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事例で学ぶ看護技術 処方箋の表記に起因する投薬ミス

看護あるある 手技Q&A > 与薬・薬剤 編
処方箋の表記がわかりづらいせいで、医療従事者間で解釈の違いが生じ、投与する薬剤量を間違えてしまうケースがあるみたいですね。
驚いたことに、本来の量の10倍もの薬剤を投与していた例もあるのよ。
与薬準備から実際の投与まで担当することがあるナースとしても、処方箋の表記の仕方には敏感でいる必要があるわ。
患者さんを危険にさらすことの多い薬剤量に関するミスを防ぐため、どんな対策が有効なのか考えてみましょう。
●今回の事例:
医師が製剤の総量を意図して「セレニカR顆粒40% 1日1250mg」と入力して院外処方箋を発行したが、調剤薬局の薬剤師は「有効成分の量が1日1250mg」と解釈。結果的に、製剤の総量として3125mgを調剤し、それを患者が服用してしまった。

それは製剤量?それとも有効成分の量?

ヨシミ師長:
この事例の患者さんには嘔吐などの症状が出て、過量投与が判明したそうよ。

リコ:
医師の指示を間違いなく伝えるための処方箋が原因で、かえって投薬ミスを招いてしまったわけですね。
この事例のような意図と解釈のずれは、どうにかして防げないものでしょうか?

ヨシミ師長:
実は事例の調剤薬局では、「有効成分の量はmgで表記、製剤量はg(mL)で表記」という慣例があったの。
当然、外部の医師はそのことを知らなかったわけだけれど、調剤薬局の薬剤師は自施設のルールに従って間違った解釈をしてしまったのね。

リコ:
確かに、セレニカRの有効成分であるバルプロ酸ナトリウムが1250mgとなるよう計算すると、40%なら1250÷0.4=3125mgが薬剤の総量となりますね。

ヨシミ師長:
同じように、「フェノバール散10% 1500mg」と記載された処方箋について、医師は製剤量を意図していたにもかかわらず、薬剤師が有効成分の量と解釈してしまった例もあるわ。
有効成分の量が本来は150mgであるべきところ、10倍量となる1500mgもの処方がなされてしまい、患者さんにはろれつが回らないといった症状が現れたのよ。

リコ:
mgとgの表記を使い分ける慣習は私も聞いたことがありますが、施設独自のルールによる表記に頼ることは危険ですね。

ヨシミ師長:
ほかに、用法用量に関する問題事例も報告されているわ。
例えば、「リン酸コデイン10% 60mg 3×」と記載されていたら、どんな処方内容だと解釈するかしら?

リコ:
ええと、「1回60mgを1日に3回投与」ということでしょうか?

ヨシミ師長:
実は、処方した医師は「1回20mgを1日3回投与」、つまり1日の総量を60mgとすることを意図していたの。
「3×」「×3」「分3」といった表現は、その量を3回投与するのか、それとも3回に分けて投与するのか、とてもわかりづらい表現よね。

処方箋表記の原則は「1回量」かつ「製剤量」!

リコ:
処方量と用法用量のミスが重なったら、さらに重大な事故につながりかねませんね・・・。
そもそも、処方箋の表記を統一する指針のようなものは存在するのでしょうか?

ヨシミ師長:
近年では、2010年の「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書」に基準が示されているから、ちょっと目を通してみて。

リコ:
ふむふむ・・・なるほど、分量は「最小基本単位である1回量」を、そして有効成分の量ではなく「製剤量」を記載するのが基本だと。
そして用法用量は、実際の投与日数や回数がわかるよう日本語で明確に記載すべし、というわけですね。

ヨシミ師長:
このルールに則ると、例えば次のような表記になるのよ。

(改善前)「デグレトール細粒50% 1日1.6g 分2 朝夕食後 14日分」
  ↓
(改善後)「デグレトール細粒50% 1回0.8g 1日2回 朝夕食後 14日分」

リコ:
ちょっとした違いですが、ずいぶんわかりやすくなるものですね!
移行期間においては、1回量と1日量を併記したり、例外的に有効成分の量で表記する場合は【原薬量】などと明示したりする方法も提案されています。
例えば、「カルバマゼピン(散剤) 1回400mg(1日800mg)【原薬量】」という表現になるわけですね。

ヨシミ師長:
患者さんが院外処方を受けたり、複数の科や医療施設を受診したりするケースでは、処方内容が正しく伝達されるよう特段の配慮をする必要があるわ。
誰が見ても同じ解釈ができる記載となるよう、標準化に向けて改善を重ねることが大切ね。

参考資料
1)日本医療機能評価機構:医療事故情報収集等事業 第33回報告書(平成25年1月~3月).
2)厚生労働省:内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書,2010.

監修:目黒通りハートクリニック院長 安田洋先生

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