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事例で学ぶ看護技術 粉砕してはならない錠剤を粉砕して投与

看護あるある 手技Q&A > 与薬・薬剤 編

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睡眠薬の錠剤を半分にして患者さんに渡して服用してもらいましたが、手で半分に割るのはなかなか難しいものですね。
とはいえ、こうしたほうが患者さんは飲みやすいでしょうから、どの錠剤も分割して渡したほうがよいのではないでしょうか?
分割や粉砕しても問題ない錠剤と、そうでない錠剤があるのよ。
そのことを知らなかったために、患者さんをリスクにさらしてしまった事例もあるわ。

●今回の事例:

肺炎および高血圧症を抱える患者が意識障害を呈したため、経鼻胃管を挿入した。
やがて全身状態が改善したため、意識障害を呈する前まで内服していたニフェジピンCR錠20mgを再開する方針となった。
患者が経鼻胃管を挿入していると知らない研修医が処方したニフェジピンCR錠を、病棟看護師が粉砕して経鼻胃管から投与した。
投与30分後に血圧を測定したところ、収縮期血圧90mmHg台で、1時間後には80mmHg台まで低下した。

その翌日、薬剤部で業務をしていた病棟薬剤師は、患者の急激な血圧低下についてのカルテ記載を発見した。経口投与であれば急激に血圧が低下することはないため原因検索をしたところ、経鼻胃管を挿入している患者であり、ニフェジピンCR錠を粉砕して投与していたことに気づいた。

判別が難しい徐放性製剤も存在する

リコ:
経口投与が難しい患者さんであれば、錠剤を服用しやすく工夫するのはアリだと思ってしまいますが、どうしてダメなのでしょう?

ヨシミ師長:
薬剤の効果を高めるためには、必要量の有効成分を必要な部位に到達させることが重要で、そのために開発されたのが有効成分の放出速度を調整した「徐放性製剤」なの。
血中の有効成分濃度を長時間一定に保つことで服用回数を減らすことができるとともに、副作用を回避することも期待できるわ。
でも、そのように設計された徐放性製剤を分割・粉砕して投与すれば、体内で急激に吸収されて重篤な副作用につながるおそれもあるのよ。

リコ:
今回の事例では、血管拡張薬であるニフェジピンCR錠を粉砕投与した結果、患者さんの血圧が急降下していますね。

ヨシミ師長:
ニフェジピンCR錠の“CR”は“controlled release”の略で、徐放性製剤であることを意味しているのよ。
販売名に「徐放」と明記されているものもあるけれど、必ずというわけではないから、名称だけを頼りに徐放性製剤であることを見分けるのは難しいわね。
錠剤の粉砕OK/NGを判別できる看護師は、そう多くはないのが実情じゃないかしら。

リコ:
今回の事例のようなインシデントは過去6年間に3件報告されていて、どのケースも経鼻胃管を挿入したり腸瘻を設置したりしている患者さんだったそうです。
経口投与が難しいにもかかわらず錠剤を処方されたことが、問題につながっています。

ヨシミ師長:
医師が経鼻胃管の存在を把握しており、経鼻胃管から投与できる細粒剤(ニフェジピン腸溶細粒) を処方していれば、今回のインシデントは防げたでしょうね。
また、仮に医師が粉砕OK/NGの知識を持っていなかったとしても、処方する際に「ニフェジピンCR錠20mg、粉砕投与」と投与方法を含めて入力していたら、システム上で「粉砕不可」のアラートが出て問題に気づけたと思うわ。

施設全体のルールを決めて不適切投与を防止しよう

リコ:
看護師としても薬剤の知識を深め、不適切投与を水際で防ぐ必要がありますね。
そのほかに、どのような対策が考えられるでしょうか。

ヨシミ師長:
例えば、施設全体のルールとして「原則的に錠剤を病棟で粉砕してはならない」と決めておくのはどうかしら。
経口投与できない患者さんに錠剤が処方されたときは、看護師から医師へ処方の変更を依頼するわけね。

リコ:
それなら個々の知識に頼ることなく、徐放性製剤を粉砕投与するリスクを大幅に減らせそうですね。
でも、処方のやり直しを医師に依頼するのは、現実には難しいことも多いのではないですか。
すぐに担当医に連絡が取れるとは限りませんし、患者さんへの投与が遅れてしまいそうです。

ヨシミ師長:
その場合は、「薬剤部に問い合わせて『粉砕OK』の確認ができれば、例外的に病棟で粉砕投与してよい」というルールを追加するのはどうかしら。
薬剤のことについては、その道のプロである薬剤師の協力を得ることが合理的だしね。

リコ:
薬剤部で「粉砕不可一覧表」を作ってもらい、全体で共有している施設もあるそうです。
施設全体の問題として多職種で協力し合いながら、不適切投与を防ぎたいですね。

参考資料
日本医療機能評価機構:医療事故情報収集等事業 第53回報告書(平成30年1~3月).

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監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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