で、すでに卵子の生成部位である原始卵胞が数十万個ある。
  • 思春期になるとその一部が成熟を始め、順次、二次卵胞、胞状卵胞となる。胞状卵胞が破裂して卵子が卵巣の外へ排出されるのが、排卵である。
■精巣と卵巣の構造

分泌されるホルモン

  • 精巣の間質細胞からは、LHのコントロールにより男性ホルモンのテストステロンが産生・分泌されている。
  • 卵巣では、成熟卵胞が排卵したのち、黄体に変性する。この卵胞と黄体が、女性ホルモンの産生・分泌組織となる。すなわち、卵胞ホルモンのエストロゲンと、黄体ホルモンのプロゲステロンである。この産生・分泌は、LHと FSH、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)によりコントロールされている。
■性ホルモンの主な作用
■卵胞の変性過程
ホルモンが作用するしくみ
◆細胞膜の受容体と結合するタイプ

カテコールアミン(アドレナリン、サイロキシンなど)やペプチドホルモン(視 床 下部・下垂体ホルモン、副甲状腺ホルモンなど多数)などは、標的細胞表面の細胞膜に存在する受容体と結合する。その情報は、カルシウムイオンやサイクリックAMPなどの物質により細胞内に伝達される。このような物質をセカンドメッセンジャーと呼ぶ。
セカンドメッセンジャーは、酵素(たんぱく質)をリン酸化し活性化したりすることにより刺激されたという情報を細胞核に伝え、作用を発揮する。この反応は、秒単位である。ただし単回刺激の場合、効果は短時間で消失する。

ホルモン
◆細胞質内・核内の受容体と結合するタイプ

甲状腺ホルモンやステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、エストロゲンなど)は、疎水性があるため細胞膜を通過して、細胞内に入ることができる。そして、細胞質内や核内の受容体と直接結合し、同様の反応をもたらす。この反応には数時間かかるが、作用時間は長い。