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最新看護手技キャッチアップ 経腸栄養剤を温めて投与する必要はない

仕事に役立つ看護手技 > 与薬・薬剤 編

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かつては良しとされていた看護手技に、こだわりすぎてしまう場面はありませんか?今回は「投与する経腸栄養剤の温度」をテーマに、現在の正しい対応方法について考えます。事例をもとにみていきましょう。

【事例】
患者の栄養状態が悪化し、経口摂取だけでは低栄養になると判断されたため、経腸栄養を開始することになった。
挿管は医師が行い、チューブが胃に到達していることをX線撮影で確認した。
経腸栄養剤を少量から注入開始するように指示を受けた担当看護師は、未開封の経腸栄養剤をボトルに入れ替え、湯せんで温め始めた。

ええと・・・、この事例のどこかに間違いがあるのでしょうか?
普段から行っていることだし、学生時代に学んだ内容の通りだと思うのですが・・・。

実は、経腸栄養剤の加温について、昔と今では考え方が変わってきているのよ。
加温に伴うデメリットもあるから、しっかりと理解しておきましょう。

「寒冷刺激で下痢」は本当か?

従来、経腸栄養剤を投与するときは、体温よりやや高めの温度まで温め、看護師が二の腕辺りで温度を確かめてから注入するという方法が一般的でした。
低温の経腸栄養剤が体内に入ることで、患者さんが不快を覚えたり、寒冷刺激により下痢を引き起こしたりする可能性が考えられたからです。
「朝、冷蔵庫から取り出した牛乳を飲んでお腹が痛くなったことがあるでしょう?」といったエピソードとともに教わった人も多いのではないでしょうか。

ところが、近年の研究で、たとえ経腸栄養剤を投与前に温めておいたとしても、チューブを通過して患者さんの胃腸に到達する頃には室温程度に冷めてしまっていることが明らかになりました
牛乳と違って未開封の経腸栄養剤は常温で保存されているため、温めて投与しても体内で冷めてしまうのであれば、常温で投与するのと変わらないことになります。
つまり、経腸栄養剤を加温しても、期待するような効果は得られていなかったのです。

それでは経腸栄養剤による不快感や下痢の原因は何なのかというと、注入速度や濃度(浸透圧)の問題であると考えられています
経腸栄養を行っている患者さんに不快感や下痢が現れたら、栄養剤の種類や濃度を見直したり、投与速度を遅くしたりすることを検討してみましょう。

加温には思わぬデメリットも!

加温することによって思わぬデメリットも発生するため、むしろ「経腸栄養剤は温めてはならない」と理解すべきなのかもしれません。

最も大きなデメリットは、感染リスクの上昇です。
特に、一度にすべての量を使用しないときなど、温めるための容器に入れた後さらに注入容器に移し替える場合は要注意といえます。
それぞれの容器をしっかりと洗浄・乾燥して清潔を保たなければなりませんし、準備する間にナースコールの対応などがあれば手指衛生に注意が必要です。
このように、別容器に移し替えるという行為そのものが、細菌感染のリスクを高めてしまうのです。

また、「経腸栄養剤の温度が高いほど、チューブを通過するときに溶け出す環境ホルモンの量が増える」という研究結果もあります
さらに、過度の加温により栄養素が変性してしまったり、ビタミン類が破壊されてしまったりする可能性も考えられます
これらのことから、最近のガイドラインや教科書では「経腸栄養剤を温める」という記載は見られなくなっています。

※厚生労働省:ポリ塩化ビニル製医療用具の使用について,医薬品・医療用具等安全性情報No.182,2002.


研究が進むにつれてケアの常識が覆されることもあるのですね。

当たり前に行っていることが、実は当たり前ではないかもしれない。
そういう意識を持ちながら仕事をしたいものね。

NG看護手技

  • 経腸栄養剤は、投与する前に必ず温める

OK看護手技

  • 未開封の経腸栄養剤は常温保存し、加温せずに投与する
  • 開封後の経腸栄養剤は冷蔵保管し、使用するときは事前に冷蔵庫から出しておき、常温に戻してから投与する

ナースフルでは働く看護師さんを応援しています。
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参考資料
日本静脈経腸栄養学会:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版,2013.

監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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