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がん治療と「妊孕性」温存できる可能性の広がりと今後の課題

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近年、がん治療の進歩とともに妊孕性温存への注目が高くなっています。患者さんへの正しい情報提供、意思決定支援を支える看護師の役割など、ガイドラインの内容を交えて紹介します。

若年がん患者の将来を見据えた妊孕性の温存

国立がん研究センターのがん統計によれば、2009~2011年の小児がん(0~14歳)の粗罹患率は12.3人で、AYA世代(15~30歳前後の思春期・若年成人)では、15~19歳が14.2人、20代で31.1人、30歳代で91.1人(いずれも人口10万人あたり)となっています

医療の進歩によって治療成績が向上し、がんサバイバーが増えているなかで新たにみえてきたのが治療後の人生、生活という課題。生命を救うことを最優先したうえで、その後の人生もふまえた選択が可能な場合もあります。そのひとつが妊孕性、つまり妊娠する力を温存する治療です。

〈がん治療における生殖機能への影響〉

女性:卵巣や骨盤臓器の手術による卵胞数の減少や卵巣機能不全、がん化学療法による卵子の消失やホルモン産生能の低下、放射線療法による卵巣機能の低下など
男性:精巣に対する手術による精巣機能不全、がん化学療法による造精機能障害など

以前はがん治療による妊孕性の影響について正しい情報が事前に伝えられず、がん治療後に初めて妊娠が困難なことを知らされるケースも少なくありませんでした。しかし、がんが治る時代になったいま、正しい情報を伝え、意思決定を支援することが医療の役割になっています。

この流れを受けて2016年に日本産科婦人科学会が「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」のなかで、妊孕性の温存は、本人が希望する場合には原疾患の治療に伴う副作用対策の一環としての医療行為と位置付けています。
国立がん研究センター:がん登録・統計 小児・AYA世代のがん罹患

8領域で適応や療法の選択肢のガイドライン整備

がん患者さんの医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存は、日本産科婦人科学会に登録されているART(assisted reproductive technology:生殖補助医療)実施登録施設で行われています。

一方、がん患者さんに対する適応については、日本癌治療学会が2017年に日本産科婦人科学会の理念を遵守した「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」を公表。原則40歳未満でがん治療を開始した患者さんを対象に、挙児希望の患者さんには早期に生殖医療の専門医に紹介すること、女性がん患者さんでパートナーがいる場合には、適応を慎重に判断して安全性に配慮したうえで胚(受精卵)の凍結保存が推奨される点などが示されています。このガイドラインでは、女性生殖器、乳腺、泌尿器、造血器、小児、骨軟部、消化器の8つの領域にわけて適応や妊孕性温存療法の選択肢について推奨グレードと解説をつけています。

妊孕性温存の治療とがん治療は同一施設で行うことが望ましいものの、それが難しいケースもあります。生殖医療に関わる医療者、がん治療に携わる医療者双方がガイドラインを理解し、患者さんへの十分な情報提供と、連携をはかることが重要といえるでしょう。

看護師が意思決定支援と多職種連携の橋渡しを

がんを告知された直後の患者さんは、がんそのものの治療選択、学業や仕事、家庭のこと、経済的な負担など多くの問題に直面します。特に小児やAYA世代は保護者も含めて妊娠や出産のことを考えたことがなく、がんと診断された時点では将来のことにまで目を向けられないケースも少なくありません。

そのなかで妊孕性温存の意思決定から治療までの患者さんの気持ちを支え、がん専門医や生殖医療専門医、必要に応じて臨床心理士などの専門職との連携をはかる看護師の役割が非常に重要となります。また、がん治療と妊孕性温存の治療を別施設で行うケースもあり、今後はさらに地域でのネットワーク強化が求められます。

施設間の連携を進めるうえでは、患者さんの背景や思いも含めた看護師のきめ細やかな情報提供が欠かせません。特に患者さんと最初にかかわる看護師には、がん治療と妊孕性温存の知識、医療者間の橋渡し役が期待されているといえるでしょう。

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参考
平成27-29年度 厚生労働科学研究がん対策推進総合研究事業 総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究

厚生労働省:小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会

日本癌治療学会:がん診療ガイドライン(妊孕性温存のガイドラインは未掲載)

日本がん・生殖医療学会

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