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最新看護手技キャッチアップ グリセリン浣腸液の正確な「適温調節」は難しい

仕事に役立つ看護手技 > 疾患・部位別の看護 編

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かつては良しとされていた看護手技に、こだわりすぎてしまう場面はありませんか?今回は「グリセリン浣腸」をテーマに、現在の正しい対応方法について考えます。事例をもとにみていきましょう。

【事例】
入院中の70歳代男性に、グリセリン浣腸を実施することになった。
指導役である看護師Aは、看護師Bが湯せんした浣腸液の容器表面に触れて温度を確認したところ、適温とされる40~42℃に達していないように感じられたため、再度湯せんするよう看護師Bに指示した。
看護師Bは、浣腸液の注入後、3分間程度我慢してから排便するよう患者に説明した。

浣腸液を温めることも声かけの内容も、学生時代に習った通りに思えますが……?

問題ないように思える事例かもしれないけれど、さてどうかしら。

温度感覚をもとに正確に判断することは難しい

教科書や参考書では、注入するグリセリン浣腸液の適温は40~42℃であり、事前に容器ごと湯せんするように記載されていることが多いと思います。
浣腸液が直腸温より低すぎると毛細血管収縮による血圧上昇を、高すぎると粘膜損傷を引き起こすおそれがあるからです。

しかし、グリセリン浣腸液を温度調節することの正確性について考える必要があります。
看護学生242人を対象に、自ら湯せんしたディスポーザブル浣腸器の表面に触れ、その温度を感覚的に判断してもらう検証をしたところ、40~42℃の適温に調節できた被験者は20%未満で、中には29℃や46℃に調節した被験者もいたという報告があります。
このように、人の温度感覚はあいまいで個人差があるため、正確な温度調整は難しいと考えられます。

また、40~42℃より低い温度のほうがリスクを抑えられるという報告もあります。
ラットを用いた実験でグリセリン浣腸液を直腸内に入れたところ、室温を想定した20℃および30℃では粘膜の反応の程度は弱かったものの、40℃程度に温めた場合は粘膜全体に赤みが確認され、血管が見えづらい状態になり、粘膜を刺激するリスクがあるという結果が得られました。
つまり、40~42℃より低い温度のほうがリスクを抑えることができるというわけです。

ただし、これはあくまでラットを用いた実験であり、そのままヒトに当てはめて考えることはできないかもしれません。
こうしたことを考えると、注入するグリセリン浣腸液の温度は、事例のように厳密に調節するまでの必要はなく、臨床的な判断の下で幅を持って対応すればよいと考えられます。

「注入後3分間我慢」の苦痛は効果に見合うか

次に、これまで常識とされてきた、グリセリン浣腸液注入後に排便を3分程度我慢してもらうことの意義を考えてみましょう。
従来は、「浣腸直後に排便すると浣腸液だけが排出されてしまい、浣腸の効果が薄れる」「便に対する軟化作用が不十分になる」といった理由から、「注入後3分間我慢」が推奨されてきました。
しかし、これについても明確なエビデンスはなく、臨床の経験値に基づくものでした。

そこで、ウサギを用いて2つの実験が行われました。
1つ目の実験はグリセリン浣腸後の排便時間を調べるもので、排便までに要した平均時間は約40秒という結果となりました。
つまり、グリセリンの作用には速効性があり、注入後すぐに排便が認められています

2つ目の実験は浣腸液による便軟化の状態を調べるもので、ウサギの排泄直後の便をグリセリン浣腸液に浸漬し、前後の重量を測定しました。
すると、浸漬時間1~3分では重量に差が生じず、10分でやっと軽度に増加する程度でした。
つまり、「3分間我慢」をしても、それに見合うだけの効果があるとはいえないという結果になりました。

浣腸後に排泄を我慢することは患者さんにとって苦痛です。
無理に我慢してもらうより、いつでも排泄できる環境を整えてグリセリン浣腸を実施するほうが合理的だといえるでしょう。


ラットやウサギによる実験であるだけに、必ずしもそのままヒトに当てはまらないかもしれないけれど、示唆的な結果だったことは確かよね。

より安全性が高く、患者さんの苦痛が少ない方法は何なのか、常に考え続けていきたいですね。

NG看護手技

  • 注入するグリセリン浣腸液は40~42℃に温めることを厳守し、排便は注入後3分間程度我慢してもらう。

OK看護手技

  • 注入するグリセリン浣腸液の適温は40~42℃と考えられるものの、より低い温度のほうがリスクを抑えられる可能性もある。また、注入後に便意があれば、すぐに排便してもらってかまわない。

参考資料:川西千恵美編著「今はこうする!看護ケア」(照林社、2014年)

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監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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