第1章 循環器疾患の救急看護 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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心肺蘇生法

  • 呼吸や循環が停止し、意識を失った人の救命処置である心肺蘇生法は、一般市民にも指導されている。人の生命に関わるプロフェッショナルとして、看護師は心肺蘇生法について正しい知識をもち、率先して処置にあたることが求められる。
  • 心肺蘇生法は、1次救命処置(BLS)と2次救命処置(ACLS)に分けられる。

救命処置の手順

  • 病院内などで患者の容態が急変した場合、医師がその場に到着するまでに看護師(場合によっては訓練された一般市民)が積極的に行う処置が「1次救命処置(BLS)」である。
  • 「2次救命処置(ACLS)」は、医師の指示のもと、機器類・薬剤を用いて行う処置である。医師・看護師はACLSの手順にしたがい、一体となって救命処置を行う。
救命処置の流れ

救命処置の手技① 意識の有無~異物の確認~異物除去

意識の有無

  • 「大丈夫ですか?」「どうしましたか?」などと大きな声で呼びかけて、反応の有無を確認する。

口内異物の確認

  • 意識がある場合は口を開かせて、まず、気道をふさぐおそれのある食物などが残っていないかを確認する。
  • 意識のない場合は、あお向け(仰臥位)にさせ、手で額と下顎をおさえて口を開き、口内の異物の有無を確認する。暗い場所では懐中電灯などで口内を確認する。

異物除去法

  • やわらかい異物があれば、ハンカチなどを人さし指と中指に巻きつけ、口内にあるものをぬぐい取る。
  • 口腔内に固形物がある場合は、患者のからだを起こして除去する。除去法には、背部叩打法、上腹部圧迫法(ハイムリック法)などがある。
意識の確認と異物除去法

救命処置の手技② 気道確保~人工呼吸~心臓マッサージ

気道確保

  • 患者の意識がない場合は、舌が気道をふさぐ舌根沈下などを防いで、気道を確保する。気道確保の手法には、頭部後屈顎先拳上法などがある。
頭部後屈顎先拳上法

人工呼吸

  • 呼吸が停止している場合は、酸素を吸入する。1次救命の段階では、口から口への人工呼吸、または使い捨ての補助器具を用いる。
口から口への人工呼吸

心臓マッサージ

  • 人工呼吸を行ったあと、脈の有無を頸動脈などでチェックする。脈がない場合は、閉胸式の心臓マッサージを開始する。
  • 圧迫する位置を間違えると肝臓を損傷するおそれがあるので注意する。
閉胸式心臓マッサージ

救命処置の手技③ 除細動~気管挿管

除細動

  • 不整脈を正確にとらえるために、モニター心電図を装着して救命処置にあたる。
  • 心室頻拍、心室細動、上室頻拍、頻拍を伴う心房細動、心房粗動などの危険な不整脈が観察される場合は、心臓に電流を流して調律を正常に回復させる「除細動(カウンターショック法)」と呼ばれる救命処置を行う。一般市民が使用できる軽量の自動体外式除細動器(AED)も普及している。
カウンターショック法
AED(自動体外除細動器)の使用手順

気管挿管

  • 意識障害があり、頭部後屈顎先拳上法などで気道を確保しても自発呼吸がない場合は、気管内に経口気管内チューブなどを挿入して継続的に気道確保をはかる。

どのような場合に気管挿管が必要なのか

  • 患者自身で気道確保ができない(意識障害による舌根沈下など)。
  • 頭部後屈や頤挙上、酸素マスクによっても気道確保が困難。
経口気管内チューブの挿入

チューブ挿入患者へのケア

  • 経口気管挿管の患者の場合は、唾液の嚥下ができず、口腔内が不潔になる。口腔ケアを1日に3~4回行う。
  • チューブが固定されている患者はコミュニケーションが困難である。看護師は患者の表情などをこまめに観察し、患者から送られるサインを見逃さないことが大切。

挿管後に確認するポイント

  • 胸郭の動き
  • 5点聴診(左右前胸部、左右側胸部、腹部)
  • チューブ内の水蒸気
  • 酸素ボンベ、チューブ、ジャクソンリースがつながっているか

緊急な対処が必要な不整脈

  • 1・2次救命処置時には、不整脈の種類を確認する心電図のモニタリングが不可欠である。モニター心電図の波形を正確に読みとることができるよう、ふだんからトレーニングを積んでおく。
  • 次の4種類の不整脈は心停止を意味する。ただちに医師を呼び、到着するまでにバイタルサインを把握し、BLSを開始する。
心室静止
無脈性電気活動
心室細動
心室頻拍

1電気機械的解離

特徴
心電図に波形はみられるが、脈が触れない状態。
対処法
気管内挿管を行い、静脈路を確保する。
薬剤の投与……エピネフリン(epinephrine)1㎎ 3~5分ごとに同量を投与する。アトロピン(atropine)1㎎ 3~5分ごとに同量を投与する(3回まで)。

2心静止(心収縮停止)

特徴
電気活動がなく、脈が触れない状態。
対処法
心電図モニターで確認する。気管内挿管および静脈路を確保する。
薬剤の投与……エピネフリン(epinephrine)1㎎ 3~5分ごとに同量を投与する。アトロピン(atropine)1㎎ 3~5分ごとに同量を投与する(3回まで)。

3不整脈以外で危険な波形第

危険な波形

バイタルサイン① 脈拍

  • 心疾患患者は前触れもなく容態が急変し、緊急処置を必要とするケースも多い。いち早く確認しなければならないのが、生命兆候すなわち「バイタルサイン」である。バイタルサインは、からだにどんな異常が起こっているのかを推測するうえで重要な手がかりとなる。
  • バイタルサインとして、「意識レベル」「脈拍」「血圧」「呼吸」「体温」を中心に観察する。しかし、脈拍が1分間に200以上などという不整脈では触診による判断は不可能である。より正確に脈拍と不整脈の種類を知るために「モニター心電図」を用いる。循環動態を知るためには、先端にバルーンがついた「スワン・ガンツカテーテル」を静脈系に挿入し、心血管内圧・心拍出量などを計測する。
  • ふだんから、「脈拍」「血圧」「呼吸」「体温」の種類ごとに基準値などを正確に記憶しておく。測定は、すばやく的確に行わなくてはならない。

脈拍からわかること

  • 心臓の拍動の波が伝わる皮下の動脈を軽く触れることで、循環動態、血管の弾力性の有無などを知ることができる。
  • 脈拍数、リズム、拍動の強さを観察し、頻脈、徐脈、その他の不整脈の有無、血圧を把握する。拍動の強さは、収縮期血圧と関連する。弱い場合は低血圧、指で圧迫しても拍動が消えないほど強い場合は著しく血圧が高い。高血圧や動脈硬化では、血管の緊張度が強い。
  • 測定時の姿勢、時間帯、年齢によって脈拍数は異なることに注意する。立位、座位、仰臥位の順で脈拍数が少なくなり、夜より朝のほうが少ない。年齢では新生児の脈拍が最も多い。
  • 一般的に、運動選手や持久力を鍛えている人は脈拍数が少ない。
脈拍の調べ方

脈拍の種類

  • 脈拍数には個人差があり、測定する環境によっても異なる。成人は、安静時1分間に60~70回が正常範囲の目安となる。
  • 脈拍数が極端に多い場合を「頻脈(100回/分以上)」、逆に少ない場合を「徐脈(50回/分以下)」と呼ぶ。どちらも体内になんらかの異常が推察される。
  • 脈拍数だけでなく、緊張度の高低や不規則なリズム、立ち上がりの速さ、左右の脈拍数の違いなど、脈拍の異常はさまざまで、心疾患を特定する際の手がかりとなる。
頸動脈波と心周期
脈の模式図(波形)
脈拍から推測できる疾患・症状

バイタルサイン② 血圧

  • 心臓から動脈へ駆出される血液は、圧力を生じて血管内に流れ全身をめぐる。この血管内の圧力を「血圧」という。
  • 血圧には動脈圧、静脈圧、毛細血管圧の3種類がある。通常、血圧という場合は動脈圧を指す。動脈圧は心臓の収縮、弛緩という一連の動きによって変動し、心室筋が収縮しているときの最大血圧を「最高血圧(収縮期血圧)」、心室筋が弛緩しているときの最小血圧を「最低血圧(拡張期血圧)」という。
  • 血圧は、心臓から拍出される血液量と動脈の血管抵抗によって決まる。自律神経や末梢血管の収縮や拡張を支配するホルモン、腎臓での体液バランスによって調整され、生活環境などからも影響を受ける。

測定方法

  • 動脈圧の測定法には、「非観血的血圧測定」と「観血的血圧測定」の2種類がある。
  • 通常の血圧測定では、腕にマンシェットを巻き、肘の動脈(上腕動脈)に聴診器をあてる非観血的血圧測定を用いる。ショック症候群のように循環動態が不安定で持続的な血圧測定が必要な場合は動脈に針を挿入し観血的血圧測定を行う。
  • 緊急の場合は、脈拍を触れて大まかな血圧を推測する技術が求められる。
血圧の測り方

バイタルサイン③ 呼吸

  • 細胞は酸素が供給されないと、生存し働くことができない。人体にとって呼吸運動とガス交換は不可欠である。
  • 救急患者では、まず呼吸運動・窒息の有無、呼吸障害の可能性を確認する。

呼吸の確認方法

  • 呼吸の有無、呼吸数、リズム、呼吸パターン、呼吸音などを調べる。救急救命患者ではモニター心電図、パルスオキシメーターなどのモニタリングを加える。
  • 意識障害の場合は、呼吸の有無と同時に呼吸音を調べる。呼吸の有無は、胸郭の動きを観察するとともに、患者の鼻と口元に頬を寄せて、呼気を皮膚で感知する。聴診器をあて、喘鳴、ラ音の有無などを確認することも必要である。
聴診器でラ音(異常な呼吸音)の有無などを確認する

緊急時の対応

  • 呼吸困難がある場合は、緊急度を把握する。必要に応じて酸素吸入、人工呼吸などの処置を行う。努力(性)呼吸をみる場合は、医師に報告する。
呼吸の種類

バイタルサイン④ 体温

  • 人の深部体温は、外界の気温に変化があるときでも、発熱と放熱のバランスを保ち、恒温状態を維持する。個人差もあるが、成人では36.0℃前後である。著しい高低は、なんらかの異常による。
  • 発熱と放熱のバランスが極端に崩れると生命の危機となる。その境界は、おおよそ「30℃以下」と「42℃以上」である。

測定方法

  • 電子体温計や水銀体温計によって、腋窩・口腔・耳孔などで検温を行う。また、カテーテル(温度センサー付き)を用いた膀胱・直腸検温などがある。
  • 必要に応じて、スワン・ガンツカテーテルによる肺動脈血の温度測定も行われる。
腋窩の場合は、体温計の計測部位が腋窩中央にあたるようにする
体温の分類
異常体温に伴う病態
年齢による体温の差異

バイタルサイン⑤ 意識

意識の有無を調べる
  • 救急患者への対応は、全身状態を観察し、意識の有無を確認する。
  • 不用意にからだを揺り動かしたり、上体を抱き起こすなどは禁物。
●呼びかけや痛みなどの刺激
意識障害の分類JCS(Japan coma scale)
意識障害の分類GCS(Glasgow coma scale)

患者の主訴と緊急度一覧

胸痛

緊急度:高 主な症状:突然の激痛(数時間持続)と呼吸困難を伴う 原因となる循環器疾患:急性心筋梗塞(心筋壊死)
緊急度:中 主な症状:前胸部の圧迫感・絞扼感(数分ないし十数分で消失)、とくに労作時 原因となる循環器疾患:狭心症( 心筋の酸欠状態)
緊急度:高 主な症状:激痛(30分以上持続)と背部痛、腰痛を伴う 原因となる循環器疾患:大動脈解離
緊急度:高 主な症状:激痛(30分以上持続)と呼吸困難、血圧低下を伴う 原因となる循環器疾患:肺血栓塞栓症

呼吸困難

緊急度:高 主な症状:息切れ、不快感、息苦しさ 原因となる循環器疾患:急性心不全
緊急度:高 主な症状:息切れ、不快感、息苦しさ 原因となる循環器疾患:急性心筋梗塞

めまい

緊急度:低~高 主な症状:動悸、失神を伴う場合がある 原因となる循環器疾患:不整脈

失神

緊急度:低~高 主な症状:脳循環が阻害され、一過性の意識消失をきたす。 原因となる循環器疾患:不整脈
緊急度:低~高 主な症状:脳循環が阻害され、一過性の意識消失をきたす。 原因となる循環器疾患:心筋梗塞
緊急度:高 主な症状:脳循環が阻害され、一過性の意識消失をきたす。 原因となる循環器疾患:心タンポナーデ
緊急度:高 主な症状:脳循環が阻害され、一過性の意識消失をきたす。 原因となる循環器疾患:大動脈解離
緊急度:高 主な症状:脳循環が阻害され、一過性の意識消失をきたす。 原因となる循環器疾患:肺血栓塞栓症

動悸

緊急度:高 主な症状:心拍が速い 原因となる循環器疾患:発作性上室頻拍 症
緊急度:高 主な症状:心拍が速い 原因となる循環器疾患:発作性心房細動
緊急度:高 主な症状:心拍が速い 原因となる循環器疾患:発作性心房粗動
緊急度:低 主な症状:心拍が不規則になる 原因となる循環器疾患:期外収縮
緊急度:低 主な症状:心拍が不規則になる 原因となる循環器疾患:房室ブ ロ ッ ク ( 心拍数正常範囲)
緊急度:中 主な症状:心拍が不規則になる 原因となる循環器疾患:房室ブ ロ ッ ク ( MobitzⅠ・ Ⅱ型)  
緊急度:高 主な症状:心拍に全く規則性がなくなる 原因となる循環器疾患:心房細動( 絶対性不整脈)
緊急度:高 主な症状:心拍が遅い 原因となる循環器疾患:完全房室ブ ロ ッ ク

浮腫

緊急度:高 主な症状:起居では下肢に生じるが、仰臥位では腸骨背部に生じる 原因となる循環器疾患:心不全

ショック(心原性)

緊急度:高 主な症状:心臓のポンプ機能低下による循環不全。血圧の低下、チアノーゼ、乏尿、脱力、意識障害 原因となる循環器疾患:心筋梗塞
緊急度:高 主な症状:心臓のポンプ機能低下による循環不全。血圧の低下、チアノーゼ、乏尿、脱力、意識障害 原因となる循環器疾患:心タ ンポナーデ
緊急度:高 主な症状:心臓のポンプ機能低下による循環不全。血圧の低下、チアノーゼ、乏尿、脱力、意識障害 原因となる循環器疾患:弁膜症( 急性僧帽弁閉鎖不全症)
緊急度:高 主な症状:心臓のポンプ機能低下による循環不全。血圧の低下、チアノーゼ、乏尿、脱力、意識障害 原因となる循環器疾患:致死性不整脈

主な症状の鑑別・診断までの流れ

胸痛
呼吸困難1

ショック時の緊急看護

ショック時の緊急看護
  • 急性循環不全に伴う症候群。重要な臓器、組織、細胞の機能維持に最小限不可欠な血液循環が得られない病態である。
  • 脳・心臓・腎臓、肝臓・肺臓は、とりわけ循環不全の影響を受けやすい。

観察

  • 意識レベル、バイタルサインのチェック。
  • 意識の異常がみられるときは、脳血流の低下が疑われる。

ショックの病因(下記の5つに大別される)

  • 循環血液量の減少によるショック(出血性ショック)。
  • 心原性ショック(心ポンプ機能の低下によるショック)。
  • 感染性ショック。
  • アナフィラキシーショック。
  • 神経原性ショック。
ショック患者特有の症状、徴候など
循環動態の改善目標
ショック患者への処置
心停止・呼吸停止の観察・治療
ショック患者への薬物投与

胸痛の緊急看護

  • 胸痛を主症状とする疾患は、軽症から重症まで幅広い。正確な診断を行うために、病状の観察と各種検査がかかせない。
  • 胸痛の持続時間は、狭心症では5~15分程度、急性心筋梗塞では30分以上数時間にわたる。

観察

  • いつ、どんなときに胸痛が始まったか(運動中・後、空腹時、食事後、ストレス時、就眠後1~2時間、明け方など)
  • 胸痛の部位と広がり
  • どのような痛みか、鈍痛、激痛、刺すような痛みなど
  • 瞬間的か、数分~十数分か数時間か、くり返す痛みか

注意点

  • 関連痛・放散痛の有無、既往歴・薬剤治療歴
胸痛患者への緊急処置
胸痛部位( 痛みの位置と疑われる疾患)

呼吸困難時の緊急看護

  • 呼吸困難の程度は患者の主観によるところが大きく、客観的な評価は難しいが、患者にとっては死の恐怖をもたらすほどの苦痛を伴う。
  • どんなときに、どのように呼吸困難が生じるのかなどを細かく観察するとともに、呼吸しやすい体位を工夫し、恐怖感を抑える精神的なサポートも行う。
呼吸困難発生の機序
呼吸困難をきたす主な疾患

観察

  • いつ、どんなときに呼吸困難が始まったか(安静時か運動量が増えたときか、夜間か)を確認。
  • 血圧、脈拍、心拍数、呼吸回数、呼吸状態の定期的なチェック。
  • 喘鳴、チアノーゼの有無。

精神面でのサポート

  • 患者の訴えをきちんと聞き、安心感を与える。
  • 検査内容などを説明する。
  • 患者を不安にさせるような言動はつつしむ。

呼吸しやすい体位

  • 毛布や円座などを利用して、患者が最も楽な姿勢になるよう援助する。突発的な呼吸困難や発作時は、酸素消費量が急激に増えて疲労につながる。上半身を起こした姿勢にする。
  • 長時間にわたり同じ姿勢が続くと、痛みや褥瘡などにつながるので、体位の交換も行う。
呼吸困難時に有効な体位

頭痛の緊急看護

  • 激痛に続き意識障害を伴う場合は、クモ膜下出血、脳出血を疑う。
  • これまで何度も経験している慢性的な頭痛(緊張性頭痛、片頭痛など)か、経験のない急性頭痛(脳卒中、脳脊髄膜炎など)なのかの判断が重要である。

観察

  • 血圧を中心としたバイタルサイン
  • 意識障害の有無
  • 問診内容……「いつ、どんなときに発症したか」「頭痛持続時間」「頭痛の部位」「痛みの程度」
頭痛をきたす主な疾患

看護のポイント

・頭部を冷やす
・鎮痛剤の投与
・話し声などのない静かな環境に配慮する
ペースメーカーと電子機器

完全房室ブロックや洞機能不全症候群など徐拍性不整脈の治療法として、人工ペースメーカーが広く使われています。ドイツのある首相はペースメーカーを植え込んだあとも激務をこなしていました。
ペースメーカーはIT技術をとり入れた精密機器で、自己の心拍があれば作動せず、病態を感知することで作動する仕掛けとなっています。しかし高度な機器ですから、他の電子機器、たとえば携帯電話やパソコンのディスプレイなどから生じる電磁波の干渉を受けることが懸念されます。すぐそばで他人が携帯電話をかけていたり、自分が携帯電話や家庭用の電子機器を使用したりする際にペースメーカーが誤作動するのではと、不安になる患者さんもいます。
携帯電話の通話中には電磁波が発生します。しかし30㎝程度離れていればペースメーカーへの干渉はありません。さらに最新のペースメーカーは電磁波を防ぐ構造になっており、通話中の携帯電話をペースメーカーの真上に押し付けるようなことをしないかぎり、問題ありません。万一そのような場合でも、失神など重篤な問題は発生していないと報告されています。その他の電子機器の電磁波は携帯電話の電磁波よりも弱いので心配する必要はないでしょう。
ただし医療機器、なかでもMRIなど画像診断に用いられる装置では強い電磁波が生じます。ペースメーカーへの干渉ばかりでなく、金属部分が熱を生じることも懸念しなければなりません。ペースメーカー植え込み患者は、不用意にこのような検査をすることを避けなければなりません。