第3章 症状別の対応と看護のしかた 脱水 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章症状別の対応と看護のしかた
脱水

重症の場合は適切な救急処置が不可欠

  • 脱水とは、体液の組成成分である水分が喪失した状態をいう。脱水は水分の喪失(欠乏)と電解質(主にNa)の喪失(欠乏)との比率により、「等張性脱水」「高張性脱水」「低張性脱水」の3つに大別される。
  • 脱水症状は、喪失(欠乏)する水分量や電解質の種類や量により、また、喪失が細胞内液か細胞外液かなどの病態生理により異なり、発現する症状にも違いがある。

体液の割合

  • 脱水と密接に関係する体液は、水分を主としてその中にナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)などの電解質成分が溶解し、成人体重の約60%を占める。
  • 体液は細胞内にあって体重の約40%を占める「細胞内液」と、細胞外に存在して体重の約20%を占める「細胞外液」に分類される。このうち、細胞外液は体重の約15%を占める「間質液(組織間液)」と、体重の約5%を占める「血漿」に分かれる。
◉脱水の分類と特徴
◉脱水状態(喪失量の目安)と主な症状

脱水症状の診断と治療

  • 脱水症状は病態によって、現れる症状や検査所見に違いがあり、治療法は少しずつ異なる。そのため、患者の観察とアセスメントでは、特に初期症状を見逃さないよう注意し、症状からどんな種類の脱水かを推測することが重要である。
  • 一般的に、脱水症状が軽症の場合は、水分だけの補給で症状が改善することも少なくない。しかし、「中等症」から「重症」と判断されるときは、体温、脈拍、呼吸、血圧、中心静脈圧などバイタルサインの観察と、血清電解質や尿の検査などを十分に行い、それらの結果を指標に、有効で適切な輸液を行う。
  • 特に症状が重い場合は死亡するので、迅速な応急処置と治療を急がなければならない。

脱水症の診断と治療の手順

治療までの流れ
  • 患者の病歴、身体所見(各種症状)の観察。
  • 各種検査所見のチェック。
  • 所見を総合した体液の欠乏量の推定。
  • 輸液量の決定(欠乏量×1/2+維持輸液量)。
  • 輸液剤の選択。
  • 輸液速度の設定。
  • 輸液開始。
  • 予後の経時的観察と検査(合併症の予防)。
◉脱水の種類と症状に応じた治療の基本

輸液療法を実施する際の注意点

対応ポイント
経時的に患者の症状や容体、バイタルサインをチェックする。
必要に応じたモニターの観察と各種検査データに留意する。
輸液速度と輸液量は、患者の循環動態を十分に把握して選択する。特に、心原性ショックの場合、急速・大量輸液は心負荷を助長させるので注意する。
中枢神経系の障害が疑われる場合、高血糖は予後を悪化させることがあるので、急変直後のブドウ糖含輸液剤の使用は避ける。
輸液剤を切り換えるときは、薬剤の種類、用法などに注意して慎重に行う。
治療中または予後に併発する危険な合併症(高Na血症や低Na血症に伴う脳浮腫・循環虚脱・心不全・肺水腫など、高K血症に伴う心筋障害・心停止など、低K血症時のジギタリス製剤の使用で現れる心室頻拍や心室細動など)に注意する。

高齢者への対応

  • 高齢者は、加齢による身体の水分総量の減少と体液を調整する腎機能の低下のため、脱水になりやすい。
  • ただし、高齢者の脱水は症状が現れなかったり、症状を訴えても原因が単に生理的な老化現象か脱水かを区別しにくい。また、加齢による個人差もあり、診断が難しいケースが多いので注意して対応する。
高齢者の脱水の要因
身体に必要な水分量は成人も高齢者も変わらないが、70歳を超えると、身体に貯留される水分量は成人にくらべて5〜10%減少する。
加齢による水分量は、細胞内液と筋肉・骨などの組織中の水分の減少が認められる。細胞外液はあまり変化せず、脂肪分は増加する傾向がある。
老化により、細胞内液の減少に即応する機能の低下が認められる。
また老化により、のどの渇きを感じる渇中枢機能が低下する。
加齢による腎組織自体の老化が、尿の濃縮・希釈機能や再生能力を低下させるので、これも脱水を招きやすい要因となる。
循環・代謝系組織の老化による腎血流量の低下、糸球体濾過率の低下も脱水の要因となる。

看護のポイント

高齢者の脱水予防のためには、日常的に意識して水分を摂取させる(摂取量の目安は1日1400〜2000㎖)。水分摂取は一度に大量とするより、少量を頻回にする。
脱水の原因になりやすい発熱発汗嘔吐下痢などに注意し、特に尿閉、無尿、乏尿などの症状があるときは、早期に適切な診断と処置を行う。
脱水症状である口渇皮膚粘膜乾燥皮膚弾力性低下尿量減少尿濃縮発熱などの「自己チェック」を心がけさせる。
気温湿度など生活環境に十分配慮する。