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事例で学ぶ看護技術 病院食の誤嚥による窒息事故の予防

仕事に役立つ看護手技 > 生活介助・ケア 編

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食事に関連する医療事故の中でも、やはり誤嚥の報告は多いですね。
誤嚥が患者さんに及ぼす危険性は大きいから、どのような事故事例があるのかを学び、予防に努めましょう。
●今回の事例:
認知症のある入院患者(前歯が3本しかないが、義歯不使用)に、腎臓食を配膳した。
特に食事箋による指示がなかったため、食事形態は一般的な米飯などだった。
看護師はベッドを約90度に調整し、3口ほど摂取するのを確認してから退室した。
10分後に訪室すると、患者がベッドからずり落ちており、呼吸停止していた。
急いで救急蘇生を開始したが、患者は死亡した。

高齢者では特に注意!死亡例も多い誤嚥

リコ:
この事例では、患者さんが亡くなるという最悪の結末を迎えてしまいました。
食事に関連する医療事故で、死亡に至る例は多いのでしょうか?

ヨシミ師長:
残念ながら、少ないとは言えないわね。
例えば、平成22年7月~23年6月に行われた調査によると、食事に関連する医療事故は年間222件起こっているわ。
そのうち、発生件数が圧倒的に多いのが誤嚥(186件)よ。
その転帰は、60件が「死亡」、93件が「障害残存の可能性がある」となっていて、患者さんに与える影響が非常に大きいことがわかるわね。

リコ:
誤嚥が起こりやすいのは、特に70歳代以上の高齢者ですね。
原因となった食品は、ご飯類やパン類といった主食が多いものの、形や硬さ、性状にかかわらず、どんなものでも誤嚥につながるおそれがあることがわかっています。

ヨシミ師長:
医療施設が患者さんに出した食事を誤嚥するケースが多いけれど、ご家族が持ち込んだものや、他の患者さんからもらったものが原因となることもあるわ。
ご家族へも誤嚥のリスクについて事前に十分な説明を行うとともに、場合によっては患者さんの間でのおやつなどのやり取りを制限する必要もあるわね。

リコ:
冒頭の事例では、入院時のアナムネが記録されておらず、そもそも提供された食事が患者さんの嚥下機能に合っていなかった可能性が考えられるとのことでした。
前提として、患者さんやご家族を中心に、入院前の食生活などについて忘れず情報収集をすべきですね。

ヨシミ師長:
確かに、キーパーソンから情報を得て、それを関係部署で共有することが大切ね。
ただ、患者さんやご家族の申告した内容が、実際の患者さんの嚥下機能の状態とは食い違っていることも考えられるわ。
医師や言語聴覚士とも連携しつつ、水飲みテストや反復唾液嚥下テストなどを通して、プロの目で嚥下機能評価を行うことも大切よ。

リコ:
「3口ほど摂取するのを確認してから退室した」というのも気にかかります。
嚥下困難な患者さんの食事介助時は、できるだけ常時見守りができる環境が必要ではないでしょうか。
個室の患者さんでも、食事のときは食堂やデイルームを利用してもらうなどの工夫が考えられます。
また、食事介助後に患者さんのそばを離れる前に、呼吸状態の安定などを数分間は確認する必要があると思います。

「全粥食なのにおかずは牛肉」で呼吸停止も

ヨシミ師長:
食事に関連する医療事故を防ぐためには、栄養・調理部門との連携も欠かせないわ。
例えば、「きざみ食を指定していたが、シチューの具材はそのまま入っていた」「きざみ食の患者さんのデザートに、ミカンが丸ごと1個添えられていた」といった報告もあるのよ。
「全粥食の患者の副食に、かみ切れない牛肉が含まれていた」という事例では、大きな肉片が患者さんの気道を閉塞させ、呼吸停止に至ったそうよ。

リコ:
食事形態に関するルールがあいまいだと、医療事故につながりやすいようですね。食事形態一覧表などを用いて、病棟からより具体的に指示を出すのも一案ですね。

ヨシミ師長:
例えば「全粥」を指示する場合でも、患者さんの嚥下機能に基づいて必要性があるのか、単に患者さんの好みで選択したのかでは献立に大きな差が出るから、その違いがわかるように指示が出せるといいわね。

リコ:
食事箋に「パン禁」と記載がない限り、朝食にはパンを提供する方針であることが、その施設の医師や看護師に周知されていなかったケースもあるそうです。
「主食が全粥以下の場合は、パン禁の記載の有無にかかわらず指示の主食を提供」など、事故につながりにくいルール作りが必要ですね。

ヨシミ師長:
患者さんにとって、食事は入院生活での大きな楽しみになるものよ。
「好きなものを食べたい」という気持ちに寄り添いながら、医療安全の側面にも十分に配慮できるよう、工夫を重ねていきましょう。

出典
日本医療機能評価機構:医療事故情報収集等事業 第26回報告書(平成23年4~6月).

監修:医療法人社団航洋会 目黒通りハートクリニック 理事長/院長 安田洋先生

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