第3章 代表的な臨床検査法 上肢 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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五十肩(凍結肩・肩関節周囲炎)

病態のポイント

  • 肩関節周囲の筋肉・腱・腱鞘・関節包などの軟部組織に、加齢などによって炎症と拘縮が起こり、発症する。
  • 40~60代に多く発症するが、明らかな原因はわかりにくい。
肩関節周囲の構造

症状・診断

  • 肩関節の疼痛と、可動域制限が現れる。
  • 疼痛の部位と肩関節の動きによって診断する。X線MRI関節造影超音波などの検査によって、同様の症状を訴える腱板断裂石灰性腱炎石灰沈着性滑液包炎などと鑑別する。
  • 進行は、凍結進行期凍結期解凍期の3つの病期に分かれるが、明確には区別できない。経過は1年ほどにおよぶ。
凍結進行期(急性期)
強い動作時痛が起こり、自動運動が制限される。やがて安静時痛夜間痛などが出現し、衣服の着脱や入浴などの日常動作に困難が生じて、拘縮が徐々に進行する。
凍結期(慢性期)
痛みは軽減するものの、肩関節の可動域に著しい制限が生じ、拘縮が完成する。
解凍期(回復期)
拘縮が徐々にとれて可動域が改善し、疼痛もそれに伴って軽減する。

治療方法

  • 保存療法が原則で、疼痛が強い場合は上肢の安静を保ち、非ステロイド性抗炎症薬筋弛緩薬の内服、ヒアルロン酸の関節内注射などを行う。
  • 疼痛が軽減してきたら、できるだけ早く運動療法温熱療法(マイクロ波・ホットパック・入浴)を開始して、関節可動域の再獲得をはかる。

胸郭出口症候群

病態のポイント

  • 腕神経叢は第一肋骨上の胸郭出口を通って、上肢や肩甲帯の運動・感覚を支配し、鎖骨下動脈・静脈もこれに伴走している。この部位で神経や血管の圧迫が生じると発症する。
  • 神経・血管の圧迫や牽引が起こる部位は、斜角筋・鎖骨・小胸筋などで、頚肋や異常な線維性索状物が原因で発症することもある。
  • なで肩の女性や、重いものを持つ男性に多い。
神経・血管の圧迫部位

症状・診断

  • 上腕の疼痛しびれこりチアノーゼ冷汗が起こる。発汗嘔気頭痛などがみられる場合もある。
  • 次のようなテストによって症状を確認し、X線検査MRA検査などで確定診断する。
胸郭出口症候群の検査
アドソンテスト
痛みのある側に首を回して顎を上げ、深呼吸をすると手関節の橈骨動脈の脈が弱くなる。
ライトテスト
座位で両肩関節の90度外転・90度外旋・肘関節90度屈曲位をとると、手関節の橈骨動脈の脈が弱くなる。
ルーステスト
ライトテストの姿勢で3分間指の屈伸運動をすると、しびれや痛みなどの症状が出現し、持続できなくなる。
エデンテスト
座位で胸を張り、両肩を下後方に引くと、手関節の橈骨動脈の脈が弱くなる。

治療方法

  • 温熱療法体操療法薬物療法などの保存療法を行うほか、日常生活では、上肢を上げた状態での仕事や重いものをぶら下げて持つなど、症状が悪化する動作を避けるように指導する。
  • ADLが大きく損なわれる場合は、第1肋骨切除、前斜角筋切除などの手術を検討するが、神経・血管の絞扼部位によって方法が異なる。

肘部管症候群

病態のポイント

  • 尺骨神経は、肘の内側付近で肘部管を通過する。肘部管はトンネル状の構造で、尺骨のくぼみの尺骨神経溝と靭帯、筋膜で構成される。
  • 肘関節の外反変形などに屈伸運動のくり返しが伴うことによって、狭いトンネル内で尺骨神経が障害され、麻痺した状態である。
  • 多くが、小児期の骨折後の外反肘や、変形性関節症に伴って生じる。
肘部管

症状

  • 肘部の変形や、可動域が制限されていることが多く、尺側(小指側)の手~前腕にしびれ疼痛がある。
  • 運動麻痺が出現すると、ボタンをかけにくくなったり、箸を自由に使えなくなったりすることもある。
肘部管症候群による手の障害

治療方法

  • 慢性的に進行する症例で、筋力低下がみられる場合は、手術が適応となる。
  • 術式は、変形性肘関節症を伴う場合はKing変法(上腕骨内側上顆切除術)、上腕骨外顆骨折偽関節による外反肘では皮下や筋層下の尺骨神経前方移動(行)術など、病態に応じて選択する。

橈骨神経麻痺

病態のポイント

  • 橈骨神経の走る上腕、前腕部が骨折や圧迫などで障害され、橈骨神経が損傷すると、その神経に支配される部分が麻痺を起こす。
  • とくに、上腕骨骨幹部の骨折などで上腕の外側にダメージがあると、橈骨神経が損傷しやすい。
  • 上腕部の橈骨神経に損傷が起こった状態を、高位麻痺という。肘の前面部に神経損傷が起こった状態を、低位麻痺という。
  • 骨折などの障害がない場合でも、橈骨神経を長時間圧迫すると麻痺することがあるが、ほとんどの場合は一過性であり、自然回復することが多い。
橈骨神経の走行

症状

  • 橈骨神経が上腕部で損傷されると、手関節の背屈と指のMP関節の伸展ができなくなり、下垂手(お化けの手)になる。手の甲から前腕の母指側の感覚に障害が起こる。 肘の前面部で神経が損傷されると、手関節の背屈はできるが、MP関節の伸展ができなくなり、下垂指になる。
  • 損傷が深枝(後骨間神経)だけの場合は、感覚の障害はない。
下垂手(drop hand)
下垂指(drop finger)

治療方法

  • 骨折による橈骨神経麻痺の場合は、関節の拘縮を防ぐことが重要となるため、回復期には良肢位の保持と、可動域訓練のリハビリを行う。
  • このような保存療法によって、多くの橈骨神経麻痺は回復に向かうが、場合によっては手術を要することもある。
Saturday night palsy(土曜の夜の麻痺)

不自然な姿勢で上腕の外側を圧迫すると、比較的短時間でも橈骨神経麻痺を生じる。土曜日の夜に酔って上腕を圧迫したまま寝てしまい、翌朝麻痺に気づいたりすることから、このように呼ばれている。

手根管症候群

病態のポイント

  • 手関節掌側の屈筋支帯によって形成される手根管を通る正中神経が圧迫されて発症する。
  • キーボード操作や振動する道具の長時間の使用など、手首を伸ばしたまま力を入れる動作によって、発症のリスクが高くなる。
  • 手をよく使う人(屈筋腱腱鞘炎)だけでなく、橈骨遠位端骨折による変形、透析患者(アミロイドの沈着)、更年期や妊娠中~出産後の女性にも起こりやすい。
正中神経を圧迫する靭帯(屈筋支帯)

症状・診断

  • 母指、示指、中指、環指の橈側までの掌側に、知覚異常しびれ痛みがあり、母指球筋の萎縮・麻痺がみられる。
  • ティネル様徴候の有無や手関節屈曲テスト神経伝導速度の計測などによって診断する。
手根管症候群の症状と診断

治療方法

  • 痛みがひどい場合や、筋萎縮・筋力低下が認められる場合は、手術の適応となる。内視鏡下または直視下で、正中神経を圧迫している屈筋支帯を切り離す。
手根管開放術
  • 手関節の手のひら側の皮膚に、直視下でS字状に約3~4㎝の切開を加える。内視鏡下の場合は、1㎝弱程度の切開を2か所加える
  • 皮膚の下にある屈筋支帯を切開すると、正中神経が現れる
  • 屈筋支帯を神経に沿って切開し、正中神経への圧迫がなくなったことを確認して、皮膚を縫合する
  • 創が落ち着くまで3週間程度、患部を包帯等で固定して安静にする

フォルクマン拘縮

病態のポイント

  • 骨折などで筋膜内の出血量が多くなると内圧が上昇し、血行障害が起こる(コンパートメント症候群)。また、上腕骨顆上骨折で直接圧迫されて、阻血性変化を生じることもある。上腕骨顆上骨折後の併発が多い。
  • 前腕部の筋肉に血液が供給されなくなって軟部組織の壊死を生じ、前腕部の伸縮性がなくなる状態である。
フォルクマン拘縮による手関節と手の屈曲

症状

  • 初期症状としては、痛みがひどく、指を伸ばせなくなったり、前腕の腫脹手指のしびれが起こったりする。
  • 進行すると、手首や指が曲がったままになる。

治療方法

  • 初期のケースでは前腕の筋膜を切開し、コンパートメントの減圧を行う。また、骨折部での動脈の圧迫を取り除く。軟部組織が壊死すると不可逆的な拘縮になるおそれもあるので、迅速な対処が重要である。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

病態のポイント

  • 加齢や負荷のくり返しによって、手関節伸筋群の上腕骨付着部に変性や微小な断裂が生じて起こる。
  • いわゆるテニス肘だが、家事や大工仕事、パソコン入力など、手関節をよく使う人にもみられる。30~50代の女性に多い。
上腕骨外側上顆炎の発症部位

症状・診断

  • 手首を背屈する動作の際に、肘関節から前腕にかけて疼痛がある。安静時には痛みはない。

治療方法

  • 手を使う作業を控え、手関節や指のストレッチ抗炎症薬を含む湿布や外用薬テニス肘用サポーターやベルト短期間の消炎鎮痛剤などの使用による保存治療を行う。痛みが強い場合は局所への副腎皮質ステロイド注射を行うこともある。
  • 難治性の場合にはごくまれに、腱起始部を新鮮化、再縫着する手術を行うこともある。

ガングリオン

病態のポイント

  • 関節周辺や腱鞘近くにできる軟部腫瘤の一種。米粒大からピンポン玉くらいの大きさの腫瘤で、手や指に好発し、とくに手関節背側に多く、次いで手関節掌側によくみられる。 若い女性に多く、腫瘤本体は滑液の変性したゼリー状の液体で満たされている。
ガングリオンの好発部位

症状・診断

  • 通常は無症状だが、ときに軽度の疼痛がある。腫瘤が神経を圧迫すると、しびれ運動麻痺を起こすこともある。 臨床所見で診断が可能だが、他の腫瘍と鑑別困難な場合は、エコーMRI穿刺などによって診断を確定する。

治療方法

  • 症状がなければ経過観察する。大きくなる場合などは、穿刺して内容物を吸引する。再発をくり返す場合、疼痛が強い場合や美容上問題がある場合には、摘出することもある。

ばね指

病態のポイント

  • 屈筋腱と靭帯性腱鞘の間の炎症で腱鞘(一部は腱)が肥厚し、屈筋腱に滑動障害が生じる。母指・中指・環指に起こりやすい。
  • 原因は手指の酷使やスポーツで、妊娠中・産後・更年期の女性、糖尿病・リウマチ患者や透析患者などに多い。
  • 小児では、先天性の腱の肥厚で指が伸展できないものもある。
ばね指の弾発現象

症状

  • MP関節掌側に腫瘤を触れ、圧痛がある。おもに指の屈曲・伸展時に痛む。指を動かすと弾発現象がみられる。
  • 重症になると、PIP関節の屈曲拘縮を起こすこともある。

治療方法

  • 局所の安静や、腱鞘内ステロイド注射による保存療法を行う。ステロイド注射は改善することもあるが、再発も多い。
  • 改善しない場合やADL障害が強い場合は腱鞘切開術を行う。
  • 小児では就学前に手術をする場合が多い。

キーンベック病(月状骨軟化症)

病態のポイント

  • 月状骨が血行障害によって無腐性壊死を起こし、つぶれて扁平化する。月状骨への過剰な負荷が原因とも考えられている。
  • 手をよく使う職業に従事する青壮年期男性の利き手に多くみられるが、女性や高齢者にも発生する。
キーンベック病

症状

  • 月状骨の圧痛・腫脹、手関節を動かしたときの痛み掌背屈制限握力の低下などがみられる。

治療方法

  • 初期には、安静ギプス療法装具による固定などを行う。
  • 改善しない場合は、月状骨への血行再建術(血管束移植血管柄付骨移植など)や、尺骨の延長か橈骨の短縮によって月状骨への負荷を軽減する手術を行う。重症例では、月状骨を切除し、腱の一部を丸めて移植する腱球移植術や、手関節固定術近位手根列切除術などを行う。

ドゥケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

病態のポイント

  • 手関節を走行する短母指伸筋腱*1と長母指外転筋腱*2の腱鞘に炎症が起こり、腱鞘の狭窄が生じた状態である。
  • 手指を酷使する職業に従事する人、手を使うスポーツをする人、妊娠出産期や更年期の女性などに、よくみられる。
ドゥケルバン病

症状・診断

  • 母指基部から手関節橈側にかけて痛み腫脹圧痛がある。
  • 上記の症状とアイヒホッフテストによって診断される。

治療方法

  • 母指と手関節の外固定による局所の安静副腎皮質ステロイドの局注、非ステロイド性抗炎症薬の軟膏の使用などの保存療法を行う。保存療法では改善しない場合や、再発をくり返す場合などは、腱鞘切開術を行う。
  • *1短母指伸筋腱:母指を伸ばす働きをする
  • *2長母指外転筋腱:母指を広げる働きをする