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糖尿病の薬物療法で使われる経口血糖降下薬について教えてください。
DPP-4阻害薬などの新たな薬剤も登場してきたわ。種類ごとに観察のポイントを押さえておきましょう。
リコ:以前、糖尿病の患者さんに対するケアのポイントをおさらいしました。
もう一歩踏み込んで、糖尿病の薬物療法についても理解を深めていきたいです。
ヨシミ:糖尿病の薬物療法としては、インスリン療法に加え、経口血糖降下薬が使われるわね。
今回は、主な経口血糖降下薬の種類や特徴について学んでいきましょう!
覚えておきたい3種類の経口血糖降下薬
糖尿病治療に使われる経口血糖降下薬は、インスリン抵抗性改善系、インスリン分泌促進系、糖吸収・排泄調節系の3種類に大別されるわ。
1.インスリン抵抗性改善系
・ビグアナイド薬:肝臓での糖新生を抑制して空腹時血糖を下げたり、インスリン感受性を改善したりする。
・チアゾリジン薬:骨格筋や肝臓でのインスリン感受性を改善する。
インスリン抵抗性改善薬は、せっかく分泌されたインスリンの効果が十分に発揮されない「インスリン抵抗性」という状態を改善することで、血糖値を下げる薬よ。
チアゾリジン薬は、副作用として重篤な肝障害を引き起こすことがあるから、投与中の定期的な検査が必要だわ。
また、すでに肝硬変や肝炎などの合併症がある場合には使用できないのよ。
2.インスリン分泌促進系
・スルホニル尿素薬(SU薬):
膵島のランゲルハンス島にあるβ細胞に働きかけ、インスリン分泌を促進する。
・DPP-4阻害薬:
ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)の働きを阻害することで、インスリン分泌を促進する。
・グリニド薬:
速効型インスリン分泌促進薬とも呼ばれ、食直前に服用することで食後高血糖を改善する。
中でも新たな薬剤として注目されているのがDPP-4阻害薬よ。
インスリン分泌を増加させる働きがあるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を分解してしまうDPP-4の働きを妨げることができるの。
DPP-4阻害薬は食前・食後のどちらの投与もOKで、体重が増加するリスクが低いなどのメリットがあるわ。
ただし、DPP-4阻害薬単独では低血糖になりづらいけれど、SU薬と併用する場合は重篤な低血糖を引き起こすことがあるというリスクは覚えておいてね。
3.糖吸収・排泄調節系
・α-グルコシダーゼ阻害薬:
炭水化物の消化・吸収を遅延させ、食後高血糖を改善する。
・SGLT2阻害薬:
SGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体)と呼ばれるタンパク質の一種の働きを阻害し、腎での再吸収を抑制することで、尿中ブドウ糖の排泄を促進する。
α-グルコシダーゼ阻害薬では、特に服薬初期に腹部膨満感や便秘、下痢など消化器症状が現れやすいけれど、服薬を継続すれば改善されていくから、自己判断で服薬をやめてしまうことのないよう事前の説明が必要ね。
また、SGLT2阻害薬では、副作用として尿路感染症や性器感染症を招きやすくなるほか、尿の回数が増えて脱水症状を引き起こすこともあるから注意が必要よ。
低血糖のときには「甘いもの」でOK?
経口血糖降下薬に共通することとして、低血糖を引き起こすリスクがあることは基本だけれど大切なポイントよ。
低血糖の症状(だるさ、冷や汗、ふるえなど)や、重症化すると命の危険もあるという点を患者さんへ十分に説明し、すぐに糖分を摂取するよう指導する必要があることは知っているわよね。
注意したいのは「低血糖になったら甘いものを何でも食べていい」と誤解する患者さんもいるということよ。
例えば、「せっかくだから、いつもは我慢しているものを食べよう!」とアイスクリームを食べても、乳脂肪分が多く吸収されるのに時間がかかり、その間に低血糖の症状が悪化するおそれもあるわ。
血糖値をすぐに上昇させたいときは、吸収されやすいブドウ糖や砂糖、あるいはこれらを含む飲み物などが望ましいということを、理由も含めて説明しておきたいわね。
なお、α₋グルコシダーゼ阻害薬を投与している場合は、酵素による消化が必要な砂糖などの多糖類を摂取しても吸収されづらいわ。
この薬剤を服用している患者さんが低血糖になった場合は、ブドウ糖の摂取が必須であることを覚えておいてね。
もう一つ、患者さんに必ず伝えなければならないのが、経口血糖降下薬を使う場合でも食事療法や運動療法は必要だということ。
「薬を飲んでいるから大丈夫だろう」と油断してしまい、暴飲暴食したり運動不足になったりすることのないよう、モチベーションの維持・向上を意識した指導をしていかなきゃね。
糖尿病の薬物治療は長い道のりになることが多いからこそ、看護師のサポートが重要になるのよ。
薬剤師や栄養士とも連携しながら、個々の患者さんに合った支援を探っていきたいです!