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看護あるある手技Q&A 術後の深部静脈血栓症の予防

仕事に役立つ看護手技 > 疾患・部位別の看護 編

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術後に深部静脈血栓が形成されやすいのはなぜですか?

静脈血栓を起こす3つの成因を満たしやすい状態になるからよ。これらの成因を阻害することで予防につなげることができるわ。

リコ:深部静脈血栓症を防ぐため、術後の患者さんには弾性ストッキングなどを使用しますよね。
ただ、そもそも術後に静脈血栓ができやすいのはなぜか、あらためて考えてみたいと思いました。

ヨシミ:じゃあ、術後に静脈血栓ができやすくなる理由とともに、予防的なケアの方法とコツについて考えてみましょうか。

静脈血栓の形成に至る3つの成因とは?

深部静脈血栓症が起こると、後に全身の循環が活発になったとき、その血栓が血流に乗って移動してしまうことがあるの。
そして、心臓を経由して肺動脈に至った血栓が肺血栓塞栓症を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあるわ。

静脈血栓は、
①静脈の内皮障害
②血液の凝固亢進
③静脈の血流停滞
という3つの要因が重なることで生じる
の。
このことを術中・術後の患者さんに当てはめて考えてみると、次のようになるわ。

  • 術中の体固定や術後の床上安静臥床によって、特に下肢の静脈洞に血液がうっ滞する。
  • 術中・術後に血圧が低下することで、ますますうっ血が進行する。
  • 下肢が手術台に押し付けられることで、血管内膜が損傷する。
  • 手術そのものによる侵襲が原因で、血液凝固能が亢進する。

このように、術後の患者さんは深部静脈血栓症が形成されやすい状態にあるわけね。
特に肥満、高齢、妊娠、下肢麻痺、ギプスによる下肢固定、長期臥床、静脈血栓症の既往などは発症のリスク因子となるわ。

急性肺血栓塞栓症に至った場合の死亡率は14%で、中でも心原性ショックを呈したケースでは30%にもなる一方、十分な治療を施せば2~8%まで低下するというデータもある1)

初期症状としては下肢の鈍痛や浮腫、うっ血などが見られることが多いけれど、まったく無症状のケースもあるの。
日頃の観察を徹底して早期発見を心がけるとともに、なるべく血栓が形成されないよう予防的なケアを実践することが重要よ。

血栓を予防するためのケアを実践しよう!

では、どうすれば血栓の形成を予防できるのかしら?
まずは可能な限り早期に離床を促し、脱水を予防しながら積極的に運動してもらうことが基本になるわ。
それが難しい場合や、それだけでは不十分な場合は、下肢マッサージ、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、薬物療法などをうまく使い分けることが推奨されているの。

・下肢マッサージ

患者さんに疼痛が出ない範囲で、下肢腓腹部を中心に筋肉をつかみ、絞るようなイメージでマッサージする方法よ。
加えて、足首の底屈・背屈や内旋・外旋を他動的に行うことも効果的ね。
また、下肢がベッドから15cmほど持ち上がった状態を保つため、ふくらはぎから踵の位置にまくらなどを入れる方法もあるわ。
なお、すでに静脈血栓ができた下肢をマッサージするのは厳禁だから気をつけてね。

・弾性ストッキング

効果的な力で締め付ける特殊なストッキングで下肢を圧迫し、静脈のうっ血を防ぐ方法よ。
ふくらはぎの最も太い部分を測定して、迷ったら大きなサイズを選択するのが基本だけれど、下肢の変形などにより適切な製品が見当たらなければ弾性包帯の使用を考えて。
皮膚障害を予防するためにも、特に初回実施時にはローションなどでスキンケアをするといいわ。

装着の際は、あらかじめストッキングに片手を入れてつま先部分以外を裏返しておき、つま先→踵の順に引き上げるようにしてみて。
ストッキングのねじれやしわは局所的に皮膚を圧迫してしまい障害の原因になるから、全体をよく見ながら少しずつたくし上げていってね。

・間欠的空気圧迫法

レッグスリーブ(下肢用)やフットカフ(足底用)で下肢を圧迫し、静脈のうっ血を防ぐ方法よ。
通常はより効果的とされるレッグスリーブを使用するけれど、整形外科の下肢手術後などで難しい場合はフットカフが選択されるわ。
スリーブは膝部分に指が3本入るくらい、カフは指が1本入るくらいの強さで、しわができないように巻くのよ。
観察や清拭などで電源を切った後、再スタートを忘れがちだから気をつけて!

いずれの方法も、患者さんが痛みや不快感を覚えていないか、下肢の皮膚に発赤やびらん、水疱などが生じていないかを十分に観察しながら実施することが大切よ。


ちなみに、術後に初めて患者さんが歩くときは特に注意して観察する必要があるから、付き添いするのを忘れないようにね。

「気づいたら一人でトイレに行ってしまった!」なんてことのないよう、事前に患者さんにも説明しておく必要がありますね。

出典
1)日本循環器学会,日本医学放射線学会,日本胸部外科学会・他:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版).

監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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