第3章 主な消化器系疾患 食道の病気 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第3章主な消化器系疾患
食道の病気

代表的な消化器疾患について、看護現場で役立つポイントや検査、治療法などを、画像写真も交えて解説しています。

胃食道逆流症 (GERD)

現場で役立つポイント

  • 胃食道逆流症(GERD)は食道内への胃内容物の逆流によって引き起こされる症状、合併症の総称である。
  • 内視鏡検査がGERDの確定診断には必須である。
胃食道逆流症(内視鏡画像)
  • 内視鏡所見が軽症であっても、胸やけなどの自覚症状が強い患者にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)を用いた薬物療法が必要である。
  • 近年、食生活の西洋化、H.pylori菌感染の減少による胃酸分泌量の増加などにより、日本人のGERD患者が増えている。

どんな疾患・病態?

  • 胃内容物の食道内逆流によって起こる煩わしい症状あるいは合併症があるものを胃食道逆流症(GERD)と定義されている。
  • GERDには逆流性食道炎やBarrett食道のほか、逆流関連の慢性咳嗽などの食道外疾患も含まれる。

検査と診断

身体症状
胸やけ、呑酸などの逆流症状がある。
内視鏡検査
食道粘膜傷害が認められればGERDである。
明らかな粘膜傷害がなくても、逆流症状があればGREDと診断される。
食道pHモニタリング
症状と逆流の関連をみる。

治療法

生活指導
大量摂食、高脂肪食を控える。
食後すぐに横にならない。
腹部を圧迫する衣服を着ない。
薬物療法
プロトンポンプ阻害薬(PPI)を第1選択薬とする。
手術療法
生活改善および薬物療法で改善がみられない場合に行う。
内視鏡手術も行われる。
咳嗽:医学用語で咳のこと。

Barrett食道

現場で役立つポイント

  • Barrett食道は後天的なものであり、慢性的な逆流性食道炎を繰り返すことで発生する。
Barrett食道(内視鏡画像)

long segment Barrett’s esophagus(LSBE):円柱上皮が胃食道接合部から全周性に3cm以上認められるもの。
short segment Barrett’s esophagus(SSBE):3 cm に満たないもの。

  • 逆流性食道炎食道裂孔ヘルニアの合併率が高い。
  • 内視鏡治療後もBarrett粘膜が残っていることがあるため、6カ月ごとの検査を受けるよう患者を指導する。

どんな疾患・病態?

  • 食道の粘膜は扁平上皮であり、胃の粘膜である円柱上皮とは異なる。しかしBarrett 食道は、食道下部の粘膜が胃から連続して円柱上皮に置き換えられている状態をいう。

検査と診断

身体症状
特有の症状はない。逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアを合併している場合に胸やけ、呑酸がみられる。
内視鏡検査
生検、色素内視鏡、拡大内視鏡などで診断する。
上皮のタイプによって分類される。
胃底腺型上皮:胃底腺粘膜に類似。
移行型上皮:胃噴門腺あるいは偽幽門腺に類似。
特殊円柱上皮:腸上皮化生に類似。食道癌の前段階と考えられるため、臨床で問題になるのはこのタイプ。

治療法

  • 発癌予防(円柱上皮の除去、再扁平上皮化の促進)が目的。
内視鏡治療
内視鏡的粘膜切除術(EMR)。
アルゴンプラズマ凝固法(APC)。
手術療法
噴門形成術など。
薬物療法
胃酸分泌を抑えて逆流性食道炎の鎮静化を目的として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を第1選択薬とする。
腸上皮化生:胃粘膜が腸粘膜に置き換わること。

食道アカラシア

現場で役立つポイント

  • 食道アカラシアの代表的な症状は嚥下障害である。
X線造影検査での分類
  • 胃食道逆流症(GERD)と症状が類似しているため、注意が必要である。
  • 食道の運動機能そのものを回復させる治療法はない。LES圧を低下させて、食べ物を通過しやすくさせる目的で治療を行う。
  • 症状の長期化はQOL低下を招くだけでなく、癌発生の頻度が高くなる。患者さんに早期治療の重要性を説明し、理解してもらうことが大切である。
QOL:Quality of Life。生活の質。

どんな疾患・病態?

  • 下部食道括約部(LES)は、胃の内容物が食道へ逆流するのを防いでいる。食道アカラシアは、LESの弛緩不全と食道体部の運動異常から食べ物が常に食道に停滞する病態をいう。

検査と診断

身体症状
嚥下障害:固形物に比べ液体が飲み込みにくい。
就寝時の逆流、胸やけ(胃食道逆流症に類似)。
胸痛:循環器疾患や呼吸器疾患と類似している。
胸部X線検査、食道造影検査
造影検査では硫酸バリウムを使用する。
内視鏡検査
食道内腔の動き、狭窄の通過性と通過時疼痛の有無などをみる。
アカラシアに合併した食道癌は、拡張部にできる。
食道内圧検査
LES の長さとLES圧を測定する

治療法

薬物療法
Ca拮抗薬:食前服用。LES 圧低下作用。
硫酸イソソルビド:消化管平滑筋の弛緩作用。
バルーン拡張術
LESにバルーンを留置し、バルーンを拡張させ平滑筋に一部亀裂を生じさせてLES 圧を低下させる。
手術療法
筋切開術と噴門形成術。

食道・胃静脈瘤

現場で役立つポイント

  • 食道・胃静脈瘤(右図)の原因の約90%が肝硬変である。
食道静脈瘤(内視鏡画像)
  • 静脈瘤の破裂によって大出血を起こすと、生命の危険があるため、症状が現れたら素早い対応が必要である。肝硬変患者には、頻回に及ぶ内視鏡検査に対して、必要性を理解してもらうことが大切である。

どんな疾患・病態?

  • 静脈瘤とは、静脈が腫瘤状に拡張したものである。
  • 食道・胃静脈瘤の原因は以下のとおりである。

肝硬変(原因の約90%を占める)
特発性門脈圧亢進症
肝静脈閉塞症・門脈塞栓症
日本住血吸虫症 など

  • 肝硬変になると門脈血流が阻害される(門脈圧亢進症)ために、血液を送る側副血行路ができる。食道・胃静脈は側副血行路として使われ、次第に静脈瘤が形成される。静脈瘤の症状はなく、静脈瘤の破裂により吐血・下血、黒色便がみられる。

検査と診断

身体症状
特にない。
内視鏡検査
占拠部位、形態、基本色調、発赤、出血、粘膜所見をみる。
形態が大きいほど、破裂の危険が高くなる。
発赤所見(R-C サイン)のある場合は注意が必要。
腹部超音波検査造影CT検査

治療法

  • 出血を防ぎ、破裂させないことを治療目的とする。
内視鏡治療
内視鏡的硬化療法(EIS)、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)。
バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO):一時止血後の胃静脈瘤に対し行う。
血管内治療(IVR)
経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)、経皮経肝的塞栓術(PTO)は内視鏡治療が困難な症例で行う。
手術療法
内視鏡治療やIVRが困難な症例で行う。
薬物療法
門脈圧を低下させる目的で投与する。出血の緊急時にはバソプレシンを注射する。β遮断薬、硝酸塩薬の使用では心不全や重篤な副作用があるので、投与禁忌に注意する。
側副血行路:閉塞した血管の周囲に形成される、細い血管のバイパス。

Mallory-Weiss 症候群

現場で役立つポイント

  • Mallory-Weiss症候群(下図)の主症状は吐血下血である。
Mallory-Weiss症候群
  • 大出血が発生したときは出血性ショックを引き起こすことがあるので、注意深く看護する。
  • 高齢者や基礎疾患がある患者では、一時止血後に大出血が起こりやすいので注意する。
  • 止血術後、絶食期間中の患者は、食欲や空腹感によるストレスを抱えることが多いため、食事に関する配慮が必要である。

どんな疾患・病態?

  • Mallory-Weiss 症候群は、嘔吐反射などによる急激な腹腔内圧の上昇によって起こる。胃噴門部近傍に裂創を生じ、消化管出血をきたす。腹腔内圧が上昇したときに、胃の一部が食道内に脱出し、繰り返し嘔吐するうちに、吐血、下血がみられるようになる。
  • 急激な腹腔内圧の上昇が起こる原因は、以下のとおり。

飲酒後の頻回の嘔吐。
食中毒や消化性潰瘍に伴う嘔吐、咳やくしゃみ、薬の副作用による嘔吐。
妊婦のつわり。

裂創:皮膚が裂けてできた傷。

検査と診断

身体症状
嘔吐に伴う吐血・下血。
内視鏡検査
裂創:食道胃粘膜接合部の胃側に多くみられる。
活動性出血の有無などを調べる。

治療法

治療方針
自然止血が多い。出血が続く場合は、内視鏡的止血を行う。
内視鏡的止血術
クリップ法、エタノールや高張食塩水+エピネフリン液(HSE)の局注療法で止血する。
止血が確認されたら、絶食後、酸分泌抑制薬や粘膜保護薬などを投与して保存的治療を行う。
生活指導
飲酒や多飲、過食などが原因の場合はアルコールの摂取量を制限したり、暴飲暴食をしないなどの食生活の指導を行う。
高張食塩水+エピネフリン液(HSE):HSEを局注して血管を収縮させて止血する。

食道癌

現場で役立つポイント

  • 食道癌のなかでも日本人に多い扁平上皮癌の危険因子は過量の飲酒喫煙である。
食道癌(内視鏡画像)
誤嚥性肺炎:誤嚥により異物が気管に入り肺炎を生じたもの。

どんな疾患・病態?

  • 食道癌ができる範囲は、頸部食道、胸部食道、腹部食道の広範囲にわたる。日本人では、粘膜表面の扁平上皮細胞から発生する「扁平上皮癌」がほとんどを占める。
  • 60~70歳代の男性に多い。
  • 欧米では、腸上皮から発生(Barrett食道由来)する腺癌が多い。

検査と診断

身体症状
嚥下時の違和感、つかえ感、嚥下困難。
その他に胸痛、嗄声、体重減少など。
内視鏡検査
ルゴール染色後、生検を行う。超音波内視鏡は深達度診断に有用である。
上部消化管造影検査
深達度や占居部位の診断に有用である。
CT検査
進行癌における進行度判定、転移診断に不可欠。

治療法

早期癌
食道粘膜内に癌がとどまり、リンパ節転移がない。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が適応となる。
手術療法
癌の発生部位によって治療法が異なる。
開胸・開腹手術による食道切除。
頸部・胸部・腹部の3領域のリンパ節郭清。
術後、食道の代わりをする再建臓器は胃が多く、再建ルートは胸骨後が多い。
化学療法
抗癌薬のシスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)の併用投与が主流。さらに、ドセタキセルを併用することもある。
副作用として下痢、悪心・嘔吐、食欲不振などがある。特に激しい下痢、脱水症状など重篤な副作用には注意する。
放射線療法
化学療法(シスプラチン+5-FU)と組み合わせた化学放射線療法の治療成績が向上している。
副作用には、以下のものがある。
放射線による影響:食道炎、肺障害、皮膚障害など。
化学療法による影響:悪心・嘔吐、骨髄抑制、腎機能障害など。
晩期(治療後数カ月~数年)に起こる障害:胸水、肺炎、食道穿孔など。
嗄声:しゃがれ声。
骨髄抑制:白血球減少による感染、血小板減少による出血などが起こる。