第6章 解剖生理 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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心臓と血管の構造

心臓

  • 握り拳大の心臓は、ふくろ状の筋肉(心筋)の塊であり、全身の臓器に血液を送り出すポンプの役割を果たしている。重さは成人で約300g。胸の中央よりやや左側に位置し、左右は肺に接している。下部は、とがった形の心尖部が左下を向き、横隔膜の上に位置している。
  • 心臓の表面は臓側心膜で覆われている。心臓の内部は、縦に仕切る壁(中隔)があり、左右がそれぞれ弁によって上下に分かれ、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋(心腔)になっている。心腔は心内膜と呼ばれる内張で覆われている。右心房と左心房の間の壁を心房中隔、右心室と左心室の壁を心室中隔と呼ぶ。4つの弁は、血流を調節して逆流を防ぐ。

血管

  • 血管は、動脈、静脈、毛細血管の3種類に分類される。
  • 動脈と静脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層からなる。毛細血管は内膜のみである。大動脈は、心臓の収縮により送り出された血液によって拡張し、プールした血液を末梢動脈へ流す伸縮性に富んだ血管である。末梢の細動脈は、抵抗血管として各臓器への血流分配を調節する。静脈は血液を末梢から心臓へ送り返す血管で、血液の逆流を防ぐ弁がついている。毛細血管壁は細胞1層分程度の薄さで、ガス交換、エネルギー供給を担う。
心臓の構造

血液の循環経路

肺循環

  • 全身の組織から心臓に戻る静脈血は、酸素が少なくエネルギー代謝により生じた二酸化炭素を含んでいる。この血液は、右心系から肺を循環することによって、二酸化炭素を排出し、新鮮な酸素を受け取って、左心系に戻る。この心臓から肺への血液循環の回路を「肺循環」と呼ぶ。
  • 具体的な順路は、次のとおりである。
  • 右心房に戻った静脈血は、三尖弁を通って右心室に入り、肺動脈弁を抜けて左右の肺動脈から肺毛細血管へ送られる。肺毛細血管内の血液と肺胞内の空気の間で酸素と二酸化炭素の交換が行われ、酸素を含んだ血液は、左右4本の肺静脈を通って左心房に戻る。

体循環

  • 肺から左心房に戻った血液は、僧帽弁を抜けて左心室に送られる。左心室が収縮すると、大動脈弁を経て大動脈へ駆出され、全身へ循環する(動脈血)。心房は心室のブースターポンプである。
  • 動脈血は細動脈から毛細血管へ送られ、組織へ酸素を渡し、二酸化炭素を受け取って静脈血となり、上大静脈、下大静脈を経て右心房に戻る。
  • このように、左心室から駆出された血液が全身の組織を循環して右心房に戻ってくる血液循環の回路を「体循環」と呼ぶ。
  • 左心室は全身に血液を送り出すため、高い圧力を生み出す。右心室よりも壁の筋肉に厚みがあり、強い収縮力を備えている。
全身の血液循環

心拍動と刺激伝導系

心周期

  • 肺循環・体循環を経て血液が左右の心房に戻ると、心房は同時に収縮し、直後に僧帽弁・三尖弁が閉鎖する。続いて左右の心室が収縮する。心室の血液がそれぞれ大動脈と肺動脈に送られる。次に、大動脈弁・肺動脈弁が閉じ、4つの心腔は弛緩する。
  • この心臓の収縮と弛緩の1サイクルを心周期と呼び、1回の心拍動にあたる。聴診器を前胸部に当てると、心周期に伴って規則正しい「ラプ・タプ」という心音を聞くことができる。1つめは、僧帽弁が閉鎖する音、2つめは大動脈弁と肺動脈弁が閉鎖する音である。心臓は1分間に約60回拍動する。

刺激伝導系

  • 心臓のリズミカルな拍動は、洞結節とよばれる自動能をもったセンターの電気シグナルによる。この電気シグナルは、刺激伝導系と呼ばれる回路を伝わって次々と心筋へ伝えられ、心筋全体の秩序ある「収縮・弛緩運動」を生じさせる。
  • 自動能は、自律神経系を介して脳の支配を受ける。刺激伝導系の流れは、次のとおりである。洞結節から出た刺激(電気的シグナル)が心房に波及すると、心房筋が収縮する。その刺激は房室結節を経由し、少し遅れてヒス束から右脚と左脚を経てプルキンエ線維をくだる。心室の収縮は心尖部から始まる。
刺激の伝導路

冠循環

冠状動脈

  • 心臓が働く際に必要な酸素やエネルギーは、大動脈の付け根を起点とする冠循環と呼ばれる左右の血管から供給される。これが、心臓への栄養補給ルートである。右冠循環、左冠循環は、それぞれ枝分かれしながら心筋のすみずみにまでいきわたり、酸素と栄養を供給している。左冠循環は前下行枝と回旋枝に分岐する。前下行枝は、心臓のなかでもとくに大きな役割を担う左心室の前壁および中隔への血液供給を行う血管である。回旋枝は、左心室の側壁に分布する。
  • 右冠循環は、右心室壁や心室中隔の後側、左心室壁の下部に広がっている。冠循環は、太い部分でも直径数ミリにすぎないが、この血管に障害が起こると、虚血性の心臓病(狭心症、心筋梗塞)に陥る。虚血性心臓病の危険因子には、高血圧・肥満・脂質異常症・糖尿病・喫煙・ストレスなどがある。冠循環血によって、心筋に酸素とエネルギーが補給され、二酸化炭素を含んだ血液が冠状静脈を通じて冠状静脈洞に戻る。
冠状動脈

脳循環

脳動脈

  • 脳循環は重要である。血流が数分間でもストップして酸欠状態になれば、脳細胞は機能しなくなる。
  • 脳への血流は、左右の頸動脈と鎖骨下動脈から枝分かれした椎骨動脈による。
  • 内頸動脈は、頸部を経て頭蓋内に入り、前大脳動脈、中大脳動脈となって大脳の大部分への栄養供給を行っている。椎骨動脈は、頭蓋内に入ると2本が合流して脳底動脈となり、脳幹と小脳への栄養供給を行う枝を出しながら上行し、脳底部で後大脳動脈に枝分かれする。

ウイリス動脈輪

  • 脳はほかの組織と異なる特殊な血液循環がある。脳血管のどこかに血栓ができて血流が止まっても、別のルートから脳組織に栄養供給が行われる。「ウイリス動脈輪」である。頭蓋内に入った内頸動脈と椎骨動脈がそれぞれ枝別れした先の脳底部で、脳底部を囲むようにつながっているのである。脳循環に障害を起こす疾患の代表例は、脳卒中である(日本人の死因第3位)。脳卒中は、脳出血・脳梗塞・くも膜下出血の3つに分類される。多くの場合に急激な意識障害を伴う。脳血管障害の3年以上の生存率は、3分の1以下とされる。
脳循環(脳を下から見た場合)
主要な動脈
主要な静脈