第1章 解剖と生理機能 脳の解剖 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第1章解剖と生理機能
生理と機能

脳神経疾患を理解するうえで必要な生理機能について、わかりやすく解説していきます。

大脳皮質

大脳皮質とその働き

  • 大脳皮質は、頭頂葉、前頭葉、側頭葉、後頭葉の4葉に分けられる。
  • 脳では、主に大脳皮質が大脳の働きを管理する。
  • 脳、特に大脳皮質では、運動を司る機能などの各機能ごとに、一定の部位にある程度まとまって配置されている。これを機能局在という。
頭頂葉
末梢から伝わる知覚を統合・分析する。
体の位置などに関する空間認識、時間認識を担う。
前頭葉
四肢、体幹などの運動機能、眼球運動を担う。
言語機能(特に発語)をコントロールする。
記憶、思考、判断、感情などに関連している。
側頭葉
聴覚、嗅覚などを司る。
言語機能(特に言語の理解)を担う。
内側部には、記銘力の中枢である海馬を有する。
後頭葉
視覚および視覚的な記憶を司る。

大脳皮質が障害されると?

頭頂葉
識別覚、立体覚の障害、構成失行などが現れる。
優位半球(一般に右利きの人は左側半球)の頭頂葉の障害により、ゲルストマン徴候(手指失認、左右失認、失書、失算)などが現れる。
前頭葉
精神機能、運動機能低下、運動性失語が現れる。
側頭葉
感覚失語、記憶障害、聴覚障害などが現れる。
後頭葉
視野欠損など、主に視覚に関する障害が現れる。
大脳皮質の機能局在

大脳基底核、大脳辺縁系、間脳

大脳基底核とその働き

  • 大脳基底核とは、大脳の深部にある神経核の集まりをいう。
  • 淡蒼球、尾状核、被殻、中脳黒質、視床下核から形成される。
  • 筋の緊張など、主に運動機能を調節する。

大脳辺縁系とその働き

  • 大脳辺縁系とは、海馬、扁桃体、帯状回などいくつかの脳組織の複合体。
  • 発生学的に、古い脳と呼ばれる。
  • 食欲などの本能行動、情動、記憶などを担う。
大脳辺縁系

間脳とその働き

  • 間脳は、視床視床下部からなる。
視床の働き
嗅覚を除くすべての感覚情報、小脳からの情報を集め、大脳皮質へ送る中継所となっている。
視床下部の働き
自律神経系の中枢。交感神経、副交感神経を司る。
体内の水分調節、体温、睡眠、食欲、性機能、内分泌機能などを調節する。

大脳基底核が障害されると?

  • 動作緩慢、筋緊張の異常、姿勢異常、不随意運動などが生じる。
  • パーキンソン病、パーキンソン症候群は、この部分が障害される代表的疾患である。

大脳辺縁系が障害されると?

  • 食欲・性行動、情動反応、記憶などが障害される。

間脳が障害されると?

視床の障害
感覚低下、運動失調などが現れる。
視床下部の障害
自律神経系の中枢。交感神経、副交感神経を司る。体温調節異常、摂食障害、睡眠障害、電解質異常、精神症状などが現れる。
間脳

小脳

小脳とその働き

  • 大脳の下に位置する。
  • 脳幹部(中脳、橋、延髄)の後部に位置し、3つの脚部(上小脳脚、中小脳脚、下小脳脚)で脳幹とつながっている。
  • 小脳は皮質と白質から成り、さらに深部に小脳核が存在している。
  • 小脳は、解剖学的に小脳半球小脳虫部、および片葉小節葉に分類される。
  • 系統発生学的にみて、原始小脳、古小脳、新小脳の3つに分類できる。
  • 小脳は平衡感覚の中枢であり、随意運動(意図的な運動)の調整に重要な役割を持つ。
  • 片葉小節葉を主とする原始小脳は、平衡感覚(前庭機能)を担っている。
  • 小脳虫部を主とする古小脳は、姿勢の保持に関与している。
  • 小脳半球を主とする新小脳は、四肢の細かい運動の調節を担っている。

小脳が障害されると?

  • 歩行障害、運動失調、言語障害(構音障害)、小脳性振戦などが生じる。
小脳

脳幹

脳幹とその働き

  • 脳幹中脳延髄をまとめた一般名称。間脳を含む場合もある。
  • 左右の大脳半球や小脳に挟まれる形で存在している。
  • 神経線維の主な通路となっており、運動指令を担う遠心性の神経路、感覚情報を担う求心性の神経路が通る。
  • ほとんどの脳神経核が脳幹に集まっている。
  • 呼吸や体温調節など、生命維持に直接的役割を担う。
脳幹

脳幹が障害されると?

中脳の障害
動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、四肢の不随意運動、注視麻痺などが現れる。
中脳障害による症候群として、動眼神経麻痺、片麻痺などが起こるウェーバー症候群、不随意運動や動眼神経麻痺を生じるベネディクト症候群、上方注視麻痺を示すパリノー症候群などがある。
中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が変性することにより、パーキンソン病が生じる。
橋の障害
顔面神経麻痺、眼球外転麻痺、片麻痺などが現れる。
橋障害による症候群として、顔面神経麻痺、片麻痺を示すミヤール・ジュブレール症候群などがある。
延髄の障害
運動失調、球麻痺などが現れる。
延髄障害による症候群として、運動失調や交叉性温痛覚障害(顔面では障害と同側に温痛覚の低下が現れ、頸部以下では反対側に現れる)を伴うワレンベルグ症候群などがある。
脳幹網様体

脳幹の内部には、間脳から中脳、橋、延髄を貫く「脳幹網様体」がある。脳幹網様体は神経核と神経軸索が交じり合って網状のネットワークになった部分であり、視床・視床下部を経て大脳皮質に影響を与え(上行性網様体賦活系)、覚醒レベルを調節している。

脊髄

脊髄とその働き

  • 脊髄は、脳の延髄につながる円柱状の中枢神経組織で、脊椎骨によって形成される脊椎管の中に収まっている。
  • 脊髄は、頸髄8個(C1~8)、胸髄12個(T1~12)、腰髄5個(L1~5)、仙髄5個(S1~5)、尾髄1個(Co)の、計31個の髄節に分けられる。脊髄から31対の脊髄神経が、体の各部分に向かって延びている。
  • 脊髄は軟膜、くも膜、硬膜からなる髄膜で覆われ、硬膜の外に脊椎骨がある。脊椎骨は頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨の26個。
脊椎と脊髄
  • 脊髄は、白質と灰白質の2層に分かれている。脳の場合、灰白質の大脳皮質は表面側にあるのに対し、脊髄は、神経細胞の集まった灰白質が中央に、神経線維の集まった白質がその外側を覆っている。
  • 脊髄の前根(運動根ないし腹側根ともいう)は運動神経を担い、脳や脊髄からの命令を骨格筋などに伝える出力路となる。
  • 脊髄の後根(感覚根または背側根ともいう)は感覚神経を担い、末梢からの感覚刺激を中枢に伝える入力路となる。
脊髄

脊髄が障害されると?

  • 痛覚、触覚などの感覚障害、筋萎縮、麻痺、歩行障害などの運動障害が生じる可能性がある。どこにどのような障害があるかにより、どの部分の脊髄に病変があるかを推測できる。
  • 仙髄が障害されると、排尿障害が生じることがある。
脊椎と脊髄

脊髄は、脊柱によって形成される脊椎管すべてにわたっているものではない。脊髄の下端は、成人では通常、第一腰椎の高さで終わっている。

神経細胞(ニューロン)

ニューロンとは

  • 脳の細胞の中心となるのは神経細胞(ニューロン)であり、大脳皮質にはニューロンが140億個存在するといわれている。
  • ニューロンは、電気信号(活動電位)と化学信号(神経伝達物質)により次々と刺激を伝導し、巨大なネットワークを作り出している。

ニューロンの構造

  • ニューロンは細胞体と、細胞体から出る多くの突起によって構成される。
  • 突起には数多くの樹状突起と、1本の神経線維(神経軸索ともいう)がある。
  • 神経線維の終末は、少しすき間を開けて、次のニューロンの細胞体とつながっている。この接合部をシナプス、すき間をシナプス間隙という。

刺激伝達のしくみ

  • 他のニューロンから伝わった刺激は、次のニューロンの細胞体から活動電位の形で、神経線維終末へと伝わる。
  • 活動電位が神経線維終末へたどり着くと、神経線維の末端のシナプス小胞から神経伝達物質が放出される。この物質は次のニューロンの樹状突起にある受容体に結合し、次のニューロンを興奮させる。こうして次々と刺激が伝達されていく。
  • 1つのニューロンのシナプス小胞には、1種類の神経伝達物質が入っている。代表的なものとしてドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどがある。
ニューロンと刺激伝達
グリア細胞

脳の細胞のうち、ニューロン以外のものとしてグリア細胞(神経膠細胞)がある。その数はニューロンの5倍以上ともいわれる。グリア細胞には、アストログリア(星状膠細胞、神経に栄養を与える)、オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞、神経線維の周囲を覆う髄鞘を形成する)、ミクログリア(小膠細胞、免疫に関与)の3種類がある。