第3章 主な脳神経疾患 神経系感染症 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章主な脳神経疾患
神経系感染症

臨床現場でよくみられる脳神経疾患を取り上げ、ナースが知っておきたいポイントや検査・治療法などについて、画像写真やイラストを交えて解説しています。

脳炎

現場で役立つポイント

  • 急性脳炎(単純ヘルペス脳炎、日本脳炎)、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などがある。
  • 脳炎は緊急性が高いため、迅速な診断が重要。
水平断

どんな疾患・病態?

  • 主にウイルスが原因で、脳実質に炎症が起きる中枢神経感染症のこと。
  • 単純ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルスI型の感染によって起こる。側頭葉内側部が侵されやすい。
  • 日本脳炎は、日本脳炎ウイルスが原因。このウイルスに感染したコガタアカイエカに刺されることで感染する。
  • 亜急性硬化性全脳炎は、麻疹ウイルスの長期持続感染で発症。

症状

急性脳炎
頭痛、発熱、意識障害、異常行動、けいれんなど。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
初期に知能低下や性格の変化がみられ、やがてミオクローヌス、除脳硬直、昏睡を起こす。

検査と診断

急性脳炎
CT、MRIで、脳実質の異常がみられる。
咽頭や髄液、便からウイルスが検出される。
単純ヘルペス脳炎では、ヘルペスウイルスI型抗体価を測定する。髄液からPCR法によりウイルスDNA検出を行う。
日本脳炎では、髄液中に日本脳炎ウイルス特異的IgM抗体が検出される。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
髄液中のIgG値や、麻疹ウイルス抗体価の上昇などがある。
脳波に周期性同期性放電(PSD)を認める。

治療法

急性脳炎
単純ヘルペス脳炎:抗ウイルス薬(アシクロビル)、抗浮腫薬、抗けいれん薬などを投与する。
日本脳炎:頭蓋内圧亢進、けいれん、呼吸障害などに対する対症療法が中心となる。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
イノシンプラノベクスの経口投与、インターフェロンの脳室内投与など。

髄膜炎

現場で役立つポイント

  • 発症様式により、症状が数日で進行する急性髄膜炎(ウイルス性、細菌性)と、1~2週間で進行する亜急性髄膜炎(結核性、真菌性)に大別される。
  • 髄膜刺激症状には項部硬直、ケルニッヒ徴候などがある。
  • 髄液検査が最重要。患者や家族の不安を和らげるよう留意する。

どんな疾患・病態?

  • ウイルス、細菌、結核菌、真菌などが原因で、くも膜下腔に炎症が起きる中枢神経感染症。
  • ウイルス性髄膜炎:無菌性髄膜炎ともいう。原因菌はエンテロウイルス、ムンプスウイルスなど。
  • 細菌性髄膜炎:主な病原体は、乳幼児・小児ではB群レンサ球菌、大腸菌、インフルエンザ菌。成人では肺炎球菌。
  • 真菌性髄膜炎:原因菌はクリプトコッカスが多い。
  • 悪性腫瘍(癌性髄膜腫症)、自己免疫疾患に伴うこともある。

症状

  • 発熱、頭痛、髄膜刺激症状、嘔吐、意識障害などがある。
  • 乳幼児や高齢者では、易刺激性(刺激に過敏)や錯乱もある。

検査と診断

ウイルス性髄膜炎
髄液検査では糖は正常だが、細胞数が上昇(100~1000/mm3)する。
細菌性髄膜炎
髄液検査では糖が低下し、細胞数は著しく増加(>1000/mm3)して、多形核白血球が優位となる。
結核性髄膜炎
髄液検査では糖が低下、細胞数は増加する。
ツベルクリン反応(陽性)、髄液から結核菌DNAの検出など。
真菌性髄膜炎
髄液検査では糖が低下、細胞数は増加する。
髄液の墨汁染色、真菌抗原検出、β-D-グルカン上昇により、結核性髄膜炎と鑑別する。

治療法

ウイルス性髄膜炎
安静と対症療法が中心。ヘルペス性の場合は、アシクロビルを投与する。
細菌性髄膜炎
抗生物質(アンピシリン、セフォタキシム、メロペネムなど)を用いる。治療初期はステロイド薬を併用する。
結核性髄膜炎
イソニアジドとリファンピシン、エタンブトール、ピラジナミドを併用。治療初期はステロイド薬を併用する。
真菌性髄膜炎
抗真菌薬(アムホテリシンB、フルコナゾールの併用)を投与する。

脳膿瘍

現場で役立つポイント

  • 中耳炎、副鼻腔炎などから脳膿瘍になることがある。
  • CT、MRIが最も診断に適する。
脳膿瘍の症状
  • 症状は発生部位や大きさ、程度により異なる。ただし、脳出血と同様の症状があるので注意する。

どんな疾患・病態?

  • 脳の近接部位の感染などから脳実質に細菌感染が広がり、膿が貯留する状態。
  • 原因菌は、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌など。
  • 敗血症、心内膜炎などからの血行性の侵入や、外傷により髄膜腔と外界の交通ができることによって起こる場合もある。

症状

  • 発熱、頭痛、嘔吐、意識障害などが起こる。
  • 膿瘍が増大すると、頭蓋内圧亢進症状、局所症状を呈する。

検査と診断

  • 脳ヘルニアのリスクのため、腰椎穿刺は原則禁忌とする。
画像診断
CT、MRIが最も診断に適する。
脳腫瘍、脳梗塞、脳出血との鑑別が重要。

治療法

薬物療法
ペニシリン、第3世代セフェム系抗生物質などを用いる。
頭蓋内圧亢進に対しては、高浸透圧利尿薬(濃グリセリン:グリセオール、D-マンニトール)を投与する。
外科的治療
3cm以上の膿瘍や、抗菌薬では膿瘍が縮小しない場合に行う。
定位脳手術による膿の吸引を行う。

プリオン病、HIV感染症、HTLV-1関連脊髄症

プリオン病

どんな疾患・病態?
正常な体内にある蛋白(プリオン蛋白)が異常な形となり、感染性を有したものをいう。
プリオン病は、以下の3つに大別される。
  • 孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などの特発性プリオン病。
  • 変異型CJDなどの感染性プリオン病。
  • 遺伝性プリオン病。
症状
主として初老期に発症する。変異型CJDは若年者に多い。
急速に進行する認知症、ミオクローヌス、小脳症状などを示す。
数カ月以内に無動無言状態となる。
検査と診断
症状と脳波の特徴的な所見(周期性同期性放電)を参考に診断する。
髄液検査の14-3-3蛋白上昇、プリオン遺伝子変異、MRI。
治療法
対症療法以外の有効な治療法はなく、予後は不良となる。

HIV感染症

どんな疾患・病態?
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染してからの全経過のことをHIV感染症という。
一部では、日和見感染症などを呈するAIDSを発症する。
症状
脳症、認知症、末梢神経障害などの神経症状、日和見感染症、悪性腫瘍(リンパ腫が多い)などが特徴。
検査と診断
血液検査でHIV特異抗体が検出される。
治療法
抗HIV薬による治療を行う。

HTLV-1関連脊髄症

どんな疾患・病態?
成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス1型)の感染によって、脊髄に障害が引き起こされる疾患。
症状
両下肢の痙縮を伴う麻痺で、歩行障害が起こる。
進行は緩やかに進む。
排尿障害、異常感覚、感覚鈍麻などもみられる。
検査と診断
髄液検査の抗HTLV-1抗体。
治療法
重症または進行中の場合、ステロイド薬、インターフェロン、血漿交換療法を用いる。
ビタミンCやAIDS治療薬(AZT)を使う場合もある。