第2章 主な代謝・内分泌疾患 甲状腺疾患 ~ ナースフル疾患別シリーズの看護師基礎知識 ~

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第2章主な代謝・内分泌疾患
甲状腺疾患

甲状腺機能亢進症

異常の概要

  • 視床下部から下垂体への TRH分泌、下垂体から甲状腺へのTSH分泌を受けて甲状腺ホルモン分泌が起こるが、そのしくみのどこかに異常が生じ、甲状腺の機能が亢進し、甲状腺ホルモン分泌が過剰になった状態を甲状腺機能亢進症という。
  • 甲状腺ホルモンは、全身の臓器の働きにかかわり、代謝調節を幅広くつかさどっている。そのため、甲状腺ホルモンの分泌亢進が起きると、その影響は、全身に波及する。
  • 甲状腺機能亢進症のうち、甲状腺自体の疾患による場合は自己免疫により起こるケースと炎症により起こるケースがあり、複合的な発症のしかたをするケースもある。
■甲状腺ホルモンの主な作用

バセドウ病

病態
バセドウ病は自己免疫疾患の1つである。
自己抗体である抗TSH受容体抗体が甲状腺のTSH受容体を刺激することにより、甲状腺ホルモンの産生が亢進する。
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症の大半を占める。
発病は、20~30歳代の女性に圧倒的に多い。
発病には遺伝的要因が存在しているが、実際に発病に至る誘因は、はっきりしていない。
甲状腺クリーゼ

バセドウ病などの甲状腺機能亢進症の治療が不適切な状態にある場合、けがや手術、感染、過剰なストレスなどが誘因となり、高熱や心悸亢進、ふるえ、悪心・嘔吐、下痢などの強い症状が、急激に現れることがある。ひどければ、意識混濁や循環不全なども生じ、危険な状態になる。これを甲状腺クリーゼという。発生頻度は低いが、発症した場合は一刻を争うケースも十分にあるので、迅速かつ適切な対応が必要である。

■バセドウ病の主な症状
■バセドウ病眼症
症状
全身の代謝にかかわっているため、発病するとさまざまな症状が現れる。
眼球突出、びまん性甲状腺腫、頻脈が典型的な症状(メルゼブルグ3徴)とされるが、発病当初からそれらが出そろうわけではない。ただし、びまん性甲状腺腫(外見的には首のはれ)は、程度の差はあるが、ほとんどの患者にみられる。
眼球突出は、適切な治療が行われず重症化すると、複視が生じる、閉眼できなくなる(兎眼)、角膜潰瘍を生じるなどの症状が現れる危険性がある。

プランマー病

病態
甲状腺ホルモンをつくる性質のある良性の腫瘍が甲状腺にできることにより、発病する。
甲状腺は TSHのコントロールを受けるが、この腫瘍はその制御を受けることなくホルモンを産生する。
腫瘍からのホルモン生産が多くなると、正常甲状腺組織からのホルモン産生は抑制されるため、甲状腺機能亢進状態は軽度にとどまることが多い。
症状
バセドウ病と同様の甲状腺機能亢進症状が現れる。
眼球突出は現れない。

亜急性甲状腺炎

病態
甲状腺のウイルス感染が原因となって生じる炎症性疾患。
炎症により濾胞細胞の破壊が起こり、貯蔵されていた甲状腺ホルモンが血中に漏れ出すことにより、症状が現れる。
中年の女性の発病が多い。
症状
発症当初は、38 度以上の発熱、のどの痛み、倦怠感など、かぜと同じような症状が出る。
その後、甲状腺に片側性の硬いしこりができる。このしこりは強い圧痛があり、左右に移動したり左右に分かれたりする。
症状は長くても1か月程度で収まる。治癒する前に甲状腺機能低下症のような症状が出ることがあるが、一過性のものである。
無痛性甲状腺炎

病態は異なるが、バセドウ病にそっくりの症状をみせる疾患がある。無痛性甲状腺炎が、その1つ。甲状腺に炎症が起こり、細胞破壊によりたくわえられている甲状腺ホルモンが流出するため、甲状腺機能亢進症の症状が現れる。頸部の痛みを伴う場合は亜急性甲状腺炎であるが、痛みを伴わない場合は無痛性甲状腺炎ということになる。無痛性甲状腺炎では眼球突出は生じず、首のはれもごくわずかで、甲状腺ホルモンの流出後は、逆に甲状腺機能低下症の症状が現れ、3か月から半年程度で自然治癒するケースが多い。

甲状腺機能低下症

異常の概要

  • 甲状腺ホルモンの分泌・作用不足により、さまざまな形で障害を生じる。甲状腺自体に異常が起こる原発性、下垂体の異常が原因となる二次性、視床下部の異常による三次性、そして標的細胞が甲状腺ホルモンの作用を受けにくい状態になっている甲状腺ホルモン不応症の、4タイプがある。
  • 甲状腺機能低下症のなかで圧倒的に多いのが、橋本病(慢性甲状腺炎)である。

橋本病(慢性甲状腺炎)

病態
自己免疫に起因する原発性の甲状腺機能低下症である。遺伝的素因がベースにある。
自己免疫による甲状腺細胞の破壊が徐々に進行し、症状も時間をかけて現れるようになる。
症状
発病初期には、状況に対応して下垂体からのTSHの分泌が増え、甲状腺ホルモンの分泌も増えるため、症状は現れない(潜在性甲状腺機能低下症)。
TSHによる甲状腺ホルモン分泌増加が限界になり、さらに甲状腺の細胞破壊が進行すると、甲状腺ホルモンの分泌量が少なくなり、甲状腺機能低下症の症状が徐々に現れてくる(顕在性甲状腺機能低下症)。
症状として圧倒的に多いのは、首のはれ(甲状腺腫)である。それによる痛みはない。
■甲状腺機能低下症の主な症状

橋本病以外の主な甲状腺機能低下症

  • 中枢性甲状腺機能低下症=ニ次性・三次性甲状腺機能低下症のこと。下垂体・視床下部の腫瘍や、それらの除去手術後、シーハン症候群などが原因になることが多い。
  • クレチン症=誕生直後に発症する先天性の甲状腺機能低下症で、甲状腺機能低下症状に加えて発育不全、知能発達の遅延が生じる。甲状腺がないか、その形成が不十分であることなどが主原因となる。

甲状腺腫瘍

  • 甲状腺腫瘍には、下表のように良性と悪性の2つのタイプがある。
■甲状腺腫瘍の主な種類