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国内での薬剤耐性菌による死亡者数が年間8,000人に~初の全国調査でわかった薬剤耐性菌の状況~

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厚生労働省による薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)の一環として、国内で初めて行われた薬剤耐性菌による死亡者数の調査研究結果が報告されました。MRSAとFQRECの菌血症による死亡者数は年間8,000人にものぼると推定されており、薬剤耐性菌への対策の強化が求められます。

MRSAとFQRECによる菌血症

薬剤耐性菌とそれに伴う感染症は国際社会のなかで大きな課題となっています。
対策をとらなければ耐性菌が増え続けて、2050年には耐性菌による年間死亡者は全世界で1000万人を超えるといわれており※1、その一方で、新たな抗微生物薬(抗菌薬、抗生物質、抗生剤)の開発は減少しています。

※1.The Review on Antimicrobial Resistance Chaired by Jim O’Neill December 2014

2015年に世界保健総会(WHA)で薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択されたことを受け、国内でも薬剤耐性菌への対策「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」が進められています。

AMRアクションプランの一環として、2019年12月に国内で初めて調査が行われ、薬剤耐性菌による全国の死亡者数が明らかとなりました。
この調査研究は、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータから全国の菌血症症例数を算出し、過去の研究に基づく死亡率と合わせて菌血症による死亡者数を推定したもので、代表的な薬剤耐性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)が原因の菌血症による死亡者は年間約8,000人と推定されました。

黄色ブドウ球菌全体では菌血症死亡者数はほぼ横ばいで、うちMRSA菌血症は減少傾向にあります。一方で、FQREC菌血症による死亡者は増加していることがわかりました。

薬剤耐性菌の発生と拡散を防ぐには

薬剤耐性菌の発生や感染の広がりを防ぐためには、抗微生物薬の適正使用と感染予防・管理が不可欠です。
2019年11月に公開された「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019」によれば、国内の抗菌薬使用量は、2017年以降減少しており、2018年は2013年との比較で10.6%減少していました。

WHOでは、抗菌薬適正使用の指標として、「AWaRe分類」を推奨しています。AWaRe分類別にみると、国内でのAccessに属する抗菌薬の使用は15%前後にとどまっており、他国との比較ではまだ低い状況です。しかし、AMRアクションプラン開始以降、その割合は上昇していることから、今後も継続的に啓発を行っていくことが重要となります。

●AWaRe分類

WHOの必須医薬品リスト(第20版)に掲載された抗菌薬分類を応用した抗菌薬の適正使用の指標。
Access:一般的な感染症の第一、第二選択薬で、耐性化の懸念が少なく、広く利用できるようにすべき抗菌薬(アンピシリン、セファレキシンなど)
Watch:耐性化が懸念されるため、限られた疾患や適応のみ使用すべき抗菌薬(バンコマイシン、メロペネム、レボフロキサシンなど)
Reserve:他の手段が使用できなくなったときの最後の手段として使用すべき抗菌薬(チゲサイクリン、コリスチン、ダプトマイシンなど)
この3つの分類+未分類の計4カテゴリーがある。

地域住民への啓発が重要

国内で抗菌薬の適正使用を進めるうえで重要なポイントとなるのが、急性気道感染症患者さんへの抗菌薬処方です。以前に比べて減少しているものの、2012年4月から2017年6月の間に外来受診した急性気道感染症患者さんに対し、30%を超える抗菌薬処方があることが調査結果より明らかとなりました。高齢者よりも13~49歳への処方割合が高く、処方された抗菌薬の多くが、「AWaRe分類」でWatchに分類されている抗菌薬であることもわかっています。

現在のAMR対策アクションプランは、2020年までを目標に計画が進められています。今回の調査研究の報告で、薬剤耐性菌による菌血症と推定される死亡者が年間約8,000人にのぼる現状が明らかとなったことで、その対策をより強化する必要があることが示唆されました。抗菌薬を処方する医師への啓発・教育だけでなく、看護師・看護助手をはじめとしたコメディカルや医療事務、清掃員などの医療機関職員への研修機会を設けることも重要です。

また、2019年12月にAMR臨床リファレンスセンターが発表したアンケート調査結果では、一般の人の約4分の1は、「インフルエンザに抗菌薬が効く」という誤ったイメージを持っていることも明らかとなりました。

中国での新型コロナウイルスによる肺炎が拡大するなど、感染症に対する関心が高まっています。細菌性感染症とウイルス感染症の違いや細菌が耐性化するしくみ、抗菌薬を処方どおりに服用することの重要性、日ごろの予防対策など、看護師も正しい知識を身につけて発信していくことが重要な対策のひとつといえます。

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参考資料

厚生労働省:薬剤耐性(AMR)対策について

厚生労働省委託事業 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター:

プレスリリース(2019年11月26日)

プレスリリース(2019年12月5日)

プレスリリース(2019年12月25日)

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