第3章 症状別の対応と看護のしかた 脈拍異常 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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緊急時は大血管を触知して調べる

  • 脈拍は、心臓の収縮活動によって生ずるいわば「血液の波動」である。したがって、脈拍の回数や強さなどを調べることによって心機能・血管機能・血液量などを間接的に推測することができる。
  • 応急処置が必要な緊急の際は、傷病者の状況に応じて総頸動脈などの大血管を触知し、拍動の有無・強弱、調律(リズム)、脈拍数から「頻脈」や「徐脈」について調べる。
◉脈拍数の目安(安静時)

脈拍触知のポイント

調べ方・触知のポイント
通常、脈拍は橈骨動脈を触知して調べる。緊急時には総頸動脈、大腿動脈も用いる。その他に浅側頭動脈、腋窩動脈、上腕動脈、足背動脈などで動脈血流の有無をチェックすることも行われる。
橈骨動脈
大腿動脈
総頸動脈

脈拍は、特に脈の強さ、拍数、リズム、左右差などを調べる。
脈拍、特にリズムに異常がみられるときは必ず心電図検査及び脈拍以外のバイタルサインを把握する。
異常の原因が生理的な範囲内か、疾患や薬物による病的なものか、いつから生じたものか、突発的なものか、などをすみやかに判断する。
頸動脈などの大血管の触知で脈拍が感知できないときは、重篤な血圧低下があると推測されるので適切な処置を行う。
成人の場合、運動や精神的興奮などの負荷がないのに心拍数が100(回/分)以上あるときは「頻脈」、59(回/分)以下のときは「徐脈」と判断し、いずれも脈拍異常と考える。
緊急を要する場合は、患者の心身の安静を維持して症状を医師に伝え、抗不整脈薬、除細動器、ペースメーカーなどを準備する。

◉主な脈拍異常の原因と種類

看護のポイント

心拍数や不整脈の鑑別は、心電図 の所見によることが多い。外来での突発的な状況や災害時などは、気道を確保したうえで総頸動脈などの大血管を触知し、脈拍が触知されなければ、ただちに心臓マッサージを始める。
心筋虚血、不整脈などによる心電図の変化を監視する「多機能心電計」

心電図の装着と波形の読み方

  • 救命救急では心機能や病態を調べるうえで、心電図をモニタリングすることが不可欠である。看護の際は、心電図をすばやく装着して波形を判読し、状況に応じた適切な処置と治療に役立てることが重要になる。

心電図の装着と電極貼付の注意

  • 心電図は、患者のからだに電極板を貼付して心筋の電気的活動を体表面から誘導し、波形としてとらえる装置をいう。
  • 装置は、誘導子というコードのついた陽極板(赤色)と陰極板(緑または黄色)、アース(黒または緑色)の3本の電極板で構成される。ただし、救命救急では利便性などから2電極性のものが用いられる。
心電図電極の装着
電極板を貼付する際は位置を必ず確認する。
事前に電極貼付部位の皮膚を清拭したり剃毛したりして、極板をしっかり密着させる。
陽極は左胸鎖骨下、陰極は右胸鎖骨下、アースは左 第5助骨に貼付する。
電極の位置

電極を長期に貼付する場合は、皮膚を保護するため、毎日多少位置を移動する。

心電図波形の見方

  • 心電図は、心臓が拍動する1回ごとの心筋の電気的活動をP・Q・R・S・Tの波で表し、連続的にモニターして記録するもので、波の意味は以下のとおり。
  • P波:心房の電気的興奮(収縮)。
  • QRS波:心室の電気的興奮(収縮)。
  • T波:心室の電気的興奮が収まるときに生ずる波。
波形の見方
正常な心電図は、P・Q・R・S・Tの波が同じ形で規則正しい間隔で繰り返される。
まずは基線に注目し、平坦かどうか、またP波が正しく出現しているかをみる。
さらに、RR間隔から頻脈・徐脈を判読する。
S波・T波は基線をみて、下降や上昇、増高などがないか読み取る。
P

心電図で判読できるさまざまな不整脈波形

  • 緊急時の心電図判読で特に重要なのは、急性心筋梗塞、狭心症発作、電解質異常などにみられる致死的不整脈(①心静止、②無脈性電気活動〈PEA:pulseless electrical activity〉、③心室細動、④心室頻拍など)である。
  • また、頻拍型不整脈(洞性頻拍、発作性上室頻拍など)や、徐脈型不整脈(洞房ブロック、房室ブロック、洞不全症候群など)なども、重症不整脈として救急治療の対象となるので、これらの不整脈を判読できるようにしておく(救急治療の対象となる不整脈 についてはこちらを参照)。
①心静止(心室静止)
電気活動が観察されない状態で、波は消失。
デキスト無し
②無脈性電気活動
収縮が認められるが血圧が生じていない状態。多くの場合、幅の広いQRS波があり著しい徐脈となる。
幅の広いQRS波
③心室細動
不規則で細かい揺れが観察される。致死的な状況下にあり、ただちに心肺蘇生が必要となる。
デキスト無し
④心室頻拍
心拍数が100~250回/分になる頻拍。放置すれば、心室細動になることも多いので、すぐに対処が必要となる。
著しい頻脈

看護のポイント

致死的不整脈は、急激な血圧低下意識レベルの低下がみられるので、わずかな変化を見逃さないように注意する。

危険な脈拍異常の救急処置

  • 重症不整脈に対する心肺蘇生法に「前胸部叩打法」がある。これは、患者を水平仰臥位にし、約30㎝の高さから前胸部を叩打する緊急の除細動法(約10Jに相当)で、手元に除細動器がない場合や除細動器がチャージされるまでの間に有効である。適応は、「失神を伴う心室頻拍」「発生後1分以内の不整脈」で、総頸動脈の拍動が触れない場合である。
  • 致死的不整脈など無秩序な心筋細胞の興奮を除く救急処置には、電気的除細動・心臓ペーシングがある。

電気的除細動

  • 電気的除細動は「直流通電療法(DCショック)」ともいい、心臓へ瞬間的に直通電流を流して心機能を正常化させる療法。
同期型除細動
心室頻拍:100Jより開始、以後増量。
上室頻拍:25〜50Jより開始、以後増量。
心房細動・粗動:25〜50Jより開始、以後増量。
除細動器
非同期型除細動
心室細動:200Jで開始、以後300J、360Jと上げる。これを3回繰り返す。

心臓ペーシングの種類

  • 心臓ペーシングは、心筋に電気的刺激を加えて有効な心収縮を回復させる処置をいう。
  • 適応は、心静止、完全房室ブロック、洞機能不全症候群など、そのままでは心拍出量が得られない重篤な徐脈型不整脈に対する最終的な治療手段として実施される。
手法
経皮体表法:専用キットを用い、表皮より電気的刺激を与えて心収縮の改善を図る。緊急時の救急外来などではキットを準備している医療機関が多い。
経静脈法:一般的には、心収縮の有効な治療法として選択されることが多い。手法としては、鎖骨下静脈や内頸静脈から、右心房、右心室にカテーテルを挿入し、直接心筋に電気的刺激を与えて改善を図る。
経食道法:食道よりカテーテルを挿入して、心筋に電気的刺激を与える手法。患者の状況や病態に応じて選択される。

看護のポイント

心臓ペーシングは、ペーシング機能付き除細動器(ペースメーカー)を用いる。一般的に、ペーシングを有効に行うためには50〜100mAの電流が必要で、一時的なペーシングではVVIモードを用いる。VVIとは刺激モードで、V(自己QRS波が出現したときにペーシングが作動)、V(自己QRS波の出現を感知する)、I(自己QRS波の出現があれば、ペーシングは作動しない)ということを意味する。