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押川真喜子さんインタビュー―訪問看護の先輩からのメッセージ(後編)

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1992年、聖路加国際病院の訪問看護科立ち上げから、2007年の訪問看護ステーションへの移行と、訪問看護の先駆者として活躍してきた押川真喜子さん。
前編の記事に引き続き、ご自身の訪問看護師としての経験と、病棟での看護との違いやその魅力、訪問看護を目指す人へのメッセージを伺いました。

取材協力
押川真喜子さん 株式会社ハーフ・センチュリー・モア 取締役/ケア部門統括責任者
ロイヤルパークホテルにて撮影

1人で訪問し、アセスメントと判断をする難しさ

――病棟での看護と訪問看護の違いについて教えてください。
病棟では、「何かおかしいな」と感じたらすぐに医師に相談することができます。
その後は医師が判断し、その指示のもとに動けばいいのですが、訪問看護師は何がおかしいのかを判断して医師に報告しなければなりません。
自分たちで判断して動くべきことを報告して、医師に叱られたこともありました。
特に、外来診療をしていて入院させるべきかどうかを判断する立場の医師は、私たちに求めるレベルが高いです。
判断の甘さは、信頼を得て、頼りにしてもらえるようになればなるほど、厳しく指摘されました。
だからこそ救急で受け入れが必要なケースでは私たちを信頼し、優先して受け入れたのだと思います。

私が所長を務めていたときには、一番多くて170名の患者さんを13名の訪問看護師で担当していました。
毎回、医師に確認をとっていたら大変なので、例えばその場で血液検査をするかどうか、何を検査するかの判断も任せられていました。
その結果をみて医師に報告する、患者さんの状態からみて今すぐに救急搬送が必要だと判断する、こうしたことの積み重ねがあったことで、医師もすぐにベッドを用意して対応してくれました。
それを訪問看護は1人で行って、アセスメントし、判断しなければなりません。
この点は病棟と大きく異なる点だと思います。

他職種と協働しながら看護師の専門性を発揮する

――在宅では介護との連携も大切になると思いますが、心がけていたことはありますか。
病院内では多職種によるチーム医療が当たり前に行われていますが、訪問看護でも同様に、多職種との連携が欠かせません。
院内での連携と、他事業所の他職種との連携には、やはり違いがあると思います。
介護福祉士やホームヘルパー、入浴サービス事業者、理学療法士など、さまざまな職種との連携が必要です。
重症度の高い患者さんの場合は特に、つい介護職に注意したくなる場面があります。
しかし、在宅でかかわる職種はすべて立場が平等でなければなりません。
看護師が上から目線で指示し、きつく当たってしまうと、介護職は萎縮してしまいます。

私はいま、介護施設を運営する会社でケア統括部門の責任者をしていますが、介護職のリーダー会議で「看護師がわかってくれない」と指摘されることがあり、「在宅も介護施設も変わらないな」と感じることがあります。

しかし、毎日の生活のこと、どんな価値観を持って生きてきたのかなど、医療以外の部分では介護職から学ぶことはたくさんあります。
私は「教えてください」という姿勢でいることを心がけ、介護職からも多くの情報をもらっていました。

介護職とは対等の立場でいなければなりませんが、やはり私たちは看護師として、看護とは何か、その専門性は何かを意識して取り組むことが大切だと思います。
介護にも今は介護過程があり、介護福祉士の専門学校や大学を卒業して現場にいる人たちは、生活状況からアセスメントすることを学んでいます。
看護は、介護ができることを全部やれなければいけませんし、それに医療の知識や技術がプラスされなければ、介護職と一緒です。
看護の専門性を発揮できなければ、いつか訪問看護の仕事は介護職に取って変わってしまうでしょう。

――訪問看護師として質の高い看護を提供にするために、どのような教育を行ってきたのでしょうか。
やはり訪問看護師にとって最も重要なのはアセスメント能力、判断力だと思います。
患者さんに1人の担当者がつくと、人の目が入らず、一生懸命やっていても患者さんの望まない方向にいくことがあるので、必ずベテランの看護師と組ませるようにしました。
看護記録をみて、アセスメントで気になるところがあれば、看護師同士でディスカッションすることも大切です。

先輩たちには、後輩から「どうしましょう」と聞かれたら「どうしたいの?」と問いかけるように、「しっかり自分の意見を言えるように教育してほしい」と指導しました。
ベテランの看護師の意見が、必ずしも患者さんや家族の思いに合致するかはわかりません。いろいろな方法があることをディスカッションのなかで学べるようにしていました。

また、各自が得意分野や旬の話題について講師になる勉強会を開いたり、新たに人工呼吸器装着の患者さんを受け持つときには、メーカーの担当者に勉強会を担当してもらったりしました。
「みんなで高めあう」という意識で取り組むことが大切だと思います。
組織のなかで、全員が全員すばらしいということはありえませんが、そんなときでも管理者としてよいところをみつけて伸ばしていくことを心がけました。

人生の先輩として敬意をはらう気持ちを忘れずに

――最後に、訪問看護のやりがいは何だと思いますか。
その人らしく生きられるのは病院ではなく家だと思います。
それを支えられる訪問看護の仕事はとてもやりがいがあります。
もちろん、病棟とは違ういろいろな苦難が待っていますが、喜びも大きい仕事です。
病棟では患者さんに「看護師さん」と呼ばれることが多いと思いますが、在宅ではほとんどの方が「押川さん」と名前で呼んでくれたので、私自身個人として認められていると感じました。
病棟もやりがいはありますし、どちらが大変、どちらが楽というものではないと思います。
合う、合わないはありますが、情熱があるならチャレンジしてほしいと思います。

もうひとつ、訪問看護師にとって大切なことは、人を好きになることです。
病棟は在院日数が短いですが、在宅は5年、10年とかかわりが続くので、コミュニケーション、信頼関係が重要です。
私は、そのかかわりのなかで感性を磨き、患者さんの“心の声”を聴くことを大切にしてきました。

また、例えば認知症があって、意思の疎通がうまくできない患者さんでも、今に至るまでの生き様を尊重し、人生の先輩として敬意をはらうことが大事だと思います。
もちろん、病棟でも同じですが、在宅の場合は長いお付き合いになるので、より一層心がけてほしいことです。

押川真喜子さん
1960年、宮崎県生まれ。聖路加看護大学卒業。板橋保健所、日本大学医学部附属板橋病院内科病棟を経て、89年から聖路加国際病院公衆衛生看護部勤務。92年、聖路加国際病院訪問看護科を立ち上げ、2007年、聖路加国際病院訪問看護ステーションに移行。2013年、株式会社ハーフ・センチュリー・モア ケア部門統括責任者に就任。主な著書に『訪問看護婦だからできること』(リヨン社)、『在宅で死ぬということ』、『こころを看取る―訪問看護師が出会った1000人の最期』(文藝春秋社)などがある。

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