第3章 主な脳神経疾患 脳腫瘍 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章主な脳神経疾患
脳腫瘍

臨床現場でよくみられる脳神経疾患を取り上げ、ナースが知っておきたいポイントや検査・治療法などについて、画像写真やイラストを交えて解説しています。

脳実質腫瘍

現場で役立つポイント

  • 脳実質に発生する腫瘍を脳実質腫瘍という。
  • 脳実質腫瘍にはグリオーマ(神経膠腫)、松果体腫瘍、頭蓋内原発悪性リンパ腫、血管芽腫、胚細胞腫、小児に好発する髄芽腫がある。
  • 各脳腫瘍は、発生部位による局所症状や、頭蓋内圧亢進に伴う症状が多様なので、担当医から注意すべき神経症状やバイタルサインの指示を仰ぐ。
  • 難治性のものが多いため、告知に際してはその内容を十分理解し、患者および家族を精神的にサポートする。
グリオーマ(頭部造影CT)

どんな疾患・病態?

  • 腫瘍と正常部分との境界が不鮮明な浸潤性発育が特徴である。
  • 全摘出が困難で、組織学的には良性であっても、生物学的には悪性と位置づけられる。
  • 代表的なものがグリオーマ(神経膠腫)であり、すべての脳腫瘍のうち1/3を占める。
  • グリア細胞である星膠細胞(アストログリア)、乏突起膠細胞(オリゴデンドログリア)、上衣細胞には、おのおの星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫が発生する。
  • 星細胞腫のなかでも未分化で、進展が早く、悪性度の高いものは膠芽腫と呼ばれる。
  • 頭蓋内原発悪性リンパ腫は、頭蓋内の全領域に発生し、約1/3は多発性。AIDSなどによる、免疫不全に伴っても発症する。

症状

  • 発症部位によって脳神経麻痺や片麻痺、言語障害、視力・視野障害などのさまざまな局所神経症状が生じる。
  • 大脳半球に生じた場合はけいれん発作、脳室内に生じた場合は水頭症も生じる。
グリオーマ
頭蓋内圧亢進による頭痛、嘔吐がある。
グリオーマが増大すると脳ヘルニアを起こし、意識障害や呼吸および循環器障害が生じる。
松果体腫瘍
中脳水道の閉塞による水頭症や、中脳圧迫によるパリノー徴候などが顕著に現れる。
頭蓋内原発悪性リンパ腫
発生場所によってさまざまな神経症状を現す。
知能障害、行動異常、進行性片麻痺、けいれん、頭痛などが主として生じる。
頭蓋内原発悪性リンパ腫
頭蓋内圧亢進によるふらつき、吐き気など。
エリスロポエチンの増加で、赤血球増加症が生じることがある。

検査と診断

  • CTやMRI、脳血管造影などを用いた画像診断を行う。
  • 手術で組織を採取する。

治療法

外科的治療
グリオーマは、基本的に手術による全摘出または部分摘出を行う。ただし全摘出は難しく、再発率が高い。
頭蓋内原発悪性リンパ腫
胚細胞腫や悪性リンパ腫、髄芽腫、乏突起膠腫には、放射線療法と化学療法が比較的有効なことが多い。
頭蓋内原発悪性リンパ腫に対しては、核酸の合成を阻害するメソトレキセート(MTX)大量療法が有効である。ただし多発例、脳室・髄腔内に播種したものなどでは、予後が不良となる。
腫瘍生成による頭蓋内圧亢進を抑制する目的では、ステロイド薬やD-マンニトール、濃グリセリンを投与する。

脳実質外腫瘍

現場で役立つポイント

  • 髄膜腫は、脳実質外腫瘍の代表的疾患である。発症部位は多岐にわたる。
髄膜腫(頭部MRI)
  • 多くは良性予後良好となる。周術期の管理・看護でその後のQOLが影響されるので、十分に注意する。

顔面神経障害では、点眼薬などで角膜を保護する。
髄膜腫、神経鞘腫による嚥下障害がある場合は、食事内容や経口薬への配慮が必要となる。
下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫などでは、視力障害の悪化に注意し、尿量および尿比重の測定を行う。

どんな疾患・病態?

  • 髄膜や下垂体、脳神経から出る末梢神経の周りを取り囲む髄鞘など、脳実質以外の部位から発生する腫瘍。
  • 脳実質との境界が鮮明であり、全摘出することが可能で、その意味では良性とされるものが多い。
  • 髄膜(主に硬膜)に発生する髄膜腫、髄鞘を形成するシュワン細胞に発生する神経鞘腫、トルコ鞍に発生する下垂体腺腫、トルコ鞍から第3脳室底部に発生する頭蓋咽頭腫がある。
  • 髄膜腫は全脳腫瘍のうち、グリオーマに次いで発症頻度が高く、脳実質外腫瘍の代表疾患である。

症状

髄膜腫
側頭部・前頭部に発症:認知症様症状、人格変化が現れる。
前頭部後方に発症:麻痺、けいれんが起こる。
後頭蓋窩に発症:めまいや聴力低下などが起こる。
神経鞘腫
多くを占める聴神経鞘腫では、耳鳴りや難聴、眼振やめまいが起こる。
下垂体腺腫
ホルモンの過剰分泌のない非機能性腺腫では、両耳側半盲(両眼の耳側半分の視野欠損)などが生じる。
ホルモンの過剰分泌が生じる機能性腺腫では、過剰分泌されるホルモンによって、無月経および乳汁分泌、肥満や満月様顔貌、皮膚線条、小児の巨人症などの内分泌障害が現れる。
頭蓋咽頭腫
身体発育不全、尿崩症や体温低下、発熱、傾眠、性早熟などの症状が現れる。
成人の場合は、精神症状が現れる場合がある。

検査と診断

  • 画像診断、脳血管撮影などから診断する。
  • 下垂体腺腫では、ホルモン基礎値などの内分泌検査も行う。

治療法

  • 良性のものが多く、全摘出手術が可能だが、浸潤するなど摘出困難な場合は、定位放射線療法や化学療法などを行う。
髄膜腫
良性は全摘出する。
摘出困難な場合は、放射線照射を行う。
機能障害がなければ、経過観察となる場合もある。
下垂体腺腫
経蝶形骨洞到達術などを行う。
成長ホルモンやプロラクチンの分泌抑制を目的とする薬物療法を行う。

転移性脳腫瘍

現場で役立つポイント

  • 転移性脳腫瘍は一般に予後不良であり、患者のQOLを配慮した治療法およびケアが決定される。

どんな疾患・病態?

  • 頭蓋内組織以外の悪性腫瘍が、頭蓋内に転移したものをいう。
  • 原発癌としては肺癌が多く、次いで乳癌、直腸癌、胃癌など。
  • 複数個発見され、一般的に多発性である。

症状

  • 一般的に麻痺、失語、けいれんなどの局在的症状が現れる。

検査と診断

  • 問診による癌の既往確認と、CTやMRIなどを実施する。

治療法

  • 原発腫瘍による生命の予後が6カ月以上で、腫瘍直径が3cm以上のものが1個または1回の手術で除去できる腫瘍が複数個あり、リスクの少ない場所にある場合は手術を行う。
  • 直径2.5cm以下で10個以内であれば、定位放射線治療を行う。

先天性脳腫瘍

現場で役立つポイント

  • 頭蓋咽頭腫は、脳下垂体茎付近に生じる良性腫瘍であり小児で好発するが、成人にもみられる。視床下部症状がある場合は、バイタルサインの変化に注意する。
  • 髄芽腫は小児の悪性腫瘍の代表で、小脳虫部に好発する。
  • 治療に際して、患者や家族に対して生存率や合併症などを十分に時間をかけて説明し、理解と同意を得る。

どんな疾患・病態?

  • 胎生期の組織から発生する腫瘍のことをいう。
  • トルコ鞍内~鞍上部にかけて発生する頭蓋咽頭腫、脳室やくも膜下腔に広がることが多い髄芽腫、松果体および下垂体に好発する生殖細胞腫(胚細胞腫瘍)などがある。
  • 多くの先天性脳腫瘍は、およそ正中線に発生する傾向がある。

症状

頭蓋咽頭腫
下垂体機能低下症状として身体発育不全、視床下部症状として尿崩症や体温低下、発熱、傾眠、性早熟などがみられる。 成人の場合は、精神症状が起こることがある。
髄芽腫
体幹失調、眼振、水頭症などが起こる。
生殖細胞腫
松果体に発生した場合は、水頭症や上方注視麻痺(パリノー徴候)などが起こる。 下垂体付近に発生した場合は、尿崩症などが起こる。

検査と診断

頭蓋咽頭腫
単純X線写真でトルコ鞍の破壊、下垂体付近の斑点状石灰化がみられる。小児では、トルコ鞍の平皿状変形が特徴。
髄芽腫
CT:小脳虫部から第4脳室の、均質な等~軽度高吸収域として均一に抽出される。 MRI:T1画像低信号、T2画像高信号。
生殖細胞腫
腫瘍マーカー、MRIおよびCTなどから診断する。

治療法

  • 通常の脳腫瘍と同じく放射線療法、化学療法、手術が主となる。
  • 髄芽腫は、顕微鏡手術で腫瘍を摘出し、化学療法と放射線療法を行う。
  • 生殖細胞腫の良性奇形腫に対しては、外科切除を行う。
  • 髄芽腫や生殖細胞腫では放射線治療で腫瘍の縮小が認められるが、髄芽腫の場合は数年以内に再発する。