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現場インタビュー 私の転機 認知症看護認定看護師に聞く(後編)

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認知症があっても尊厳を守り
最期までその人らしい生活が送れるように

特別養護老人ホームひかわ
認知症看護認定看護師 大垣優子さん

治療を再優先する医療機関に対し、介護施設は生活の場です。一方で、認知症や医療依存度の高い利用者が増えており、“当たり前の生活”を送るには、看護師によるケアや支援が欠かせません。スペシャリストとしてどのような役割を担っているのでしょうか。前回に引き続き、認知症看護認定看護師にお話をうかがいます。

根拠を踏まえた認知症看護が展開できることがやりがいに

――認定看護師になったことで、施設での看護や役割はどのように変わりましたか?
 認定看護師の資格は病院の看護師がキャリアアップのために取得するイメージがあるからか、主任看護師も「まさか戻ってくるとは思っていなかった」と話していました。しかし、私自身は教育課程で学んだことで、当ホームで行っているケアや介護はレベルが高いことを再確認できましたし、学んだことを早くスタッフに伝えたいと思っていました。

 例えば、当ホームは各自の居室に持ち込むものに制限がなく、なかにはご主人の仏壇を持ち込んでいる方もいますし、居室内の洗面台の水道の蛇口も手でひねるタイプのものです。手を差し出すだけで水が流れる水道のほうが一見便利に思いますが、高齢の方にとってのなじみの道具である水道はひねって水を出すものです。また、各ユニットに炊飯ジャーがあり、朝昼晩ご飯を炊いているのですが、その香りで食事の時間だと思ってもらえるなどの環境整備を以前から行ってきました。環境の変化を最小限にし、なじみのものに囲まれる生活は、認知症の方にとって大切なことですが、教育課程に進んだことでその根拠が理解できましたし、それをスタッフに伝えていくことで、認定看護師がどのような資格なのかを理解してもらうことができ、私の声に自然と耳を傾けてくれるようになりました。

 現在の医療では、認知症の進行を緩やかにすることはできても完治させることは困難です。そのなかで、その人らしさを受け止めて不安・混乱なく、穏やかな生活を送ることで笑顔になっていただくにはどうすればよいかをスタッフとともに考え、浸透させていきたいと考えています。また、私自身も根拠を踏まえた看護が展開できるようになったことで、より一層やりがいを持って看護が続けられています

――現在の活動について教えてください。
 現在、当ホームには6人の看護師、80名を超える介護職員がいますので、日々の認知症ケアの実践・指導・教育に力を入れています。また、埼玉県看護協会主催の介護施設向けの勉強会の講師や県外で行われる認知症看護の研修会で「身体拘束」をテーマにした講義などを依頼されるなど、外部での活動機会も増えました。安易なドラッグ・スピーチ・フィジカルロックをせずに、スタッフが五感を使ってその人の生活を支えることの大切さ、尊厳を守るケアの重要性を伝えています

 地域での活動では、当法人内にあるさいたま市のシニアサポートセンター(地域包括支援センター)が開催する介護サロンで家族向けの認知症勉強会を開いたり、相談に応じたりしています。現在、介護施設に所属する認知症看護認定看護師のグループで看護研究をすることになり、準備を進めています。2016年7月の第21回日本老年看護学会学術集会で発表する予定なのですが、介護施設における看護師と他職種協働の実態が可視化されていないことを問題視し、実際に行っている業務内容と、利用者さんの生活を支えるためにどのような職種と連携しているのかを明らかにすることを目的としています。11名の認知症看護認定看護師が1日の業務内容を、「関わった時間」「場所」「内容」「時間」に分けて集計・整理し、その結果について報告します。施設、地域を超えた横のつながりを活かして、病院に勤務する看護師にも、介護施設における認知症看護の現状を伝えていきたいと思っています。

高齢者の増加で認知症看護スペシャリストの需要が高まる

――今後の目標と、資格取得を目指す方にメッセージを。
 私自身の今後の目標は、認知症に対応できる介護施設の発展に力を入れていくことです。これまで年齢相応の物忘れで生活に支障がないにもかかわらず、「介護施設に入所している」というだけで、尊厳を無視した対応がなされてきた高齢者をみてきました。当ホーム入所前に、認知症の行動心理症状を薬物で抑制され、ADLが低下し、人格にまで大きな影響が及んでしまっていた方の様子も目の当たりにしています。すべての認知症を抱える方に、当法人の理念でもある“当たり前の生活”を送ってもらい、その人らしく自然な最期が迎えられるようなケアが提供できる施設を増やしたいと思っています。

 介護施設は、医療機関をリタイアした看護師の転職先だと思われているかもしれません。しかし、介護施設にも胃瘻、点滴、バルン交換、吸引、インスリン投与など、医療依存度が高い利用者さんが少なくありません。高齢者は検査値だけでその人の状態を判断するのではなく、あらゆる可能性を視野に入れてフィジカルアセスメントを行う必要がありますし、必ずしも病院に入院させることがその人にとって最善だとも限りません。治療が最優先される病院とは違い、介護施設では基礎疾患を抱えている利用者さんが安楽な生活を送れるように支援するのが看護師の役割です。その人の希望、家族の要望、医療的見解から総合的に判断しなければならない局面が多く、看護師が自律的に動かなければなりません。医療機器もなく、医師も不在で自らの不調をうまく訴えることができない認知症の方の異常を早期発見するには、知識と看護技術、そして常にアンテナを張り、五感を使って利用者さんの変化に対応する“看護力”が求められるのです。

 特別養護老人ホームは、高齢者の終の棲家です。認知症高齢者の尊厳を守るケアを担う看護師には、医療と介護のさじ加減を探り、その両方を担える存在であることが求められます。介護施設から認定看護師の教育課程に進む人はまだまだ少ないのが現状ですが、とくに認知症の分野は今後ますます根拠に基づいた看護が必要になってくると思います。認知症看護を学んだ看護師が病院だけでなく、介護施設にももっと増えてほしいと思います。


大垣優子さん
特別養護老人ホームひかわ
2000年准看護師資格取得。2003年に看護師資格を取得し、埼玉医科大学総合医療センターに入職。2005年、医療法人博眞会デイケアセンターみるとへ入職し、2007年に社会福祉法人三恵会特別養護老人ホームひかわに入職。2012年、日本看護協会看護研修学校認知症看護学科に入学し、2013年認知症看護認定看護師資格を取得。

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