第3章 主な消化器系疾患 小腸・大腸の病気 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章主な消化器系疾患
小腸・大腸の病気

代表的な消化器疾患について、看護現場で役立つポイントや検査、治療法などを、画像写真も交えて解説しています。

小腸腫瘍

現場で役立つポイント

どんな疾患・病態?

  • 悪性腫瘍:悪性リンパ腫、GIST、原発性小腸癌(腺癌)など。
  • 良性腫瘍:腺腫、過誤腫、脂肪腫、血管腫など。

検査と診断

身体症状
腫瘍が大きくなるまで無症状である。腸閉塞や穿孔などがみられる場合は悪性の可能性が高い。
内視鏡検査
カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡が有用である。

治療

  • 内視鏡による切除、外科手術などがある。
過誤腫:皮膜を有する良性腫瘍のこと。

感染性腸炎

現場で役立つポイント

  • 感染性腸炎は、下痢腹痛嘔吐発熱などの症状を示す。細菌、ウイルス、寄生虫・原虫が原因で発生する。
感染性腸炎の原因
  • 糞便検査で注意すべきは、便を採取後、時間が経過すると色調や反応が変化するため、すみやかに処理する。
  • 特に高齢者小児では、短時間で症状が悪化することがあるため、注意深く観察する。
原虫:単細胞からなる寄生虫で、顕微鏡でしか見ることができないほど小さい。

どんな疾患・病態?

  • 感染性腸炎は、病原菌の腸管への感染に伴い下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状が現れる。
  • 原因は細菌、ウイルス、寄生虫・原虫など。

検査と診断

身体症状
下痢の性状:便の色、におい、血便の有無。
腹痛、発熱など。
問診
最近の食事内容、患者背景、病歴など。
糞便検査
確定診断。抗菌薬を投与する前の検便が望ましい。
一般検査
血液検査、画像検査、内視鏡検査など。

治療法

  • 自然治癒するものも多く、対症療法で軽快する場合も多い。
対症療法
食事制限:激しい下痢で腹痛や嘔吐がある場合に行う。
輸液:脱水症状がある場合や食事ができない場合に行う。
薬物療法
止痢薬や腸管蠕動運動抑制薬(抗コリン薬など)は、原因菌を腸管内にとどめることになるので原則的に使用しない。
抗菌薬(ニューキノロン系、マクロライド系)を投与する。
投与期間を長引かせないことが大切である。
主な感染性腸炎の原因と症状、治療
感染性腸炎の患者背景

春から秋にかけては、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオなどが原因菌となることが多い。また、冬には乳幼児を中心にロタウイルスが検出されることが多い。
まれに、海外旅行や輸入食品、ペットとしての輸入動物などを経て赤痢菌やチフス菌、ランブル鞭毛虫を原因とする感染性腸炎がみられる。

薬剤性腸炎

現場で役立つポイント

  • 薬剤性腸炎の多くは抗菌薬の投与が原因であり、その他に抗癌薬非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)胃潰瘍治療薬などがある。
  • 問診で薬剤服用歴を調べることが重要となる。

どんな疾患・病態?

  • 薬剤が原因で起こった腸炎を薬剤性腸炎という。
  • 急性出血性腸炎、偽膜性腸炎が典型的である。

検査と診断

身体症状
急性出血性腸炎では服用から1週間以内に出血が起こる。
鑑別検査
血液検査、糞便検査など。
内視鏡検査
確定診断に有用。

治療

  • 原因薬剤の中止・変更を行う。
  • 止痢薬、腸管運動抑制薬などは使用しない。
偽膜性腸炎:腸粘膜に偽膜が形成される。原因菌はクロストリジウム・ディフィシル菌が多い。

虫垂炎

現場で役立つポイント

  • 虫垂炎は、急性腹症(激しい腹部疼痛を訴える)の中で最も多い疾患であり、進行すると腹膜炎を引き起こす。
  • 触診によるマックバーネの圧痛点ランツの圧痛点を知っておく。
急性虫垂炎の圧痛点
  • さまざまな画像検査で診断する(図表:急性虫垂炎(超音波画像))。
  • 薬物療法で症状が回復しても、再発する可能性がある。腹膜炎を合併すると重症化するため、早めに受診するよう指導する。
急性虫垂炎
圧痛点:触診の際、腹部を圧迫したときに著しく痛みを訴える部分。

どんな疾患・病態?

  • 虫垂炎は、虫垂入口部が閉塞され、それに細菌感染が加わった急性炎症をいう。炎症が進行すると腹膜炎となり、さらに汎発性腹膜炎となる。
  • 慢性虫垂炎は急性虫垂炎が慢性化したものである。
  • 虫垂炎の組織学的な分類は、以下のとおりである。
虫垂炎の組織学的分類
糞石:糞便が長時間停滞して石のように硬くなったもの。

検査と診断

身体症状
上腹部の鈍痛、悪心・嘔吐で始まり、右下腹部に痛みが移動する。そのほか食欲不振、便秘など。
発熱もあるが、高熱の場合は虫垂炎でないことがある。
高齢者や妊婦では、典型的な症状を示さない場合があるので注意が必要である。
触診
回盲部を圧迫したときに圧痛がある。ただし、個人差が大きいため画像検査が必須となる。
血液検査
白血球数の増加がみられる。
X線検査
虫垂内にガス像などが認められる。盲腸の位置を把握する上で重要。
超音波検査
内腔の滲出液や腫大した虫垂壁像、糞石が描出される。
CT検査
虫垂の腫大、糞石、腹水、イレウスなどの診断に有用。

治療法

手術療法
急性虫垂炎は穿孔の危険があるため、開腹手術による虫垂切除術を行う。腹腔鏡下切除術を行う場合もある。
緊急手術に際して、術前投薬や剃毛、バイタルサインの測定などをすみやかに行う。
薬物療法
軽症例では、抗生物質や鎮痛薬などによる保存的治療を行う。

腸閉塞症 (イレウス)

現場で役立つポイント

  • 腸閉塞症(イレウス)の中でも絞扼性イレウスは緊急手術を必要とする。
  • 腹部単純X線検査、超音波検査では特徴的な所見が認められる。
腸閉塞(イレウス)
  • イレウス管を留置した状態では、排液量および色、血液混入の有無、尿量、排ガスの有無、バイタルサインなどに注意する。
  • 喀痰が出にくいため、肺炎などの呼吸器疾患の合併に注意する。
鏡面像:niveau。液体と気体によって水平面が形成される。

どんな疾患・病態?

  • 腸閉塞症(イレウス)とは、何らかの原因で腸管内容物の通過障害が起こる状態をいう。腸管の通過障害により、腸管内容物が停滞し、腹痛や嘔吐が起こる。
  • イレウスは、その原因によって機械的イレウスと機能的イレウスに分けられる。
イレウスの分類

検査と診断

身体症状
腹痛(絞扼性イレウスでは激しい痛み)、嘔吐、腹部膨満感。
腸雑音:機能的イレウスでは減弱、機械的イレウスでは亢進する。
X線検査
特徴的な所見として、立位写真で、鏡面像(niveau)が多数みられる。
超音波検査
特徴的な所見として、拡張した腸管がうねる(keyboard sign)。
造影CT検査
閉塞性イレウスと絞扼性イレウスの鑑別に有用。閉塞部の診断が行える。
腸重積:腸管(回腸など)がその先の腸管に入り込み、血流が滞る。

治療法

手術療法
絞扼性イレウスであれば、ただちに緊急開腹手術を行う。
保存療法
絶食・絶飲:イレウスの疑いがあれば、ただちに行う。
腸管減圧療法:経鼻的に胃管あるいはイレウス管(ロングチューブ)を挿入し、吸引・排液して、腸管内圧を減少させる。
輸液療法:消化液の吸引・排液により脱水状態となるため、水分と電解質を補う。
薬物療法:腹膜炎を防ぐために、抗生物質を投与する。
閉塞性イレウスの鎮痛に対してはブスコパン、ソセゴンを用いる。
麻痺性イレウスに対してはプロスタグランジン製剤などを用いる。
食事指導
再発を防ぐには、消化の悪い食品を避け、ゆっくり食べることを心がけ、便通を改善させることが大切なことを説明する。

虚血性腸炎

現場で役立つポイント

  • 虚血性腸炎とは、一般的に狭窄型と一過性型のタイプを指す。大半が一過性型であり、予後は良好である。
  • 症状は①から順に現れることが多い。
  • 急激な腹痛。
  • 水様性下痢。
  • 鮮明な血便。
  • 再発は10%程度。再発予防には消化のよい食事をとり、規則正しく排便をするよう患者指導を行う。

どんな疾患・病態?

  • 虚血性腸炎とは、腸管の血流障害により引き起こされる病態で、3つに分類される。

一過性型:腸管に潰瘍を形成する。
狭窄型:潰瘍瘢痕により腸管狭窄を呈す。
壊死型:腸管は壊死を呈す。穿孔により腸内容物が腹腔にもれて死に至る。

  • 虚血性腸炎の原因は、以下のとおりである。

血栓・塞栓、動脈硬化 、血管攣縮、循環不全。すなわち高血圧、動脈硬化、糖尿病などがある高齢者に多い。
便秘や排便時のいきみなど。

検査と診断

身体症状
急激な腹痛、水様性下痢、鮮明な血便が特徴的。
問診
基礎疾患の有無、抗生物質内服の有無(出血性大腸炎との鑑別に必要)を確認する。
内視鏡検査
下行結腸、左側結腸に好発する。
特徴的な画像として、縦走潰瘍、びらんなどがある。
生検は、急性期の鑑別診断に重要である。
注腸X線検査
特徴的な画像は、拇 (母)指圧痕像(腸壁の血腫形成、浮腫、thumb printing sign)。
糞便検査
感染性大腸炎との鑑別に必要。

治療法

手術療法
壊死型は、発症から24時間以内に穿孔する危険があるため、緊急開腹手術を行う。早期ならば、血栓溶解薬による治療が可能。
保存療法
一過性型、狭窄型。軽症ならば外来治療が可能。
絶食・絶飲・補液:腹痛や血便が消失するまで行う。
薬物療法:鎮痛薬を投与。2次感染の疑いがある場合は、広域スペクトラムの抗生物質を投与する。
血管攣縮:一過性に血管が収縮して虚血が起こった状態。

クローン病

現場で役立つポイント

  • 大腸および小腸に慢性炎症または潰瘍が起こる原因不明の疾患を炎症性腸疾患(IBD)といい、クローン病もこのIBDの1つである。10~20代に好発する。
  • 薬物療法では、ステロイド薬は長期使用で骨粗鬆症のリスクが高くなる。免疫抑制薬は効果が出るまでに1~3カ月かかる。

どんな疾患・病態?

  • 口腔~肛門のどの消化管にも炎症や潰瘍が起こり、しばしば肉芽腫が形成される。潰瘍が深部に達すると、内瘻や外瘻が形成される。
  • 内瘻:腸管と他の消化管がつながる。腸-腸、腸-膀胱など。
  • 外瘻:腸管が皮膚とつながる。難治性。肛門周囲に多い。

検査と診断

身体症状
腹痛、下痢、発熱、全身倦怠感、体重減少など。
腸管の合併症:瘻孔、狭窄、膿瘍など。
腸管外の合併症:関節症状、虹彩炎、結節性紅斑など。
血液検査
炎症の有無、貧血の有無、低栄養状態などを把握。
注腸造影検査
特徴的な所見として、縦走潰瘍(腸管の長軸方向に4 ~ 5 cm以上の長さを有する潰瘍)と敷石像(縦走潰瘍とその周辺の潰瘍に囲まれた大小の粘膜隆起)がみられる。
不整形の潰瘍、多発アフタ(粘膜の小潰瘍)など。
内視鏡検査
生検で非乾酪性肉芽腫が認められれば診断確定。
瘻孔:組織や臓器に生じた小さな管状の穴。

治療法

手術療法
根治療法ではなく瘻孔、狭窄、膿瘍などが対象。
栄養療法
経腸栄養:クローン病治療の基本となる。
完全中心静脈栄養:高度な合併症、経腸栄養が不可の場合。
薬物療法
栄養療法で効果がない場合や重篤な場合に併用する。
寛解導入時:5-ASA製剤を投与。他にステロイド薬など。
寛解維持:免疫抑制薬、抗悪性腫瘍薬(代謝拮抗薬)の6-MPを投与する(わが国では一部を除き保険適応外)。
重篤な難治性外瘻に対して、抗腫瘍壊死因子(TNF)-α抗体のインフリキシマブを用いることもある。
食事療法
低脂肪・低残渣などの食事の指導を行う。
※ クローン病は厚生労働省が指定する特定疾患であり、医療費助成制度が受けられる。
残渣:残留物。

潰瘍性大腸炎

現場で役立つポイント

  • 潰瘍性大腸炎炎症性腸疾患(IBD)の1つであり、小児から高齢者まで発症する。原因は不明である。
  • 繰り返す下痢または粘血便腹痛が特徴的である。
  • 画像検査で特徴的な所見がみられる。
潰瘍性大腸炎(内視鏡画像)
  • 薬物治療は長期にわたるため、患者さんが自己中断しないよう指導することが求められる。
  • 全大腸炎(図表:潰瘍性大腸炎の分類を参照)で10年以上経過すると、大腸癌のリスクが高くなるため、必ず定期検査を受けるよう指導する。

どんな疾患・病態?

  • 潰瘍性大腸炎は、大腸および小腸に慢性炎症または潰瘍が起こる炎症性腸疾患の1つであり、表のとおり分類される。
潰瘍性大腸炎の分類

検査と診断

身体症状
繰り返す下痢あるいは粘血便、腹痛が特徴的。そのほかに発熱、全身倦怠感、体重減少、脱水症状など。
腸管外の合併症:関節症状、虹彩炎など。
血液検査
炎症反応を調べる。
X線検査
重症例では、合併症である中毒性巨大結腸症(大腸が腫れ、腸内毒素が体中に回る)の有無を調べる。
注腸造影検査
直腸より連続するびまん性のびらん、潰瘍、偽ポリポーシス、ハウストラ(結腸膨起)の消失などを示す。
内視鏡検査
直腸から連続するびまん性のびらん、潰瘍、易出血性の粘膜などを示す。
ハウストラ:結腸の拡張、膨起。

治療法

手術療法
中毒性巨大結腸症、大量出血、穿孔、薬物療法で効果がない場合などに行う。
薬物療法
5-ASA製剤を経口あるいは注腸投与する。
ステロイド薬を、経口あるいは注腸、経静脈的に投与する。
難治性潰瘍性大腸炎には免疫抑制薬などを投与する。
白血球除去療法
体外循環をまわしフィルターを用いて、炎症のもとになる白血球や顆粒球を取り除く方法である。
ステロイド無効の重症例などに用いられる。
生活指導
精神的および身体的ストレスによってしばしば再燃・増悪するため、生活管理とストレスを軽減させることが重要となる。
※ 潰瘍性大腸炎は厚生労働省が指定する特定疾患であり、医療費助成制度が受けられる。
再燃・寛解を繰り返す
再燃:症状が再び現れること。

過敏性腸症候群

現場で役立つポイント

  • 過敏性腸症候群(IBS)では、腹痛を伴う下痢便秘が続くが、内視鏡検査などの異常はみられない。
  • 下痢型便秘型混合型(下痢型と便秘型)がある。
  • ストレスにより腸管の運動異常が起こる(脳腸相関)。
IBSと脳腸相関
  • 治療では、患者さんとの信頼関係を築き、症状の改善には時間がかかることを理解してもらう。

どんな疾患・病態?

  • 過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛を伴う下痢や便秘が続くが、器質的な異常がみられない状態を示す機能的疾患である。
  • ストレスによる脳腸相関の異常、食事による消化管の運動異常など、さまざまな要因が関与している。

検査と診断

身体症状
腹痛を伴う下痢あるいは便秘。
Rome Ⅲ診断基準*があるが、一般臨床において症状の持続期間は厳密ではない。
IBSの診断基準(RomeⅢ診断基準)
問診
精神症状、生活スタイルなどを詳しく調べる。
血液検査、便潜血検査
血算、CRPなど。
Rome 診断基準を参照。

治療法

生活指導
規則正しい生活を指導する。
食事指導
高脂肪・高蛋白の食品を避け、ゆっくり食事をするよう指導する。
薬物療法
消化管症状の改善:運動機能改善薬、抗コリン薬。
下痢、便秘の改善:止痢薬、緩下剤。
必要に応じて、自律神経作用薬や抗不安薬、抗うつ薬を用いることもある。
CRP:C-反応性蛋白。急性炎症のマーカーとして用いる。

S状結腸軸捻転症

現場で役立つポイント

  • S状結腸軸捻転症は、発生頻度は低いものの重症化し、死に至る場合もあるため、注意すべき疾患である。
  • 高齢者向精神薬を常用している人に好発する。

どんな疾患・病態?

  • S状結腸軸捻転症は、腸管膜を中心に捻転して通過障害や血行障害による出血、壊死、穿孔などが起こる疾患である。

検査と診断、治療

身体症状
腹痛、腹部全体にわたる膨満感、便秘。
循環障害を伴うと腹痛、腹水の貯留、腹膜刺激症状などが起こる。
腹部X線検査、CT検査
確定診断には必要。
外科手術
腸管の壊死、腹膜炎を伴う場合、内視鏡的治療が困難な場合は緊急手術となる。
内視鏡による整復
腸管の壊死や腹膜炎を伴わない場合、内視鏡の吸引によるS状結腸内の減圧で症状が軽減される。

大腸憩室症

現場で役立つポイント

  • 憩室とは、消化管の壁の一部が管腔の外側に袋状に突出したものをいう。とくに結腸に多い。
  • 大腸憩室は画像検査により診断される。
大腸憩室症
  • 治療の対象となるのは、憩室炎もしくは憩室からの出血がみられる場合である。
  • 腹痛を伴う右側型の憩室は、急性虫垂炎と間違えやすいので注意する。一般に憩室炎のほうが、腹痛や悪心・嘔吐が軽い。
管腔:管の内側の空洞を指す。

どんな疾患・病態?

  • 大腸憩室は、大腸の一部が漿膜側に突出したものである。この憩室に炎症が起こると憩室炎となる。その場合、憩室からの出血を伴うことがある。
大腸憩室の位置
  • 発生部位には右側型、左側型、両側型がある。右側型が多いが、高齢患者の増加によって、左側、両側型も増えている。
  • 大腸憩室の原因は以下のとおり。

結腸の内圧上昇。その誘因として結腸の攣縮、繊維成分の少ない食事、便秘などがあげられる。
加齢とともに腸管壁が弱まることによる。

検査と診断

身体症状
特有の症状はない。
憩室炎を起こすと腹痛、下腹部に限局した圧痛、発熱、排便異常(便秘、下痢)、腹部膨満感などが出現する。
便潜血検査
しばしば陽性となる。
注腸X線検査
憩室の有無や憩室特有の所見を確認する。
嚢状の突出像がみられる。
憩室炎があれば、腸管の狭窄、変形などがみられる。
内視鏡検査
粘膜に円形または楕円形のくぼみを認める。
憩室炎を合併している場合は、出血を認めることがある。

治療法

  • 自覚症状がない場合は原則として積極的な治療はせず、食事指導などを行う。
  • 症状がある場合、腹痛の有無、出血の程度によって治療法が異なる。
食事指導
便秘あるいは下痢、腹部膨満感などがある場合は、腸管運動を刺激しない食事をとる。
薬物療法
憩室炎:急性期は禁飲食とする。抗生物質を投与する。
排便障害や腹部膨満感:運動機能改善薬、酸化マグネシウムなど。
内視鏡的止血術
憩室より出血がみられる場合に行う。
手術療法
抗生物質の効果がない場合、穿孔して腹膜炎や膿瘍、腸閉塞を起こしたり、大出血を繰り返したりする場合は手術を行う。
腹部膨満感:腹部が張った感じがすること。

大腸ポリープ

現場で役立つポイント

  • 大腸ポリープが最も発生しやすい。
大腸ポリープ
  • 大きなポリープの場合、内視鏡的切除は入院して行う。その場合、翌日の検査などで問題がなければ退院となる。患者さんには下記を説明する。

数日後に出血や穿孔が認められることがある。血便が出たら、ただちに受診すること。
退院後1週間は、アルコールや刺激物の摂取を避け、激しい運動も控える。

どんな疾患・病態?

  • 大腸ポリープは、大腸上皮より生じる隆起性病変のこと。組織型より腫瘍性と非腫瘍性に分けられる。
大腸ポリープの分類

検査と診断

身体症状
特有の症状はない。
便潜血検査
大腸癌検診の際に陽性となることが多い。
注腸X線検査
病変の部位や大きさを確認する。
内視鏡検査
ポリープの色調変化や形状により、悪性の予測もある程度可能。生検により確定診断を行う。
拡大内視鏡を用いることによって質的診断、超音波内視鏡で深達度診断が可能となる。

治療法

内視鏡治療
ホット・バイオプシー法:5 mm以下が対象となる。
ポリペクトミー法:隆起型の病変が対象となる。
内視鏡的粘膜切除術(EMR):平坦な病変が対象となる。
大きなポリープは入院治療となる。

大腸癌

現場で役立つポイント

  • わが国において、大腸癌は増加傾向にあり、診断には内視鏡検査が有用である。
大腸癌(内視鏡画像)
  • 遺伝性大腸癌には家族性大腸腺腫症(FAP)、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)がある。
  • 術後は、排尿障害を起こしたり、ストーマ(人工肛門)の造設に戸惑ったりする患者さんに対して、細やかなフォローアップが求められる。
家族性大腸線腫症(FAP):大腸腺腫性ポリポーシスともいう。若年より大腸癌が発生する。

どんな疾患・病態?

  • 大腸癌は、結腸あるいは直腸に発生する上皮性悪性腫瘍である。
  • 大腸癌の発生には2 つの説がある。

adenoma-carcinoma sequence:腺腫が発生し、それが癌化するという説。
denovo:腺腫を経ないで、正常な大腸上皮から直接発癌するという説。

検査と診断

身体症状
早期大腸癌:ほとんどない。
進行大腸癌:血便、腹痛、便通異常など。
便潜血検査
大腸癌検診の目的で行われ、陽性が認められることが多い。
注腸X線検査
病変の位置や形態、深達度、腸の狭窄の程度などを調べる。
内視鏡検査
肉眼形態、腫瘍の組織像などを調べる。生検で病理学的診断を行う。
超音波検査・CT検査・MRI検査
病変の広がりを調べる。肝臓や肺への転移が多い。
腫瘍マーカー
CEA、CA19-9。

治療法

  • 大腸癌の治療法は、早期癌と進行癌とでは異なる。
内視鏡治療
内視鏡的粘膜切除術(EMR):早期大腸癌でリンパ節転移がなく、20 mm 以下の場合に行う。
ポリペクトミー法:隆起型病変が対象となる。
腹腔鏡下手術
早期癌でも内視鏡治療が困難な場合に行われる。
開腹手術
進行癌が対象となる。
結腸癌:結腸切除とリンパ節の郭清。術後の日常生活への支障はほとんどない。
直腸癌
肛門括約筋温存術:肛門を残して排便機能を温存する。
自律神経温存術:排尿機能・生殖機能を支配する自律神経を残す。
放射線療法
手術できない場合に行う。骨盤内の腫瘍による痛みをやわらげる目的で行うこともある。
化学療法
転移がある場合や手術できない場合、手術後の補助化学療法として行う。
フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチンなどの抗癌薬のほか、ベバシズマブやセツキシマブ、パニツムマブなどの分子標的薬があり、さまざまな組み合わせがある。
自律神経:自分の意志に関係なく働いている神経のこと。

痔疾患

どんな疾患・病態?

痔核
直腸下端部から肛門にかけて存在する静脈叢が瘤状になったもの。いわゆるいぼ痔排便時に出血があるが、痛みはない。排便時にいきむと、痔核が肛門の外に脱出する。
痔瘻
歯状線にある小さなくぼみの肛門小窩に便が入り、細菌感染により、肛門腺から肛門周囲の皮膚に瘻孔が生じる状態をいう。
裂肛
肛門の出口付近の損傷で、いわゆる切れ痔

検査と診断

問診触診
便通、疼痛や出血の有無、生活習慣などを確認する。
診察時には、下半身にタオルをかけたり、カーテンでしきるなど、患者さんの羞恥心をくみ取った配慮を行う。

治療法

痔核
ステロイドホルモン薬含有の坐薬や軟膏、手術などがある。
痔瘻
自然治癒はしない。手術治療が原則となる。
裂肛
食生活を改善する。また、排便力をつけるため腹筋を鍛える。