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インタビュー 私の転機 相談者の心の声を五感で聞く(後編)

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病院で働く看護師とマギーズ東京が
協力し合うことで支援の幅が広がる

がんは診断されたそのときから、治療方法、仕事や家庭のことなど、多くの選択を迫られます。治療後も再発の不安、経済的な問題などを抱え、周囲にも相談できずに悩みを持ち続ける人が少なくありません。そんながん患者さんや家族に寄り添い、専門知識を持つ“友人のような”看護師が寄り添うのが、「マギーズ東京」です。そこはがん患者さんと向き合う病院の看護師にとっても癒やしの場所となっています。2016年の開設以降の取り組みや今後について伺いました。

認定NPO法人マギーズ東京
共同代表/センター長 秋山正子さん

つらい気持ちを吐き出して
前向きな気持ちと自分を取り戻す場に

―マギーズ東京開設が決まったときの反響はいかがでしたか?

2014年の開設準備から2年間、様々な機会を通じて情報発信をしてきたこともあり、開設時には「オープンを待ち望んでいました」と、訪れてくれた方もいます。

がん治療中の人にとっては、治療が長期化するほど「これから先、自分はどうなるのだろう」という不安が強くなるものです。しかし、家族にも職場でもこうした思いを口にはできません。ひとしきり胸の奥につかえていた思いを吐き出して心を軽くすることではじめて、前に進むためには自分がどうすればいいのかを“自分で決める”ことができるのではないでしょうか。私たちはそのプロセスを大切にしていますし、「マギーズ東京」では、看護師や心理士が答えを示すのではなく、訪れた方自身が語ることで気持ちが整理できるように支援しています。

マギーズ東京の看護師は、病院での経験も豊富で、一部スタッフは本職を持ちながらこの活動に参加しています。病院との大きな違いは、看護師が専門知識を持つ“友人のような”存在であること。病院のなかでは看護師は白衣を着ていますし、どんなにがんばっても、「医療者」と「患者」という関係は変えられません。

病院での説明や相談は、1時間に4人などの枠が決められているため、どうしても本人が答えをみつけるまで待つことは難しく、看護師が答えを探してあげようとしてしまうことがあります。「時間をかけて話を聞いたほうがいいけれど、その時間をとるのが難しい」というときに、病院看護師がマギーズ東京を紹介してくれることもあります。

患者さんを癒やすだけではなく
看護師の癒やしの場にも

―多くの患者さんを診る病院ではできない支援が、マギーズ東京ではできるということですね。

不安に思っていることをマギーズ東京で時間をかけて話してもらうことで、何が一番不安なのか、気になっているのかが整理できます。それによって医師に何を聞けばよいか、これは看護師に聞けばいいことか、あるいは薬剤師が適任か、そういったことが振り分けられるので、診療の場面に戻ってもスムーズにいくのではないかと思います。病院の看護師と私たちマギーズ東京のスタッフがお互いに助け合って患者さんを支えていけたらと思っています。

病院の外来看護師からの紹介でマギーズ東京を訪れる方もいますし、病院の看護師が患者さんに紹介するにあたって、「自分の目で確かめたい」と自ら見学に来ることもあります。こうした機会にも、お互いに協力できることを話し合うこともあります。

マギーズ東京は、通常、月~金曜日まで10時~16時の間オープンしていて、その間であれば予約なしで、無料で利用していただけます。それ以外にもマギーズ東京がある江東区在住や在勤、区内の病院を受診している方や家族を対象に、月1回午後6時~8時にもオープンしています。これは江東区のがん夜間相談窓口事業の委託を受けているもので、私たちは“ナイトマギーズ”と呼んでいます。

また、医療者も含めて平日に来訪できない人向けに、月1回、第4土曜日に“オープンマギーズ”も開催しています。こうした機会を利用して、看護師もたくさん来訪しています。病院外の場所で気持ちが安らぐ場があることを知っていただくだけでなく、ご自身の癒やしにもなると好評です。看護師自身がやさしい気持ちになれなければ、患者さんにもやさしく接することはできません。医療者にも気軽に立ち寄ってもらえる場所になればと思っています。

―実際に来訪される方の悩みに対して、どのように対応しているのでしょうか?

がんの治療を受けている方の悩みの3分の1は、医師とのコミュニケーションです。これは古今東西のテーマだと思いますが、例えば、「医師からの言葉に傷つき、主治医を変更したいけれども、病院とはつながりを断ちたくない、でも診察日は強いストレスを感じてしまい、どうしたらよいのかわからない」というようなものです。

こうしたお話に対して私たちは、医師がどういう言い方をしているのか、それを本人がどう受け止めているのかを聞きます。そして、何に一番引っかかっているのか、自分自身で分析できるようにサポートをします。

場合によっては、病院の看護師に間に入ってもらう必要があるかもしれません。「院内の相談支援センターに予約をして医師とのコミュニケーションに悩んでいることを話し、仲介に入ってほしいことを伝えても大丈夫」と話をすることもあります。

医師とのコミュニケーションに悩む方の多くは、「主治医を変えるにはどうしたらいいのか」ということで頭がいっぱいになっています。しかし、なぜコミュニケーションがうまくいかないと思うようになったのか、何がきっかけだったのかを一緒に考えていくと、主治医を変えること以外にもできることはあります。

また、家族とのかかわりという点でも悩みを抱えている方もいます。例えば、「認知症の親には自分ががんになったことを理解してもらえず、身体のつらさもわかってもらえない」と感じている方や、「自分の幼い子どもに、抗がん剤治療で母親の容姿が変わっていくことをどう伝えたらよいのかがわからない」といった方がいます。つらい思いを涙ながらに吐露されていましたが、こうした悩み、つらさを話せる場所があることが大切だと思いますし、ニーズは高いと感じます。

マギーズ流サポートを学ぶ研修や
チャリティ活動で支援の輪を広げる

―スタッフへの教育はどのように行っているのでしょうか?

最新の医学知識は必要で、日々勉強しなければなりませんが、マギーズ東京のスタッフに一番大切なのは、五感を研ぎ澄ませて聞く力を身につけることだと思っています。その力を高めることを目的に、開設前にスタッフへのトレーニングを実施し、今も毎日の振り返りを行いながら、高めているところです。

ただ、その力はマギーズ東京のスタッフだけが身につけていればよいというものではありません。全国各地にマギーズセンターの考え方に沿った支援をしたいという人がいますし、マギーズ東京でも人材を育成していく必要があります。そこで開設前のスタッフ向け研修の内容をブラッシュアップして、外部の人を対象にした「マギーズ流サポート研修入門編」を全4日間の日程で企画しています。ワークショップや体験学習も入れた内容で、2日間の集中講義と研修前、研修後の現場での体験を組み合わせたプログラムです。非常に丁寧なプログラムのため、1回につき30人限定で、2018年の募集はすでに終了していますが、毎年多くの申し込みがあります。

病院の医療者にとっても聞く力を身につけることは、院内の相談支援の場でも活かすことができます。病棟看護師や訪問看護師、薬剤師、地域包括支援センターの相談員など、様々な職種の方が参加しており、今後も続けていきたいと思っています。

―今後の抱負を教えてください。

マギーズセンターの考え方をもとにした、がんに影響を受ける人への支援の場は全国に広がってきています。また、マギーズ東京は2016年10月の開設以来、予想をはるかに超える来者数があります。立地もよく、がんの影響を受けた方がこれからも気軽に立ち寄れる居場所として、また医療者にとっても一息つくことができる場所としてマギーズ東京を続けたいと思っています。期限付きの土地ですので、継続ができるように関係各所に協力を要請していますが、そのためには運営費を確保することも重要です。

2019年3月には、日本音楽財団さんのご協力で、上野の東京文化会館大ホールで、チャリティコンサートを企画しています。来場者にはストラディヴァリウスとピアノの音色で心やすらぐ時間を一緒に過ごしていただくとともに、マギーズ東京のような場所がなぜ必要かも含めて、広くアピールしていきたいと思っています。

―最後にメッセージをお願いします。

訪問看護につながってくる目の前の患者さんに対して、こんな支援があればと思うことや、何とかしたいという気持ちを持って活動を続けてきたことがいまにつながっています。病院の看護もそうですが、訪問看護も一人ひとりに向き合っていく大変な仕事です。そんななかでも、目の前にいる人に本当に必要なものは何なのかを常に考えることが新しい発想につながるものであり、突然ジャンプできるわけではありません。日々の実践を大切に振り返っていくことが新しい次のステップにつながるのではないでしょうか。

認定NPO法人マギーズ東京
共同代表/センター長 秋山正子さん

聖路加看護大学(現:聖路加国際大学)卒業後、臨床、看護教育に従事し、1992年に医療法人春峰会立白十字訪問看護ステーションで訪問看護を開始。医療法人解散後、2001年に有限会社ケアーズ(現:株式会社ケアーズ)を設立し、白十字訪問看護ステーションの活動を継承し、現在は新宿区と東久留米市で訪問看護・居宅介護支援・訪問介護の3 事業を展開。2011年に地域住民が集う健康や介護などの相談の場「暮らしの保健室」、2015年には看護小規模多機能型居宅介護施設「坂町ミモザの家」を開設。2016年からはがんに影響を受けるすべての人の相談支援の場「マギーズ東京」のセンター長も務めている。

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