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事例で学ぶ看護技術 永久気管孔へのフィルムドレッシング材の貼付

仕事に役立つ看護手技 > 疾患・部位別の看護 編

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患者さんの喉に空いた孔は、必ずしも気管切開によるものではなく、「永久気管孔」の可能性もあるという話を先輩から聞きました。
初めて聞いた言葉ですが、永久気管孔って何ですか?
まさに看護師が永久気管孔を知らなかったがために、患者さんがシャワー浴で生命の危機に陥った事例があるわ。

●今回の事例:

入院してきた患者は、永久気管孔を造設していた。
入院時の担当看護師は、そのことを医師から聞き、看護プロファイルに入力した。
その患者が入院後に初めてシャワー浴する際、看護師Aと看護師Bは頸部の孔が永久気管孔であることを知らなかったが、2人で相談した上で、湯の流入を防ぐ目的で頸部の孔をガーゼとフィルムドレッシング材で保護した。
そのとき、たまたま孔の上部が完全に覆われていなかったことから、患者は口の動きで「苦しくない」と意思表示し、それを看護師も確認した。

その後、患者のシャワー浴を担当することになった看護師Cは、やはり永久気管孔であることを知らないまま、湯が入らないように孔の上部をふさいだ。
シャワー浴を開始して1分もしないうちに患者は全身色が不良となり、意識を失った。
フィルムドレッシング材をはがすと患者は呼吸を始め、意識を取り戻した。

永久気管孔と気管切開孔は似て非なるもの

リコ:
永久気管孔を造設しているという情報を入院時の担当看護師が聞き、看護プロファイルに記載していながら、他の看護師と情報共有ができていなかったわけですね。

ヨシミ師長:
報告書によると、入院時の担当看護師が永久気管孔に関する看護計画を立てていなかったことが、情報共有できなかった原因の一つとされているわ。
なお、事例に登場したすべての看護師は、永久気管孔を目にした経験がなかったということよ。

リコ:
私も永久気管孔を見たことがないので、「気管切開の孔かな?」と思ってしまうかもしれません・・・。

ヨシミ師長:
永久気管孔というのは、喉頭癌や咽頭癌の治療として喉頭を全摘出した場合などに、喉頭と気管を分離させ、頸部の皮膚に気管を縫合して造られるの。
この場合、気道と食道が完全に分離するため、口や鼻で呼吸することはできなくなるわ。
気管切開も頸部に孔を開けて気道を確保するという点では同じだけれど、気管は喉頭~咽頭につながっているから、口や鼻で呼吸することができるわけ。
孔の位置や見た目はよく似ているけれど、口・鼻呼吸ができるかできないかが決定的な違いよね。

リコ:
だから永久気管孔をガーゼとフィルムドレッシング材でふさいだら呼吸困難に陥ったわけですね。
想像するだけで恐ろしいですね・・・。

ヨシミ師長:
2010年1月から2016年6月までに報告された医療事故情報のうち、同様の事例は2件あったそうよ。
件数は少ないけれど、事例の看護師と同じ立場になったら私たちもやってしまいかねないと思わされる話よね。

二重三重の情報共有で患者安全を図ろう!

リコ:
このような事故を予防するためには、結局はスタッフ間の情報共有の問題になるのかなと思いますが、どうすればよかったのでしょうか。

ヨシミ師長:
冒頭の事例の場合、医師は永久気管孔の存在を知った上で介助入浴の許可を出しており、入院時の担当看護師は永久気管孔造設のため口・鼻呼吸ができないことを医師から聞いて看護プロファイルに記載していたということよ。
つまり、この2人が持っていた情報が適切に他の看護師に伝わっていれば、事態は変わっていたと思うの。

リコ:
患者さんの生命に関わる情報のわりには、その共有の部分で慎重さを欠いていた気がしますね。
どの看護師も永久気管孔を見たことがなかったわけですから、入院時カンファレンスを開いて医師から看護師へレクチャーしてもらうことは有効だと思います。
それから、電子カルテで誰もが目にする最初の画面(掲示板)に「永久気管孔を造設」と記載したり、入浴表を活用して注意事項を共有したりといった方法も考えられますね。

ヨシミ師長:
永久気管孔をキャップして水が入らないように防ぐ器具も商品化されているから、正しい情報をもとに考えれば、そうしたものを導入しようという話になったかもしれないね。
ちなみに、永久気管孔を造設した人は、自分が口や鼻ではなく喉元の孔から呼吸していることを知らせる注意喚起のためのカードを携帯していることもあるから、知識として覚えておいてほしいわ。

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参考資料
日本医療機能評価機構:医療事故情報収集等事業 第46回報告書(2016年4~6月).

監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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