第3章 主な脳神経疾患 出血性脳血管障害 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

看護師求人TOP > ナースフル疾患別シリーズ > 脳神経疾患 >第3章 主な脳神経疾患 出血性脳血管障害

第3章主な脳神経疾患
出血性脳血管障害

臨床現場でよくみられる脳神経疾患を取り上げ、ナースが知っておきたいポイントや検査・治療法などについて、画像写真やイラストを交えて解説しています。

脳内出血

現場で役立つポイント

  • 脳内出血は、脳内の血管が破裂して血腫ができる状態。
  • 神経症状、意識障害レベル、画像検査などで診断する。
  • 高血圧患者では、厳重な血圧管理が必要。
  • 血腫の除去には、開頭血腫除去術、内視鏡的血腫除去術などを行う。
  • 意識障害があるときは、吸痰や体位変換、気管内挿管などによる誤嚥性肺炎を予防する。
  • 血腫の増大や術後の再出血による神経症状の悪化に十分注意する。
高血圧性脳内出血(頭部CT)

どんな疾患・病態?

  • 脳内の血管が破裂してできた血腫が神経組織を圧迫・破壊し、神経症状が生じる。
  • 最も多い原因は高血圧で、ほかに頭部外傷、脳腫瘍内出血、血液疾患、アミロイドアンギオパチーなどがある。

症状

  • 症状は発症後約6時間まで変化し、出血部位と出血量により神経症状が異なる。
高血圧性脳内出血(頭部CT)

検査と診断

  • 高血圧の病歴や神経症状、意識障害レベルを把握する。
  • CTで出血部位を確認する。とくに急性期の診断には有効である。
  • 血管異常や、血腫と脳血管の位置関係や偏倚を、MRIや脳血管造影で確認する。

治療法

  • 主な治療は、血腫の除去と脳浮腫治療。
  • 意識障害の程度、血腫の部位や量により保存的治療か外科的治療を選択する。
  • 早期にリハビリテーションや言語訓練を開始する。
保存的治療
血圧管理:急性期には積極的な降圧治療を行う。
脳浮腫・止血治療:高浸透圧利尿薬、止血薬を投与する。
呼吸管理:呼吸障害に対し気道確保、気管内挿管を行う。
外科的治療
血腫の除去:開頭血腫除去術、内視鏡的血腫除去術を行う。
合併症の急性水頭症に対し、脳室ドレナージを行う。

くも膜下出血

現場で役立つポイント

  • くも膜下出血の原因の多くが、脳動脈瘤の破裂である。
  • 外科的治療では、以下のことに注意する。

★術前 :再出血と急性水頭症を見逃さない。十分な血圧管理、鎮静、神経学的徴候などの観察が必要である。
★術後 :後出血や血管閉塞、脳血管攣縮に注意し、バイタルサインと症状のチェックを頻繁に行う。

  • 意識障害のある患者では、気道の管理、誤嚥性肺炎の予防を行う。
くも膜下出血(頭部CT)

どんな疾患・病態?

  • 髄液通路であるくも膜下腔に、突然大量の血液が流れこむ状態をくも膜下出血という。
  • 原因として脳動脈瘤破裂が最も多く、ほかに脳動静脈奇形、高血圧性脳内出血、脳腫瘍からの出血、外傷などがある。

症状

  • これまでに経験したことのないような、激烈な頭痛が起こる。
  • 頭蓋内圧亢進による突然の意識障害がみられる。
  • 首を持ち上げようとすると、うなじが硬直し、首が十分に持ち上げられない(項部硬直)。
項部硬直

くも膜下出血の合併症は、表のとおり。

くも膜下出血の3大合併症

検査と診断

  • 突発的な頭痛を主とする臨床症状から診断。
  • 片麻痺や失語、失認などの症状はないことが多い。
  • 急性期は症状が変化しやすく注意が必要。
画像診断
CT:出血の確認に必須。
MRI、MRA:CTでは判然としない出血の同定に有用。
血管造影:出血原因である脳動脈瘤、動静脈奇形を確認する
髄液検査
上記の画像診断では、診断が困難な場合に行う。

治療法

髄液検査
鎮痛・鎮静、血圧管理、脳圧管理を行う。
外科的治療:クリッピング術、コイル塞栓などによる破裂脳動脈瘤の根治を目指す。
髄液検査
くも膜下腔の血腫の除去として、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)やウロキナーゼを髄腔内投与する。
血管攣縮予防薬(オザグレルナトリウム)を投与する。
tripleH療法:循環血漿量増加と血液希釈、人為高血圧を組み合わせた治療。
髄液検査
脳室-腹腔シャント術、腰椎-腹腔シャント術によって水頭症を改善する。

脳動脈瘤

現場で役立つポイント

  • 未破裂動脈瘤は通常症状はないが、患者は脳動脈瘤破裂の不安を常に抱いている。検査や手術の前には、十分なインフォームド・コンセントが必要。

どんな疾患・病態?

  • 脳動脈瘤とは、先天的な動脈壁中膜欠損部位が、高血圧性のストレスにより嚢状に拡大して瘤となるものをいう。
  • ウィリス動脈輪に好発する。

症状

  • 動脈瘤が大きくなると脳神経や脳実質を圧迫し、眼球運動障害や運動障害、感覚障害を生じる場合がある。

検査と診断

  • セルジンガー法や3次元CT血管撮影、MRAなどで確認する。

治療法

  • 開頭クリッピング術またはカテーテルで動脈瘤内にコイルを充填する塞栓術を行う。経過観察を続ける場合もある。

脳動静脈奇形

現場で役立つポイント

  • 脳出血を起こしてから発見されるものが多い。
  • 大きな脳動静脈奇形では、けいれん発作を起こすことがあるので注意する。

どんな疾患・病態?

  • 脳の動脈と静脈が、毛細血管を介さず直接吻合した先天性奇形。
  • 毛細血管床の抵抗を受けないため、血管が拡大していく。周囲の神経組織に影響を及ぼし、神経症状を生じることがある。

症状

  • 血管の出血部位により、くも膜下出血や脳内出血を呈する。
  • 奇形部血管に血液が多く流れて健常部の血流が低下(盗血現象)し、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞を生じることもある。

検査と診断

  • CT、MRIなどを行い、最終診断には脳血管撮影が必要。

治療法

外科的治療
開頭による奇形部位の摘出術、血管内療法。
放射線治療
ガンマナイフ治療。

硬膜下血腫

現場で役立つポイント

  • 急性硬膜下血腫は頭部外傷によって短時間で血腫が生じるもので、転倒や殴打、交通傷害などの頭部外傷が原因。予後はおおむね不良となる。
  • 慢性硬膜下血腫は、受傷後から徐々に血腫が形成され、2~3週間後に症状が出現する。高齢者に多くみられる。
  • 症状と頭部外傷の確認後、CTで血腫を確認する。慢性硬膜下血腫は白い三日月型に写る。急性硬膜下血腫も同様に三日月型となる。
  • 神経症状に乏しい場合などは、症状の急激な悪化が生じることもあるので、経過観察では十分に注意する。
血腫

どんな疾患・病態?

  • 膜と脳表の間に血腫が生じるものを、硬膜下血腫という。
急性硬膜下血腫
頭部外傷によって脳表の血管が破れて出血し、短時間で凝固して硬膜下に貯留することで脳を圧迫する。
慢性硬膜下血腫
軽微な頭部外傷により架橋静脈から出血し、その後血腫が増大して頭蓋内圧亢進や局所脳圧迫が起こる。

症状

急性硬膜下血腫
受傷後から意識障害、昏睡を起こす。
慢性硬膜下血腫
若年者:頭蓋内圧亢進による頭痛が主症状であるが、片麻痺や失語症などの局所神経症状が現れる場合もある。
高齢者:頭蓋内圧亢進症状、知能障害および巣症状(局在症状)が生じ、行動異常や尿失禁、食思不振、記銘力の低下がみられる。

検査と診断

画像診断
CT:硬膜下および脳表の血腫の描出を確認。脳溝の消失や脳室・大脳半球の圧迫による偏倚に注意する。
MRI:血腫を確認。両側性の等吸収域型血腫や、血腫の広がりを判別するうえで有効。

治療法

  • 急性硬膜下血腫:開頭血腫除去術。
  • 慢性硬膜下血腫:穿頭血腫除去術。

モヤモヤ病

現場で役立つポイント

  • 過呼吸後に症状が現れやすい。呼吸状態の観察も重要。
  • 貧血も症状悪化の原因となる。食事の内容に注意する。

どんな疾患・病態?

  • 脳動脈主幹部における閉塞・狭窄によって“モヤモヤ血管”と呼ばれる側副血行路が形成され、脳虚血や脳出血をきたす。
  • 原因は不明。5歳前後と30歳代に多い。

症状

  • 小児では片麻痺、けいれん発作、言語障害、頭痛などの虚血発作が、乳児では知能未発達などの後遺症が生じることがある。
  • 成人では脳内出血、脳室内出血、くも膜下出血を発症する。

検査と診断

画像診断
脳血管造影:脳底部のモヤモヤした血管像を呈する。
MRI:大脳基底核などのflow-void(血流の低信号化)の描出。

治療法

  • 血行再建術や血管拡張薬治療を行う。